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吉松隆 交響曲第四番の世界初演

Kenchan、お手紙ありがとう


奈良在住のKenchanから、演奏会報告が届きました。以下、原文のまま。


去る5月29日に関西フィルの演奏会に行って参りました。

関西フィルは昨年藤岡幸夫さんが正指揮者になってから積極的に吉松隆さんの作品を取り上げてますが、今回はなんと交響曲第四番の世界初演でした。プロフラムに藤岡さんが「近い将来に吉松さんの交響曲を関西フィルで初演したい」という夢がこんなに早く実現できてうれしいというコメントが書かれてました。

仕事が終わっていそいそとザ・シンフォニーホールに向かいまして、あわてて窓口で当日券を買ったものだから、自分では意図してなかったのですが、初めてステージの後ろ側の指揮者の顔がよく見える席にすわりました。

演奏が始まる前に吉松さんと藤岡さんのプレトークがありました。スピーカーが客席のほうを向いていて聞き取りにくかったこともあるのでしょうが、お二人ともあまりお話は得意ではないような気がしました。作曲者によると「自分の曲についてしゃべるのは、自分の子供のことをしゃべるようなものだから難しい。自分でもよくわからないところがある。ふつつかな娘ですがよろしくお願いします」とのこと。

娘と表現されましたが、プログラムに書かれた作曲者のコメントによると「第3番という嵐の後の「谷間に咲く小さな花のような」間奏曲風で軽やかなミニ・シンフォニーのイメージ」で「パストラル(田園)・トイ(おもちゃ)・シンフォニー」とでもいうべきもので、「春の緑(そして新しい世紀)をたたえる自然賛美の小交響曲であるとともに、雑多な音楽の記憶を並べた音の「オモチャ箱」とでも言えるかもしれない。」とのこと。確かにロマン派的な大げさな感情表現とは違った「可憐」な感じの曲というのが私の感想であります。

第一楽章:アレグロ
プログラムの解説によると、「さまざまなビートとモードの間を走り回る[鳥]の思考によるアレグロ楽章」とのこと。冒頭から詩情あふれる響きで、「ああ、やっぱりシンフォニーホールはいいな。」とおもいました。途中からおもちゃの兵隊をイメージさせる箇所があって打楽器が活躍します。ピアノも重要な役割を占めているような気がしました。

第二楽章:ワルツ
プログラムには「後半にはベルリオーズ、Bruckner、ショスタコービッチ、マーラー、ベートーヴェン、チャイコフスキーetcのワルツが乱舞しつつ織り込まれてゆく」とありましたが私はベルリオーズしか判別できませんでした。まだまだ修行が足りません。なお、後半に入る箇所でトランペットがあたかも馬のいななきのような音を発するところがあるのですが、ここでは客席から思わず笑いももれえとりました。指揮者もにんまりしてました。作曲者も「やった」と思ったことでしょう。

第三楽章:アダージェット
「アダージェット」ときいてまず思い浮かぶのはマーラーの5番ですが、本楽章はこれに負けず劣らずの美しいメロディーが奏でられます。しかし、ここで想起される感情はマーラのものほど濃いものではなくやっぱり現代的。中間部ででてくるピアノのメロディーはプログラムには「オルゴールのメロディ」と書かれてましたが、私には歌謡曲かTVドラマの主題歌のように聞こえました。マーラーのアダージェットの「本歌取り」的な効果もあるような気がします。ほとんど、ライトミュージックといってもいいかもしれません。

第四楽章:アレグロ・モルト
プログラムによれば「春を讃えてひたすら明るく軽やかに走りぬけるロンド風フィナーレ」。まさしくそうで、軽快に全曲をしめくくります。しかし大仰なところはありません。

終演後の拍手は盛大で暖かいものでした。客席からの拍手を受けるポジションで聴いたのはもちろんはじめてですが気持ちよいものですね。

ほとんど満席で、横のバルコニー席と1階の一番高そうな席がほんの数席だけ空いてました。 吉松さんがかつて「やっぱりできるだけ多くの人に聴いてもらえる音楽を書きたい。仮にとなりでロックコンサートをやってたとして、同じぐらいの数を集めるとは言わないけど3分の1(この数字の記憶はあいまい)ぐらいはきて欲しい。」とおっしゃってるのを読むかTVで聴くかしたことがありますが、まさに「現代音楽」でこれだけ人を集めることができたわけですからたいしたものです。

吉松さんといえば「朱鷺によせる哀歌」。これもたしか昔に民音現代音楽祭とかいうイベントで生で聴いたことがあったとおもいます(記憶があいまい)。このとき初めて聴いたはずですが「ああきれいな曲だな」と思ったのを覚えているような気がします。これに比べると交響曲第4番はかなり保守的な曲にわたしには思えました(べつに専門的な音楽教育を受けたわけでもないのでいいかげんですが)。

なお、当日のプログラムの後半はチャイコフスキーの4番でした。それから、アンコールで吉松さんの4番の第三楽章の後半を演奏されてました。(ど うりで、チャイコフスキーのときもピアノが片づけられてなかったわけです)。

藤岡さんと関西フィル、これからも吉松作品をたくさん演奏して、これらを「自分たちの音楽」として大事にしていってほしいと思います。

最後に藤岡さんが、「これからも是非できるだけ多くのかたに演奏会に足を運んでいただきたいと思います」とうったえられとりました。私もささやかながら応援しましょう。

(2001年6月8日更新)


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written by wabisuke hayashi