Beethoven 交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」/交響曲第4番 変ロ長調
(デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団)


ARTE NOVA 74321 592142 Beethoven

交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
交響曲第4番 変ロ長調 作品60

デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団

ARTE NOVA 74321 592142 1998年録音

 前回拝聴より更に12年経過。初めて聴いた感動より20年以上経過して、聴き手も華麗なる加齢を重ねました。世間では古楽器系演奏が当たり前となり、一方で復古調の重厚表現にも人気有、David Zinman(1936ー亜米利加)全集録音は”嘘っ八ベーレンライター版”とのボロカス評価も見掛け、”この全集だけはやめておけ!”そんな過激なご意見もありました。たしかにジンマン自らの独自の解釈(自由な装飾音など)も多く入っているのでしょう。音楽だって嗜好品、久々の拝聴印象は快速、軽快、詠嘆に引きずらぬ清涼クリアなオケの響き、優秀なアンサンブル、極上音質に(珍しく)以前と変わらぬ新鮮な感銘をいただきました。トーンハレ管弦楽団の音楽監督在任は1995ー2014年。

 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」は名曲中の名曲。いろいろ巡り巡ってBeeやんの交響曲全9作品中はこれが一番拝聴機会が多いもの。第1楽章「Allegro con brio」冒頭の和音2回ぶちかましもさらりとして、例の「バスティアンとバスティエンヌ」主題も快速流麗、そして腰が軽いリズム感。この前のめりに急ぎ足のテンポを嫌う方もいらっしゃることでしょう。もちろん提示部繰り返し有。オケは透明感のあるデリケートなサウンド。夢見るように美しい木管の音色、乾いたティンパニの存在感、湧き上がるような感興に溢れてノリノリ、爽やかサウンドと聴きました。(15:37)第2楽章「Marcia funebre: Adagio assai」は葬送行進曲。符点のリズム感強調+オーボエの装飾音はよく歌って、響きの薄さ、素っ気ないイン・テンポ表現が物議を醸すところ。テンポはほぼ中庸、引き締まった緊張感と推進力をたっぷり堪能いたしました。ここのティンパニもかなり衝撃的。朗々としたホルンも聴きもの。(12:59)

 第3楽章「Scherzo: Allegro vivace」そっと呟くように賑々しい、軽快なスケルツォ開始、やがて饒舌にオケは爆発して熱気に充ちた推進力も素晴らしい。トリオのホルン三重奏も難なくクリアしてさっぱりとした味わい、重厚さとは無縁のヴィヴィッドな快速であります。(6:16)第4楽章「Finale: Allegro molto」なだれ込むようにフィナーレへ。そしてBeeやんお気に入りの「エロイカ」主題はさっぱりと提示されます。途中、ヴァイオリン・ソロに変わっているところは新鮮に受け止めたけれど、硬派原理主義者は「なに、勝手なことやっとんねん!」といったところでしょうか。(例のオーボエ装飾音も出現)編成が小さい?弦は薄くさっぱりと響いて、各変奏曲は軽快軽妙快速に過ぎゆきます。乾いたティンパニは効果的です。フルトヴェングラー以来のデモーニッシュを求めるのなら、ずいぶんとさっぱりと薄口。これはクールなオケの個性もあるのでしょう。(10:32)

 音楽は嗜好品と繰り返して、この辺りが自分のツボと自覚いたしました。ラスト、熱気を帯びて突き進む大団円に胸を熱くしたものです。

 交響曲第4番 変ロ長調はもっと凄い全編快速演奏。全9曲中、比較的不人気だったかも知れないけれど、カルロス・クライバー(1982年ライヴ)登場以来、注目の作品に至ったと記憶します。第1楽章「Adagio - Allegro vivace 」深刻な序奏から一転、主部に入ると疾走する快活な躍動が待っておりました。ジンマンのフレージングは歯切れよろしく熱気に充ちて大爆発、オケは上手いなぁ、ファゴットの存在感が光ります。(10:01) 第2楽章「Adagio」は淡々とシンプルな緩徐楽章。符点のリズムがいきいき表現、時にティンパニの楔が効果的なところ。クラリネットによる第2主題も印象的、他フルート・ソロなど、このオケは木管が美しいですね。ちょっぴり装飾音も面白い効果と思います。(8:16)

 第3楽章「Allegro vivace(Un poco meno Allegro)」はスケルツォ楽章。よう聴くとBeeやんの革新的な姿勢が伺える、オモロい剽軽な旋律とリズムの繰り返し。すっきりと力みなくヴィヴィッドな表現は、曖昧さのないリズム感に支えられております。ラストのホルンもダメ押しの魅力。(5:19)第4楽章「Allegro ma non troppo」ここは”速すぎるテンポに要注意”と云われるところ、まさに快速一気呵成に駆け抜ける凄い演奏です。弦の縦線の合い方、破綻しないリズムと緊張感、ほとんど超絶技巧、例の難所ファゴット・パートも難なくクリア、上手いオケと統率ですよ。(6:27)

 ブルー系の爽やかサウンド、響きを重厚に膨らませないのは確信的な意図でしょう。色々聴いてきて、デイヴィッド・ジンマンの全集は特筆すべき成果と確信いたしました。

(2021年6月26日)

 おそらくは10年ぶりの再コメント、いや聴取かも。(p)(c)1998であり、発売と同時に購入したと記憶します。現在なら全集が格安で入手できるし、SONY/BMG系の「60枚組ボックス」にも収録されたから、単発ものはいつでもYahoo!オークションに出品処分されているのを見掛けます・・・(たいていは売れていない)20世紀ラスト辺りは、まだ廉価盤が貴重だったし、話題の新録音を毎月一枚一枚揃えるのが楽しみでありました。これが正しい、本来の音楽の聴き方の姿。21世紀には廉価盤が日常茶飯事となり、メジャーレーベルが巨大激安ボックスを連発し、かつての貧しい音楽少年達は”オトナ買い”連続〜ちゃんと聴けもしないのに、未踏峰ミチョランマを嘆きあっている今日この頃、全国の中年音楽のファンの皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 ここ数年CDは(オークションにて)ずいぶんと大量処分いたしました。(前回コメント時より更に)Beethoven の交響曲は全集も、単品も大量に処分したものです。それでも棚中の全集は7セットを数えるし、単品残も多数有。滅多に聴かないのにね。

 新ベーレンライター版による初録音、というのが発売当時の”ウリ”だったはずだけれど、実際はジンマンによるかなり恣意的な解釈が入っている、とはどこかのサイト情報で拝見いたしました。こちら”聴くだけ”の音楽愛好家としては、生き生きとした演奏であるか、がポイントであって、”楽譜に忠実”かどうかは(ド・シロウトだから)わからないんです。

 「英雄」始まりました。第1楽章はリズムが軽妙であり、ティンパニは粗野に、激しくアクセントを刻みます(ラスト迄)。快速テンポで颯爽、旋律の節回しにニュアンスは充分だけれど、濃厚浪漫に表情付けをしたり、アンサンブルを艶々に磨き上げたりしないから、素朴さが目立ちます。技術的には機能的で、上手いオケだと思いますよ。第2楽章「葬送行進曲」は響きも洗練され、清潔で明るい。重厚長大なる表現とは無縁です。(カラヤン1962年録音が16:52に対して、こちら12:58)

 第3楽章「スケルツォ」にはノリノリの激しさがあり、快速で一気呵成。終楽章は、一部弦の旋律がソロになったり、オーボエに装飾音が付いたりするのが効果的だけれど、これはジンマンの意図であって、楽譜由来ではないとのこと。劇的な切迫感(若い頃はこの変奏曲に感銘した!)ではなく、軽快軽妙を旨とした、明るい”英雄”です。巨魁なる貫禄表現に馴染んでいた耳には(当時)ほんまに衝撃的な、新しい解釈と感じたものです。

