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岡山交響楽団 第43回定期演奏会


2006年5月21日(日)PM 2:30〜岡山シンフォニー・ホール

Mozart

交響曲第40番ト短調K.550
Bruckner

交響曲第9番ニ短調

指揮 杉本 賢志

 Mozart ともかく、Brucknerは人気ないのか(いつもより)来客は少なかったような・・・しかし、この演奏は希有な感動に包まれました。五月晴れの、気持ちよい演奏会日和となりました。

 K.550ト短調交響曲は名曲ですね。クラリネット入りの版でして、帰宅して(押っ取り刀で)ベーム/ベルリン・フィル(1961年クラリネットなし版)を確認しております。もともとの楽器編成はもちろん、弦も刈り込んでいたけれど、中庸のテンポ、集中力のある優秀なアンサンブル。繰り返しも実行していて、年毎に弦のいっそうの充実を感じさせます。数年前迄「管に比べて弦が薄く感じるのは、会場のせいか?」と考えていたけれど、ここ数年の鍛錬の成果は目を見張るものがあります。

 さて、期待のBrucknerだけれど、開演前、福島さんの詳細配慮ある解説と部分引用(録音)を聴いているだけで(既に)感動が・・・ナマ体験は、博多時代の第5番、第7番、第8番(2回)・・・意外と少ないもの。第9番ニ短調〜仰け反りました。凄い作品です。CDで聴いていれば「金管ばかりやたらと目立って+ティンパニ孤軍奮闘」的作品に聞こえがちだけれど、いえいえ、弦が忙しいこと!

 ”原始霧”の繊細なる弱音、効果的なピツィカートはもちろんだけれど、単純だけれど劇的効果的な繰り返し旋律が入魂で、休みなく続きます。見事な集中力。シュターツカペレ・ドレスデンを聴いたときに、ああ弦が一生懸命だな、と感じた記憶が蘇りました。オーボエ、フルート、クラリネットの木管ソロがあちこち合いの手として存分に歌っており、全体にゆったりめのテンポを取った杉本さんの意図に応えて、その姿はいっそう全体に映えました。

 そのことを前提に、ホルンを先頭に金管の壮絶な叫びは胸を打ちます。弦、そして木管が絡んで、金管が絶叫するところでテンポを煽って・・・というパターンは個人的にはあまり好みではないが、その意気込み・アツさは存分に伝わります。(「ゼネラル・パウゼ」も視覚的に緊張感あってよろしかった)

 この作品、やや意外だけれど打楽器はティンパニ一人なんですね。第2楽章「熱狂的法華の太鼓」は手応え充分だけれど、ナマでは弦のピツィカートの緊張切迫に痺れます。ほとんど出ずっぱりの右端ホルンの男性は奥深い響きで魅了し、ここぞ!という時にチューバが野太い低音で全体に重量を付加して、これは録音では理解できるはずもない発見。

 終楽章、(Brucknerではお馴染みの)ワーグナー・チューバ3人登場。微妙な(ホルンとの音色の)相違は現場でこそ確認可能。金管壮絶全開のコラールは感動的であることは当たり前だけれど、弦の詠嘆がやがて天上の静謐に吸い込まれ・・・このニ短調交響曲が、これほどの”大曲”であったことに初めて気付きました。心配された「フライング・ブラーヴォ」もなく、まさに「拍手は指揮者が手を下ろしてから」・・・アンコールなしは正しい。

 弾き手も、聴き手も疲れ果てました。これは快い疲労であります。

(2006年5月21日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi