Bach カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」/
第88番「見よ、われ多くの漁師を使わさん」/第79番「主たる神は太陽にして楯なり」
(ぺーター・ヤン・リューシンク /オランダ少年合唱団/オランダ・バッハ・コレギウム)



BRILLIANT 99374/1 2000年録音  5枚組1,800円で購入(のち1,180円で目撃)→処分済/再購入分とデザインは同じ Bach

カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」
カンタータ第88番「見よ、われ多くの漁師を使わさん」
カンタータ第79番「主たる神は太陽にして楯なり」

ルース・ホールトン(s)/シツェ・ブヴァルダ(ct)/マルセル・ビークマン(t)/ニコ・ファン・デル・ミール(t)/バス・ラムゼラール(b)/オランダ少年合唱団
オランダ・バッハ・コレギウム/ローラ・ジョンソン(v)/ペーター・フランケンバーグ/スザンネ・グリュツマッヒャー/エドゥアルド・ヴェスレイ/クリスティン・リンデ(ob)/テウニス・ファン・デル・ツヴァルト/エルヴィン・ヴィエリンガ(hr)/マールテン・シュミット(tim)/ぺーター・ヤン・リューシンク

BRILLIANT 99374/1 2000年録音  5枚組1,800円で購入(のち1,180円で目撃)→処分済
BRILLIANT 93102/82 155枚大全集を再入手(諸経費込11,500円程でオークション落札)

 2008年末、既にそうとうバラ購入していたBERILLIANTレーベルのBach 全集を再入手いたしました。(2010年全楽譜付きで大幅値下げ再発売既存ダブり分オークションで順繰り処分したら、再購入金額を上回ったので経済的には上手くいった感じ。未だ全部ちゃんと聴いたか?そう問われるとツラいが、カンタータだけでも巨大なプラケースがわずか15cmほどに収まって下さるから収納にはありがたい。市井のサラリーマンにもこんな立派な全集が入手できる!それだけでシアワセだったし、ましてや新しい、古楽器による録音であることにも価値あること。音楽作品は、まず幅広く聴いてこその前提は当たり前、狭い聴取範囲で云々しても仕方がないでしょ。(録音年情報が個別スリーブに抜けたのが残念)

 でもね、すれっからしのオールド・ファン(=ワシ)は、聴き込みが深まるにつれ、演奏水準云々したくなっちゃう。”それだけでありがたい”→”存在価値に揺るぎはないが、ちょっとコメントしておきたい”といった不遜な考えに至りました。カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」は馴染みの、細部旋律よく知っているだけに9年前聴取の衝撃は大きかった。久々の聴取も、「冒頭の弦の軽さにショックを受けます。羽のようであり、ハズむようなリズムでもある。3本の粗野な音色のオーボエにも痺れ」ることに間違いはない。しかし、古楽器を数多く聴き込んだ耳には、少々自信なさげな足取りに聞こえます。合唱に至っては、粗削りな印象が否めない。

 だからどうなんだ。

 リズムの徹底が弱く(これは通奏低音の存在感でしょう)ても、声楽が少々不安定であっても、声量無垢なる敬虔なBach サウンドはちゃんと堪能できる、ということですよ。そのことを前提に〜第3曲「 いつ来ますや、わが救いのきみ?」ソプラノ、バスのデュオに絡むヴァイオリン・オブリガートはいかにも”弱い”(素晴らしい旋律なのに!)。虚飾なく、控えめなんだけど、楚々として妙に自信なさげ。ホルトン(s)は清潔だけれど、いかにも不安定な歌唱であります。ラムセラール(b)は表情豊かで説得力有(この先もずっと)。第4曲が著名なる(誰でも知っている)コラール「シオンは物見らの歌うの聞けり 」であって、ニコ・ファン・デル・ミール(t)の歌唱もまじめ一方で説得力は薄い。声が出ていない。ここがキモなんだけどね。

 第6曲「わが愛するものはわが属となれり」は、第3曲と同じソプラノ、バスのデュオだけれど、ここでは軽快なるオーボエに乗って、喜ばしい雰囲気漂いました。ラスト「グローリアの頌め歌、汝に上がれ」はさっくりとしてちょっぴり素っ気ない仕上げです。

 カンタータ第88番「見よ、われ多くの漁師を使わさん」は、第1曲オーボエ重奏(波を表現しているそう/オーボエ・ダ・カッチャ+オービエ・ダ・モーレなんだそう)+バスの長いアリアが見事であって(相変わらず)ラムセラールは好調です。途中より躍動するホルンが加わって柔らかい響きが魅力的(ブランデンブルク協奏曲第2番にクリソツ)。第3曲はビークマン(t)は朗々と好調であり、オーボエとの絡みも効果的。(ここにて第1部終了/意味は理解できない)第2部に入って第5曲、(例の)線の細いソプラノに個性的なブヴァルダ(ct)がリズミカルにデュエットして、ここでは不安定さは感じさせません。次のソプラノによるレシタティーヴォはちょっと弱い感じがします。

 キリスト教の幼稚園に通っていたけれど、宗教研究に疎いのでなんのことやら内容は理解できんが、筋はこちらの記事を参照のこと。

 カンタータ第79番「主たる神は太陽にして楯なり」。冒頭のシンフォニアはティンパニ+ホルン+オーボエが賑々しく登場して、喜ばしげに合唱が加わります。器楽は素朴で柔らかい響きが好ましく、声楽には緻密さが少々不足(ピッチも怪しい?)しても躍動有。アンサンブルが少々緩く、甘いんです。第2曲、個性的な声質が好みを分かつであろうブヴァルダ(ct)のアリア「神はわれらの日なり、盾なり」は存在感説得力抜群、優しくオーボエがオブリガートしております。第3曲、再び、ティンパニ+ホルンに導かれた勇壮な合唱「いざや諸人、神に感謝せよ」が登場、この全集の弱点は粗い合唱アンサンブルかな?次いで相変わらず安定感抜群のバス「かたじけなし、われらは救いにいたるまことの道を知るなり」が登場し、ソプラノとちょっぴり哀愁の旋律にてデュエットします(「神よ、ああ神よ、いかなる時も汝の者たちを」)。ルース・ホルトン(s)は独唱でなければ悪くない出来だと思いますよ。

 ラスト、短いコラール「われらを真理の中に保ち」はティンパニとホルンに乗って大団円。いかにも素っ気ない幕切れ?

