Beethoven 交響曲第6番ヘ長調(朝比奈/北ドイツ放送交響楽団)



Beethoven

コリオラン序曲 作品62(1962年録音)
交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」(1961年)

朝比奈 隆/北ドイツ放送交響楽団

ODE CLASSICS ODCL1001-2  (7枚組2,980円で買ったうちの一枚)

 朝比奈翁のブームは凄いもので、ワタシはわりと冷ややかに見ているが、あれはあれでクラシック音楽の普及に一役買っているのかも知れません。ライヴ録音がつぎつぎとCD化され、驚くほどの物量が発売されているはず。ワタシ個人は高校生時代に、学研の「ミュージック・エコー」の付録であった「運命」(大阪フィル。17cmLPでした。先頃CD復刻なった)で聴いて以来のおつきあいでした。

 ハンブルクの北ドイツ放送交響楽団にこれほど客演していたとは、このCDが出るまで知りませんでした。このBeethoven は1960年代始めの頃ですよ。日本人が本場ドイツ一流のオーケストラを、しかもBeethoven を指揮していたとは、ある意味感慨もひとしお。放送用の録音らしくて、音の状態は想像以上に良好(モノラル)。素晴らしいオーケストラの、厚い響きを堪能するのに不足はないでしょう。

 この「田園」、なかなか気に入りました。どの楽章も適正なテンポで仕上げられていて、オーソドックス、かつ牧歌的。朝比奈翁のCDはあまり多くは聴いていないが、日本の録音ではオーケストラのテンションが低いのが少々気になるもの。アンサンブルの粗さも目に付きます。さすが北ドイツ放送交響楽団には、その心配はありません。

 第1楽章冒頭から、オーケストラのくすんだような渋い音色が最高です。落ち着いてはいるが、弾むようなリズム感もある。オーボエ、ホルンの奥深い音色も魅力的。一見地味で控えめだけれど、よく聴くとじつに滋味深いもの。朝比奈は、珍しく細かいニュアンスを付けているのが意外です。第2楽章のやすらぎに満ちた歌の素晴らしさ。いぶし銀の弦、小鳥を模した木管の自然なこと。空気は澄んでいます。

 第3楽章には、ノリが足りなくてモッサリした感じはあります。第4楽章「嵐」の堂々たるスケールと迫力は期待通り。やや縦線が合わないのはこの人のクセなんでしょうが、質実な雰囲気があって悪くありません。終楽章の牧歌的な安堵感は充分だけれど、ダレ気味ではある。ボンヤリと曇りがちで晴れ間が見えません。終盤に向けて、テンポを少々落として、スケールを感じさせるところはお馴染み。

 全体として(録音の問題もあるが)地味な演奏でしょうか。オーケストラの個性もあるのでしょう。後半は前半に比べると、やや落ちます。

 「コリオラン」は、堂々として重心が低い。ややテンポも遅めで、インパクトもあります。もしかして「いかにも本場ドイツ風」(これ、単なる勘違いかも知れませんが)の演奏でしょうか。「田園」も含めて、ここ最近「スッキリ系」(ジンマンとか、ちょっと意味が違うがシューリヒトとか)ばかり聴いていたので、久々にBeethoven らしい重苦しさを楽しみました。

 序曲のほうが、音の状態は少々上。CD一枚で50分強の収録で、もう少し収録して欲しいというのはワタシの贅沢な要望でした。(2001年2月23日)


対極にある「田園」

カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー(1962年録音)
KAISER DISKS KC-0018(DGの海賊盤。166円で購入)

 ときどき感心する演奏もあるが、これはいけません。節回しが気障でクサ過ぎる。フレージングが曖昧で、間が足りない。オーケストラが上手すぎて空虚。木管なんてセクシーできらびやかすぎ。結論〜これは「田園」ではない。


Franck  交響曲ニ短調(朝比奈/北ドイツ放送交響楽団)


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written by wabisuke hayashi