Weber クラリネット室内楽作品集
(カールマン・ベルケシュ(cl)/アウアー弦楽四重奏団/イェネー・ヤンドー(p))


NOXOS  8.553122 Weber

クラリネット五重奏曲 変ロ長調 作品34
クラリネットと弦楽4重奏のための序奏、主題と変奏(遺作)
クラリネットとピアノのための「グランド・デュオ・コンチェルタント」(協奏的大二重奏曲)変ホ長調 作品48*
歌劇「ジルヴァーナ」からの主題による7つの変奏曲 変ロ長調 作品33*

カールマン・ベルケシュ(cl)/アウアー弦楽四重奏団/イェネー・ヤンドー(p)*

NAXOS 8.553122 1994年録音

 CDが高かった20-30年ほど前、若く貧しかった自分は廉価盤厳選入手して、ていねいに聴いておりました。Weberの室内楽を”珍しいもの”と呼ぶには少々微妙かな?かつてはメジャーではない作品をCD(LPでも)入手するのは至難、音楽聴取の幅を広げるのに苦労したものです。(FMエア・チェックを熱心にしておりました)NAXOSは現在NMLに基軸を移したかも知れぬけど、いずれ安価に多種多様な音楽を普及してくださる姿勢は立派でしょう。Weberの作品は素朴な旋律が躍動して、たいていお気に入り。このCDはかつてヘンク・デ・グラーフ(cl)のついでにちょっぴり言及しておりました。

  Kalman Berkes(生年情報不明)はハンガリーの名手、指揮者としてジュール・フィルの音楽監督も務めたらしい。幾度も来日しておりますね。クラリネット五重奏といえばMozart、Brahms、いずれも諦念、諦観を思わせる味わい深い名曲。こちらWeberは叙情的な風情に明るく、ちょっぴり陰影を感じさせる楽しい作品、名曲に間違いありません。名手Heinrich Joseph Baermann(1784ー1847)のための作品とのこと。Wikiによると弦楽パートがシンプルな伴奏に徹して、協奏的な色合いが強いとのこと。第1楽章「Allegro」シンプルかつ憂愁な雰囲気な弦楽の和音からスタート、あとはめまぐるしくも細かい音型のクラリネットソロが自在に走ったり、立ち止まったり、この符点の躍動がいかにもWeberでしょう。彼の作品は、たいてい独逸庶民の親しげな味わい旋律に充ちておりました。(10:16)

 やや残響多め、金属的な響きの音質だけど、ベルケシュのクラリネットはヴィヴラートも美しい音色であります。

 第2楽章「Fantasia: Adagio ma non troppo」は幻想曲の題名に相応しく、スケール大きな纏綿とした歌であります。まさに変幻自在、低音から高音迄ニュアンスと色彩、強弱のデリカシーに配慮の行き届いたソロの妙技はおみごと。(5:49)短いけどこの楽章が全曲の白眉かも。第3楽章「Menuetto: Capriccio presto」メヌエットとなっているけど、溌剌としたリズムはスケルツォでしょう。急激かつ細かい上昇音型を難なくこなす技量連続、平穏なトリオを挟んで、いかにもWeberらしいユーモラスな疾走であります。(4:56)

 第4楽章「Rondo: Allegro giocoso」。ギャロップって乗馬の全速力という意味ですよね。前楽章からの疾走はテンポ・アップして華やかな旋律連続、この明るさ、熱気に溢れた躍動がMozartやBrahmsにない個性でしょう。この作品も大好き。ベルケシュ絶好調の技巧。(5:34)

 「クラリネットと弦楽4重奏のための序奏、主題と変奏」は、懐かしくも暖かい静かな旋律からスタート。やがてそっと走り出す変奏、前作より弦の絡みも多く、やがて高らかに、華やかに、優雅に進んでいきます。この作品も健全な明るさいっぱい。ベルケシュは表情豊かにスケールは大きいですね。快速パッセージを難なくこなして大団円を迎えました。(8:18)

 「グランド・デュオ・コンチェルタント」以降は(これまたハンガリーの名手)イェネー・ヤンドー登場。クラリネット・ソナタ風だけど、題名通りスケールを感じさせる協奏的作品であります。例の如し明るく躍動するユーモラスな主題を交わし合う第1楽章「 allegro con fuoco」はクラリネット、ピアノが対等平等の活躍。(9:23)第2楽章「andante con moto」は哀愁に嘆いて、まるでオペラのアリアみたい。やがて優しい癒やしの表情も出現します。(6:00)ここのニュアンスも絶品でっせ。第3楽章「rondo」は優雅に舞い踊る華やかなエンディングです。クラリネットの旋律はピアノとぴたり、息を合わせてリズミカル。(6:45)ピアノを管弦楽に替えればそのまま協奏曲になりそうな”大きな”作品でした。

 「ジルヴァーナ変奏曲」はオペラのアリアからの旋律引用+変奏なのでしょう。いかにも”歌”なのは前曲第2楽章「andante con moto」より色濃いのは当たり前。ベルケシュは朗々と雄弁に、楽しげに吹いてますよ。ピアノが活躍するのはWeber自身の演奏を想定していたのでしょう。弱音の抜き方がにくいほど素敵。しっとりとした歌と例のユーモラスなリズムが出現します。(9:34)

(2017年3月11日)

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written by wabisuke hayashi