(2010年9月24日)

 BRILLIANTのバッハ全集は、160枚組35,800円で手に入ります。その存在を知るまでに、30枚ほどバラで買ってしまったので、今更ダブリ買いできません。(既に10,000円は使っているはずなので)少しずつ集めるのも楽しみのウチなので、それほど後悔はないんです。先に2巻分購入したカンタータは、なかなか立派な演奏だったので、結局残りも全部買いました。(世俗カンタータを除く。シュライヤーを持っていたので)

 カンタータは歌詞の意味がほとんど理解できません。(対訳はもちろん付いていない)それでも敬虔な雰囲気はタップリ味わえるし、かなり馴染んだ曲も多くて楽しめます。すべてのCDにコメントを付けることは不可能だけれど、少しずつ聴いていくつかはHPに載せることにしましょう。「土曜の朝は、Bach のカンタータを聴くことにしています」なんてカッコ良すぎ。(誰に話すわけでもないが)

 名の通った演奏家ではないが、2000年1月というピンピンの新録音だし、団員名も明記。リューシンク(読み方を教えていただきました)はダヴィッド・ウィルコックス門下生で、オランダ少年合唱団を率いてあちこちの録音に参加しているそうです。オランダ・バッハ・コレギウムが常設の団体かどうかわからないが、小編成の古楽器団体。


 有名な「目覚めよ」から。冒頭の弦の軽さにショックを受けます。羽のようであり、ハズむようなリズムでもある。3本の粗野な音色のオーボエにも痺れます。録音風景写真を見ると、合唱の女声パートは少年が受け持っていて、清浄感に打たれる思い。夾雑物も、よけいな重量感も感じさせません。

 ソプラノとバスのデュエットに絡むヴァイオリン(ジョンソン)は飾りがなさ過ぎて、頼りなさげ。有名なコラールは、テナー一人で歌われます。(楽譜はどうなっているのでしょうか)トツトツとして噛みしめるような味わいがありました。バックのポジティヴ・オルガンが控えめながら効果的。

 第6曲目のソプラノとバスの2重奏は、声楽の魅力はもちろん(ホルトンの声の可憐なこと!)オーボエの軽快なオブリガートに心躍る思い。


 「漁師」は初耳の曲。この曲には3本のオーボエと、ホルンが2本加わりました。冒頭のバスのアリアから、管楽器によるアルペジオのバックともどもなんと美しい音楽。音楽に合わせてカラダが左右に揺れます。ラムゼラールの深みと、重くなりすぎない歌も快調。

 バロック・ホルンの洗練されない音色は魅力的で、バックに奥行きを付け加えます。テナーのミールは端正な歌い手。通奏低音のみの静かな伴奏から始まって、オーボエのオブリガート(控えめで地味な音色がたまらない)が参加すると淡い色彩が広がります。「イエスはシモンに語った」のバス・ソロには、チェロの上下激しい印象的な旋律が絡みます。

 ソプラノとアルトのディユエットでは、ブヴァルダがカウンター・テナーにきこえますが真実は?息はピッタリの2重唱で、この旋律の美しさは「漁師」中の白眉でしょう。ラストのややもの悲しげなコラールは、あっと言う間に終わります。

 「主たる神」では、ティンパニが加わって躍動します。後半に行くほど楽器編成が増えるという工夫された曲配列。第1曲目の合唱を呼ぶ「シンフォニア」(約1分ほど)は、独立した管弦楽曲にしても充分聴き応えのある名曲。喜びに満ちあふれる合唱。少年合唱団の音程がやや不安だけれど、許してやって下さい。

 アルトのアリアは、やっぱりカンター・テナーかなぁ?高音は女性としてもおかしくないが、低音が男の声だと思います。(まだ判断は出来ず)ここでも達者なオーボエが、しっかりとオブリガートします。中途とラストの合唱はいずれもにぎやか。ソプラノとバスのデュエットは、弦が支えていて、緊張感あるところ。全体で14分ほどの短い曲だけれど、ここが一番の聴かせどころでしょう。


 編成が少なくて、細部まで見通しよく、爽やかな演奏ぶりです。期待しないで買いましたが、この水準(演奏・録音とも)・価格なら、お釣りがきて余りある価値の高いCD。


 大村恵美子さん著「バッハの音楽的宇宙」(丸善ライブラリー)に、カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」の解説が掲載されています。題名だけが有名で、ワタシもてっきり「目覚めよ」と神の声でもあったのか、と思っていたら、それだけではないんですね。「花婿の到来を夜通し待つ乙女らに、暁を待ち、花婿の到来という喜ばしい期待を促す声」とのこと。

 冒頭の付点リズムは、花婿の行進でした。なんとめでたくも、幸せな曲でしょうか。(2001年5月18日)

Bach ソプラノ・カンタータ集(ワグナー)
こりゃ、いまとなっては相当に評価厳しい演奏。

Bach のカンタータについて


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written by wabisuke hayashi