Weber ピアノ協奏曲集
(ローランド・ケラー(p)/ジークフリート・ケーラー/ベルリン交響楽団)
Weber
ピアノ協奏曲第1番ハ長調 作品11
ピアノ協奏曲第2番 変ホ長調 作品32
ピアノ小協奏曲ヘ短調 作品79
ローランド・ケラー(p)/ジークフリート・ケーラー/ベルリン交響楽団(旧西)
VOXBOX CDX5098 1979年 2枚組1,850円(ほど?)で購入
VOXレーベル入魂の「The Romantic Piano Concerto,Vol.7」という素晴らしいシリーズものの一部〜残念ながら第7巻しか買っておりません。この2枚組では、ほかVolkman、Berwald 、Alkan、Schumann(「序奏とアレグロ・アパショナート」)、Raff、Liszt(「死の舞踏」)が収録され、なかなか意欲的なんです。
Weberといえば「魔弾の射手」や、「舞踏へのお誘い」、あと序曲集くらいしか普段聴かれないけど、名曲揃いなんですよ。ピアノ・ソナタ、クラリネット作品(協奏曲、五重奏曲、ほか)ホルン協奏曲、フルートの作品、交響曲だって悪くない。そして、このピアノ協奏曲集のウキウキするような楽しさはどうでしょうか。どれも「素朴で明るいドイツ」といった風情で、まず外れがない。このCDは1990年代中盤に購入して楽しんできたものだけれど、21世紀”廉価盤の時代”を迎えた今となっては、特別な感慨とは言えぬ(録音状態も少々落ちる)存在かも知れないけど・・・ま、エエじゃないですか。
ローランド・ケラー(1945年生まれ)は日本では知名度低いかも知れないけれど、ウィーン音楽大教授であり、日本人にも多くの教え子がいらっしゃるようです。来日も数度。Mendelssohnの録音有。”Weberは、どれも「素朴で明るいドイツ」といった風情”〜に間違いはなくて、妖しげな半音階やら陰影に富んだ旋律方向ではなく、ピーカンの明朗闊達さ!
ジークフリート・ケーラー(1923-2017独逸)指揮するところの「ベルリン交響楽団」(旧西)が少々ヒスでヘボく、それはほとんど録音の責任だと思うが、大音量で響きが濁ってツブれます。閑話休題(それはさておき)ピアノはほとんどリリカルで暖かく、ふっくらとした響きを誇って、低音と芯のしっかりしたもの(スタインウェイではないと思う・・・けど自信はない)。やはり、時に大きな音が鳴ると、せっかくのデリカシーなタッチが減退して聞こえるから、それは悪名高きVOX録音の問題でしょう。
どの作品も緩徐楽章の繊細さが際立って、編成薄きベルリン響(旧西)だって味わい深いもの。(けっして上手い!とは言えぬが)ハ長調協奏曲の第2楽章「アダージョ」の室内楽風バックと、明快華麗なソロの対比が気持ちよろしい。著名なるBrahms ピアノ協奏曲第2番 変ロ短調第3楽章「アンダンテ」を短く凝縮したテイスト有。終楽章は”凝ったHaydn”でしょうか。悦ばしさが疾走躍動します。ちょっとした暗転も存在します。
変ホ長調協奏曲は、堂々たる戴冠式風の前奏で始まるが、オーケストラのアンサンブルは少々厳しい感じ。風格あるソロが朗々雄弁と開始されて、すぐに人懐こい、優しいいつもの旋律が戻って安心します。それにしても・・・これ相当な難曲のように聞こえますね。ここの緩徐楽章こそ、チェロ・ソロも入ってBrahms 風ですか?音楽の柄という意味ではずいぶんと違うけれど。バックの弦は繊細ですよ。そして終楽章は、いつもの快活さ全開!でして、細かい音型がせわしなく、嬉しげに飛び跳ねました。
小協奏曲ヘ短調は珍しく、暗く纏綿とした開始・・・Mendelssohn(「フィンガルの洞窟」)風?か。「中世の姫君と騎士のロマンス」を意図したそう。遣る瀬ない旋律をソロとバックが、美しく絡み合ってしっとりさせますね。やがて劇的な表情のまま速度を上げ、やがて明るいいつもの旋律が主流へと変化しました。ケラーの技巧は明快ですね。テクニックが先に立って、空虚な印象も与えない。
(Weber得意の)ファゴット〜クラリネットに導かれて、まるで凱旋行進のような場面へと至ります。「フィガロ」を連想しました。ソロは速度を上げて、目まぐるしくも楽しげな旋律を疾走しました。ラストはいつもの大団円で、素朴な悦びに充ちておりました。
(2006年5月26日)
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