J.Strauss 美しく青きドナウ/加速度円舞曲/
皇帝円舞曲/南国のバラ/ピツィカート・ポルカ
(ヨーゼフ・クリップス/ウィーン・フィルハーモニー)


J.Strauss

美しく青きドナウ
加速度円舞曲
皇帝円舞曲
南国のバラ
ピツィカート・ポルカ

ヨーゼフ・クリップス/ウィーン・フィルハーモニー

DECCA 2894-30868-2 MG→処分済。現在ならネットにて音源拾えます。 1956年(1957年?)録音  

わずか38分の収録だけれど、LP時代からお気に入りでした。速めのテンポ、ちょっとハズむような味わいも楽しい。音質がちょっと落ちるのは残念賞。(文句言うと罰当たりまっせ。強奏でせっかくの美しいウィーン・フィルが濁る)かっちりメリハリもあって、柔らかいところとの対比も充分。
・・・とは、2003年自らのコメント。ウィンナ・ワルツは大好き故【♪ KechiKechi Classics ♪】にてシリーズ化しておりました。(ここ数年サボりがち)

LP時代〜そしてCD時代に至っても愛聴していた「本場」演奏也(処分済)。こうしてパブリック・ドメインになって再会してみると、演奏はもちろんだけれど音質の良好なことに驚かされます。表情はけっこう濃厚、リズム感しっかり、そして浮き立つように優雅、粋。強面ではないが、薄味ではない。いろいろ経緯があったんだろうが、クレメンス・クラウスのあと、ニューイヤー・コンサートの指揮者はこの人が務めるべきであった、と思います。唯一の不満は収録作品が少ないこと。「ウィーンの森」や「芸術家の生活」は必須でしょう。
これは2010年。パブリック・ドメイン音源自主CD化路線の成果であります。音質云々の件は、”以前所有のCDに比べて”ということであって、英DECCAステレオ初期特有のぼわんとして、かつ少々硬い音質であります。ややオン・マイク、肌理は粗いが、いずれ現役で拝聴可能な水準と評しておきましょう。

 演奏は絶品。

 この人は旋律リズムが柔らかすぎて、コシが足りぬと感じることも多いのだけれど、ここでは溌剌としたリズムに自信が溢れます。絶妙なるルバート含め、これがウィーンの粋なのでしょう。それは「加速度円舞曲」に顕著な特徴であります。自在なテンポ操作+メリハリに自信と優雅が溢れました。ラスト溌剌とした金管の迫力も素晴らしい。誰でも知っている「美しく青きドナウ」にも決然としたリズムのキレが感じられて、ヤワな雰囲気だけの演奏に非ず。もちろん無粋で生真面目なだけの風情じゃないけれど。(「ウィーンの森の物語」も録音して欲しかった)

 「皇帝円舞曲」だって、序奏からけっこうリキの入ったリズムの刻みになっていて、意外なほどの(ある意味)”硬派”な歩み。だから(思いっきり)優雅なる主部との対比が際立つのでしょう。強弱、表情の変化の明晰なこと、お見事であります。「ピツィカート・ポルカ」でも端正なアンサンブル、姿勢は変わらず、微妙な”揺れ”、”ニュアンス”の妙に聴き手を誘います。

 「南国のバラ」はワタシのお気に入り作品也(「芸術家の生活」も録音して欲しかった)。憧憬に溢れ、明るい日差しが見えませんか。やがて一気呵成に走り出して、優雅な定番ワルツへ。ノンビリ・ウキウキとした旋律風情がたまりまへんなぁ。例の如し、リズムの刻みに曖昧さはなくて、喜びが走り出してテンポが動きます。

 亜米利加のワルツだって悪くない。本場物だけを称揚することはないけれど、この”訛り”はやはり本場と呼んでよいでしょう。堪能いたしました。

(2011年12月17日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi