Bach 管弦楽組曲第1番ハ長調/
第2番ロ短調/第3番ニ長調/第4番ニ長調
(ヘルムート・リリング/オレゴン・バッハ音楽祭管弦楽団)


Henssler 98009 Bach

管弦楽組曲第1番ハ長調BWV1066
管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067(1992年)
管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068
管弦楽組曲第4番ニ長調BWV1069(1994年)

ヘルムート・リリング/オレゴン・バッハ音楽祭管弦楽団

Oregon Bach Festival Henssler 98009

 かつて古楽器にばかり入れ込んだ時期があってHelmuth Rilling(1933ー独逸)には

あまりに保守的に過ぎて、もう聴かないかも、と罰当たりな感想〜表現はやや四角四面、豊かに鳴り響くBach
 そんな安易なコメントを書いたもの・・・やがてモダーン楽器古楽器問わず、過激なリズムを刻んでも、オーソドックスに穏健な表現でも各々味わいを感じて、ここ最近太古録音大カンチガイ重厚巨魁な表現さえ許容できるようになりました。作品との出会いはカラヤンの17cmLP? それともロリン・マゼール/ベルリン放送交響楽団の第2番第3番(1965年)だっけ。やがてカール・リヒターによる仰ぎ見るような峻厳な立派な演奏(1960-61年)に出会って、そのあまりに厳しい威容に作品ごと避けるようになりました。これはあまり話題にならなかった、ムリのない洗練された小編成モダーン楽器アンサンブル、音質は極上。最初、個別作品楽章ごとに言及しようと思ったけれど、これがなかなか難しい。

 第1番ハ長調はオーボエ2本+弦楽(+ファゴット+通奏低音)の編成。 Overture-Courante-Gavottes I and II-Forlane-Menuets I and II-Bourrees I and II- Passepieds I and IIの7楽章。平易に穏健、明るい風情にオーボエの装飾音は自在でした。テンポ設定やリズム感はどこにもムリがない。アンサンブルは緩過ぎず、強面になりすぎぬ、オーソドックスに中庸を得たもの。これは前編変わらぬ姿勢でしょう。(6:24-2:29-3:30-1:22-3:35-2:36-3:47)

 第2番ロ短調はおそらく一番人気。史上初のフルート協奏曲というのはほんまですか?(Vivaldi辺りのほうが早そうに思える)編成はフルート一本+弦楽+通奏低音。明るく雄壮なほか3曲に比べ、ほの暗い風情に情感豊かな作品でしょう。Ouverture-Rondeau-Sarabande-Bourree I and II-Polonaise-Menuet-Badinerie。著名なフルーティストがたっぷり歌い込んだソロが刷り込み、これはトレヴァー・ピノックの快速演奏(1978年)に出会って、印象一変! 速いテンポに疾走して素っ気ない風情〜おそらく昔はそんな演奏だったんじゃないか、そんな説得力抜群でした。こちらのフルートはやや速めのテンポに、かつてのように情の濃いソロに非ず(ソリストは不明)中庸のイン・テンポに軽めにクールな音色、流れのよろしいオーソドックス。もちろん技術的には文句なし、ソロの装飾音もBourreeを除いてほとんどみられません。(7:35-1:45-2:18-1:49-3:12-1:17-1:24)

 こどもの頃には冒頭フランス風序曲がものすごく立派に感じた第3番イ長調は弦+通奏低音+トランペット3本+オーボエ2本+ティンパニが加わって、たしかに大柄に演奏したくなる編成でしょう。かつてトレヴァー・ピノック(1978年)に出会って、いったい楽譜はどうなっているか、譜読みとはなんのか? 疑念に感じるほどの違いに衝撃を受けた記憶も鮮明、それほど古楽器による演奏は作品イメージ激変いたします。こちら威圧感のないオーソドックスなリズム感に軽快なサウンド、立派なはずの第1楽章「Ouverture」から力みも疾走もありません。著名な第2楽章「Aria」も従来のの静謐なイメージに近いけれど、ピチカートに非ず、荘厳に重過ぎなぬ穏健。元気な第3楽章「Gavotte」も立派に過ぎぬ親密さ。弦も管も名手が揃っているようです。第4楽章「Bourree」期待通りの躍動に、トランペットが鋭く響き過ぎぬもの。第5楽章「Gigue」もあくまで中庸のテンポにバランス重視に充実しておりました。トランペットの装飾音も自然。(8:16-4:58-3:27-1:17-3:01)

 第4番ニ長調の編成は弦+通奏低音+ファゴット+トランペット3本+オーボエ3本+ティンパニ。こちらも前曲に負けぬ名曲、調性も同じ、各舞曲は明るく躍動して雰囲気は似ております。第1楽章「Ouverture」緩急緩フランス風序曲はあわてず、厳つくにも大柄にならぬ肩の力が抜けたもの。第2楽章「Bourree I-II」も軽快なオーボエの装飾音が美しいもの。第3楽章「Gavotte」第4楽章「Menuett I-II」ここのオーボエも自在な装飾音が魅力。第5楽章「Rejouissance」にもあわてぬ抑えた歓喜がありました。極端な緩急やリズムにエッジを立てぬオーソドックス穏健、肩の力が抜けたデリケートな表現に、オーボエのあちこち装飾音も効果的でした。(9:01-2:44-1:53-3:48-2:44)

(2023年12月23日)

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written by wabisuke hayashi