BACH ミサ曲 ト短調 BWV235(フレーミヒ/ドレスデン・フィル)


BRILLIANT 99361/4 BACH 

ミサ曲 ト短調 BWV235

フレーミヒ/ドレスデン・フィルハーモニー/ドレスデン聖十字架教会聖歌隊(ソロはクレジットなし)

BRILLIANT 99361/4 1972年録音  8枚組 2,389円で購入したウチの一枚(の半分)

 BRILLIANT盤のBACH全集の一枚です。「BOXものはけっきょく全部聴かないから」という意見もあって、それも一理あるが、ワタシはやっぱり買いたい。(安ければ)全集は買う機会を得なかったが(BRILLIANT激安全集の存在を知ったとき、相当数すでに購入していたから)かなり揃えました。2001年11月18日の岡山ポリフォニー・アンサンブル(OPE)の演奏会があったので、在庫から取り出して予習した一枚なんです。

 「マタイ」とか「ヨハネ」みたいにネーミング的に有名じゃないし、聴いたことがある人は少ないんじゃないかな。わずか30分ほどの短めの曲なんです。でもこれ、こんなにやすらいだ旋律であることを、この年齢になって初めて気付くなんて、ワタシは幸せ者だと思いましたね。震えるほど美しい。

 ワタシ、エラそうにこんなサイトをご開帳しているが、専門的な知識は微塵もないド・シトウトなんです。BACHの宗教曲をCDで聴くと、そのスケールの大きさに「オケも大編成ではないのか?」と錯覚してしました。でも、OPEをナマで見ると、ほとんど各パート一人ずつ。オーボエが二人(弦以外はこれのみ)で、これがもの凄く雄弁で、巨大な奥行きを感じさせてBACHのワザに驚くばかり。

 冒頭の「Kyrie」そしてラストの「Cum Sancto Spiritu」が、充実した(というよりジューシーな、みずみずしいと表現した方がよろしいか)合唱で、あっと言う間に脳髄に麻痺を呼び込みます。これ、痺れたともいいますが。調性はト短調だから、もの悲しい情熱を感じさせるが、バス、アルト、テナーが活躍する中間の4曲はむしろ明るくて、牧歌的な雰囲気さえ漂いました。

 ドレスデン・フィルというと、あのケーゲルの硬派な響きを連想します。はっきり言って(録音で聴く限り)技術的にはややマズいことも多くて、響きが濁ることも多い。でも、BACHの時は別格に誠実で、ひたすら誠実な印象しかない。これは演奏者の(音楽に対する)畏敬の念が、アンサンブルに特別なマジックを作り出しているみたいで、音にはかっちりとした芯もあります。「BACHには特別な色気など必要ない」と言いたげな誠実な響き。

 聖十字架教会聖歌隊の声を聴いていると、「古楽器がどうの」なんていう論議は忘れてしまいました。オーボエは特別に洗練された音色ではないのだが、控えめながら効果的な仕事をしていることに気付きます。(OPEではもっと雄弁でしたよ〜それはそれで見事)録音は、特別に目の醒めるような世界でもないが、自然で聖ルカ教会の自然な残響が気持ちよい。「マタイ」では頭を垂れるばかりだが、この曲ではホンワカと幸せを噛みしめる思い。

 引き続いてト長調ミサ曲BWV236が始まるが、この気持ちの良さはいっそう深化されCDを止めることなど考えられません。音楽に埋没できることを保証します。これこそ天国的な旋律。心洗われる思い。こうだからBACHはやめられん。(2001年12月14日)


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