Ermanno Wolf-Ferrari 管弦楽作品集
(ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団)


DEUTSCHE SHCALLPLATTEN 	TKCC70667

Ermanno Wolf-Ferrari

喜歌劇「スザンナの秘密」序曲
歌劇「マドンナの宝石」〜ナポリ人の踊り
喜歌劇「4人の田舎者」〜間奏曲
喜歌劇「町の広場」〜前奏曲/リトルネロ/間奏曲
喜歌劇「せんさく好きの女たち」序曲

以上 ベルリン放送交響楽団(旧東)

弦楽合奏のためのセレナード 変ホ長調

ベルリン室内管弦楽団

指揮 ハインツ・レーグナー

DEUTSCHE SHCALLPLATTEN TKCC70667 1975/6年録音 これは国内盤で1,000円(税込)

 Ermanno Wolf-Ferrari(エルマンノ・ヴォルフ・フェラーリ  1876-1948)は、イタリア/ドイツの作曲家。日本では、「マドンナの宝石」の間奏曲くらいしか知名度はないかも知れません。(このCDに収録されず、残念)このCD、現在では格安ボックスセットで聴けるが、ネロ・サンティ/パリ音楽院管弦楽団(ステレオ初期/収録作品は異なる)以来のまとまった作品集かも。

 どの作品も馴染み薄いかも知れないが、まず(作曲者17歳の作品である)弦楽合奏のためのセレナード 変ホ長調より(当CDには調性表示なし)から。ベルリン室内管弦楽団は苦み走った芯のある響きであって、艶々と表層に流さない。旧東側のベルリン・キリスト教会の適度な残響、奥行きも快感です。(放送交響楽団との管弦楽作品も同じ録音会場)

 センチメンタルで陰影豊かなる(ほんまに長調?)旋律が続いて、ウェットな心象に溢れました。ま、青年の若書きとは思えぬ名旋律の連続ですよ。いきなり切ない懐かしさに含羞の風情で始まる第1楽章、静謐な深呼吸がゆったり続く第2楽章「アンダンテ」、小声で秘密の楽しみを耳元で囁くような第3楽章「スケルツォ」、穏健と笑顔の「運命」リズムである終楽章。

 喜歌劇「スザンナの秘密」序曲の賑々しい愉しさ、どたばた場面に相応しい明るさ。「ナポリ人の踊り」は、ほの暗くも怪しい雰囲気がジョーダンぽくってリズムの刻みも躍動しております。「4人の田舎者」(題名がエエですね。ぜひ全曲聴いてみたい)の「間奏曲」はノンビリとしたワルツであり、「町の広場」前奏曲は、夜明けの爽やかなる空気を感じさせ、リトルネロはすました風情の静かなワルツ、間奏曲は切ない詠嘆であります。

 ま、どれも親しみやすく、わかりやすい旋律ばかり。どうして生まれたイタリアでは認められず、ドイツで人気が出たのかな?「なんちゃってイタリア風」旋律だからか。喜歌劇「せんさく好きの女たち」序曲は7分を越える堂々たる作品であって、美しいエピソードが次々と登場しました。オーボエ・ソロが印象的。

 練り上げられたアナログ録音であり、レーグナーは端正に、余裕を以てていねいに仕上げております。オーケストラの艶消しの響きは弦を始めとして、どれも感慨深いもの。硬派の巨大交響曲ばかりでなく、こんな親しげなる世界に親しむのも音楽の醍醐味であります。 

written by wabisuke hayashi