Wagner 前奏曲/管弦楽作品集
(ユーリ・シモノフ/フィルハーモニア管弦楽団)


BRILLIANT 99493 Wagner

舞台神聖祭典劇「パルシファル」前奏曲
楽劇「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」
楽劇「ジークフリート」より「森の囁き」
楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートのラインへの旅」「ジークフリートの葬送行進曲」
楽劇「トリスタンとイゾルデ」〜前奏曲と「愛の死」

ユーリ・シモノフ/フィルハーモニア管弦楽団

BRILLIANT 99493/1 1991年録音(他シモノフ、フランチェスコ・ダヴァロスの2枚との組み合わせ)

 全然関係のない二人の指揮者(フィルハーモニア管弦楽団が共通)「リエンツィ」序曲がダブって収録されるムリムリなコンピレーション、しかも、CD1と3のレーベル印刷が入れ替わっているという粗雑な製品です。音楽聴取には無関係だけど、製品の意匠水準という意味で(価格問題はあるけれど)もう少していねいなお仕事をしていただきたかった。できればCDを”工業製品”、”消耗品”としてではなく”芸術品”として扱って欲しかった・・・だったら、あと3倍金払えよ!ってか?

 閑話休題(それはさておき)、虚心にスピーカーより流れる音楽に耳を傾けるならば、その清冽クリア、テンションと集中力溢れる演奏に感銘一際深いことに気付きました。録音極上、作品収録も盛り沢山(「妖精」「恋愛禁制」序曲は希少価値有)、そしてこの価格!文句あなし。中学生時代に出会った「リング」管弦楽作品集〜ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団(1968年)は2,000円(!当然LP)、仰け反るほどの感動を少年のココロ奥底に植え付け、中年煮詰まった現在でも未だ息づいております。だからこんな類の作品は皆、大好き。Wagnerは結構お気に入りなんです。

 Yuri Simonov(1941ー露西亜)は、ロシアの指揮者で来日も果たしております。ロイヤル・フィルとの録音が廉価盤音源に多く流用されているということもあって、メジャーな存在ではないかも〜世代問題か、いわゆる”露西亜風”イメージ(濃〜い表情/爆演とか)とは一風異なる印象を持っておりました。充分、個性的ではあるけれど。

 ”清冽クリア、テンションと集中力溢れる演奏”〜これはフィルハーモニア管弦楽団の持ち味+録音印象が影響していると思われます

・・・との2007年書き掛けのコメント発見。14年経って久々、この音源を再聴機会を得ました。シモノフは1998年来モスクワ・フィルの長期政権担当だけど、もともとはオペラ畑の人らしい。ハデさのない音質はまずまず。売れ筋揃えた選曲も最高です。

 冒頭に配されたのは舞台神聖祭典劇「パルシファル」前奏曲。正直なところ未だ全曲通してまともに聴いたこともない(筋もワカラん)長大なる作品。浄化された静謐な佇まいの旋律サウンドは、若い頃掴みどころがなくてワケがわかりませんでしたよ。華麗なる加齢を重ねたら、なんとも神々しい一条の光が差し込むような”神聖さ”はしっかり理解できるようになりました。オケの清潔清廉な響き、流れの良い表現でしょう。(14:27)

 映画音楽にもなっておそらく一番人気な「ワルキューレの騎行」。金管炸裂!ノリノリの作品、バリバリ金管前面に爆発!させてもフィルハーモニア管弦楽団の金管はマイルド、シモノフはバランス感覚に過不足のない推進力で乗り切りました。(4:49)リング中もっとも馴染みにくい「ジークフリート」、そのなかでも主人公が瑞々しい感性に目覚める「森の囁き」。小鳥も啼き交わす爽やかデリケートな表情も豊か、ほっとさせる名曲でしょう。(8:25)

 「ラインの黄金」と並んでもっと拝聴機会が多い「神々の黄昏」。「ジークフリートのラインへの旅」は管弦楽の売れ筋でしょう。深いホルン(←これがザ・フィルハーモニアの伝統)は夜明け前、オーボエが夜明けの日差しを表現して、涼やかな弦が若者の旅立ちの決意を盛り上げる・・・美しい旋律はこども時代に身に着けたもの、シモノフの雄弁、オケを一杯に鳴らせて力強い節回し、地に足ついたリズム、メリハリも最高。(個人的にはがっかりする)途中カットもありません。(12:53)「ジークフリートの葬送行進曲」は深刻神妙な趣から、賑々しい金管打楽器の全力全開への流れも絶妙なもの。シモノフはオケの鳴らせ方が上手いですね。(8:07)

 ラストは楽劇「トリスタンとイゾルデ」より官能性極まる前奏曲と「愛の死」。これは煽るように絶頂に上り詰めるカルロス・クライバーに驚いたのも記憶鮮明、こちらオケの清潔な響きに乗って粛々と美しい旋律が流れて、切ない語り口は決然としてピークへの盛り上げ方絶品。わずかなテンポアップも効果的でしょう。(「愛の死」へトラック分けなし)オペラを聴いてしまうとイゾルデの歌がないと物足りぬと感じるもの。木管金管の美しさはここも絶品、シモノフの節回しはいつもカッコよい。(18:20)

written by wabisuke hayashi