Wagner 「ラインの岸に薪の山を積み上げよ」(ニルソン/ヴェス)


Wagner

「ラインの岸に薪の山を積み上げよ」

クルト・ヴェス/ヴュルテンベルク国立管弦楽団/ビルギット・ニルソン(s)

(1984年9月16日リンツ・Brucknerハウス・ライヴ)カセット→MDへ

 リンツのBruckner・フェスティヴァルのライヴ録音放送からエア・チェックしたもの。ワタシお気に入りのBruckner交響曲第9番の前に演奏されたもの。女性に年齢はタブーだけれど、ニルソンは1918年生まれ、この時期66歳!って、信じられない声の張り、迫力、貫禄。引退は翌年1985年だから、ほぼ現役ラストの貴重な音源。こういう音源を聴いちゃうとフツウの中堅どころの「黄昏」は、何を聴いても不満を感じてしまうくらい。

 ヴュルテンベルク国立管弦楽団とは、シュトゥットガルト歌劇場のオーケストラが演奏会を開くときの名称だそう。ふだん録音では聴く機会の少ないこのオーケストラ、驚くほど深く、奥行きと落ち着きが感じられる響きでした。この曲「黄昏」、そして「指環」のオーラスでしょう。ドイツの歌劇場だから、実演経験も豊富と想像されます。あわてず、さわがず、ゆったりめのテンポ。激高せず、リキまず、ひとつひとつの音をお互いに味わうような、団員同士が音を聴き交わしているような、そんな味わいがある。

 金管の奥深さ、やや地味ではあるが充分に色気を感じる木管、常に控えめだけれどしっとりと艶消しな弦。ヴェスの個性なのか、常に抑制された表情。でも、弱さ、細さは感じさせない。

 ニルソンは全盛期のような、強靱な突き刺さるような鋭さは期待できないけれど、包み込むような豊満さがあるんです。高音も良く伸びているが、さすがに少々声の揺れはある。でも、そんなことは枝葉末節なことで、オーケストラともども余裕ある響きにゆったりと抱かれているような、じんわりとした感動が押し寄せます。

 2000年末の「指環」全曲聴破(ノイホルト盤)以来、しばらくご無沙汰だったWagnerを久々堪能。おそらく数少ないワタシのWAGER体験の中でも、出色のベストを争う素晴らしき音楽でした。

(この後に、Bruckner交響曲第9番が演奏されて、これがまた凄いんです)


 MDの余白に何を・・・ということで、

Borodin

「だったん人の踊りと合唱」

ホルライザー/ウィーン交響楽団(これはLPを処分するときカセットに残した音源のはず)

 ホルライザーはもともと録音が少ない上に、CD復刻でも冷遇されているドイツの、主に歌劇場で活躍した人。1913年生まれで、来日は1963年〜1991年まで9回を数えます。それでも知っている人は少ないかも。VOXに注目すべき音源がかなりあるはずだけれど、意外と手に入りにくい。(ワタシもほとんど持っていない)

 VOXも彼にとってはヘンな曲を録音させたものだけれど、なかなか立派な演奏でした。冒頭の木管の細かい音型の連続は、あらためて聴くとなかなか演奏がたいへんそうですね。VSOがややたどたどしい感じ(つまり技術的にやや怪しい)で、こういうのは嫌いじゃない。一転、静かで懐かしい民族的・エキゾチックな合唱が始まるが、やや生真面目すぎて表情は硬いか?それでも、この旋律、ワンパターンと言われようともワタシは好きなんです。

 ドイツ・ガンコ系指揮者に正統派合唱団(団体は不明)は力強い。ややユルいウィーンのオーケストラで、中央アジア系の荒々しくもお上品でない作品は似合わないかも知れないが、そういえばここ最近、こんな曲の新録音ってなくなりましたね。(2001年9月28日)


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written by wabisuke hayashi