 久々の鳴り響いた音楽に、鮮度は落ちていないな、との手応えを感じました。録音も良好。

 第4番 変ロ長調交響曲といえば、カルロス・クライバーの熱血ライヴ(1982年)が圧倒的世評でしょうか。ジンマンの演奏は「英雄」より、いっそうリズムの推進力と洗練を加えて、爽快であります。明るい作品との相性かな?旋律のフレージングがすっぱりと切れ味良く、快速のように聞こえるが、他とそう演奏時間は変わらない〜但し緩徐楽章+終楽章はたしかに(そうとう)速いけれど。

 第2楽章は相変わらず、ティンパニの粗野な迫力がエエですね。晴れやかな表情の旋律表現も気持ちがよろしい。クラリネットには装飾音が散見されます。コレもジンマン独自の解釈か。

 第3楽章「スケルツォ」は、リリカルな味わいで力みがない。終楽章があまり速すぎるのはクセもの、という論評を拝見したことがありました。ここでは快速、しかも緻密な仕上げに集中力がありました。オケは上手いですね。最近、話題にならなくなった(廉価盤専門!とか、楽譜に忠実ではなかった、とか)が、拝聴すべき個性を誇る演奏と確信いたしました。それにしても、Beeやん交響曲2曲聴いたら、んもう!あっぷあっぷ。満腹でございます。

(2009年2月13日)

 Beethoven の交響曲のCDは油断すると、どんどん増えてしまう。LP時代もフルトヴェングラー、ベームの全集を先頭に、ずいぶん持っていたような記憶があります。CD時代に入った当初も似たような状況になって「これではいけない、どうせ聴かないんだから」と思って、数年前にかなり処分しました。

 でも、けっきょく後悔するから、今年(98年)から思い切って我慢するのはやめ。もう今年だけで全集は3組、バラ買いでもそれなりに買っていると思います。(数えてませんが)最近、安くて良い演奏のCDがたくさん出ているんですよ。

 ジンマンはモントゥーの弟子で、わりと地味な存在だったでしょう。チューリヒ・トーンハレ管も歴史あるオケですが、クリップス、ケンペ以来あまり録音がないようですし、このシリーズはいつかは買おうと思っていました。

 結果は想像以上の劇的な感動に身も震える思い。

 1997年J.デル・マー校訂ベーレンライター版による、最新の研究成果をふまえた録音。(とのこと。なかの解説は真剣に読んでいないのですが、じつはジンマンは独自の解釈をかなりしているそう)名演奏ひしめく「英雄」の中にあって、注目の個性的演奏でしょう。最終楽章の弦のアンサンブルがソロになったり、聴き慣れない木管の装飾音が出たり、驚くことばかり。

 早いテンポ、メリハリのついた激しいアクセント。
 しかし、それがアーノンクールのようなアクを感じさせず、非常にスッキリ、かつ流麗、軽快でもあります。オケの響きが洗練されていて、透明であるのも驚きで、技術的にも最高のアンサンブル。金管の独特の柔らかい音色は最高。思わず引き込まれて、興奮します。アツい演奏です。

 第4番は冒頭序奏の繊細なアンサンブルの水準の高さ、アレグロ・ヴィヴァーチェに移る超快速なテンポによる躍動感が素晴らしい。ティンパニの野性的な音色、木管の透明な響き。
 第3楽章の弾むようなリズム、「フィナーレは早すぎるのはよくない」とか云うけれど、相当な快速でもアンサンブルは一糸乱れず、バランスは完璧。冷たくならないのもいいですね。
 Beethoven 演奏新時代の幕開けを告げる新鮮な演奏でしょう。古楽器演奏の影響も受けているのでしょうが、(弦はノン・ヴィヴラート。美しい)使用楽器にかかわらない新しい問題意識が提起されてきていると思います。

 録音も極上。既に出ているジンマンのCDは買う決意をしました。また、全集のコレクションが増えそうです。


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written by wabisuke hayashi