歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲/歌劇「さまよえるオランダ人」/
歌劇「リエンツィ」序曲/歌劇「タンホイザー」序曲/
楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と「愛の死」/ジークフリート牧歌
/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲/
舞台神聖祭典劇「パルジファル」より前奏曲 (ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル)
Wagner
歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
歌劇「さまよえるオランダ人」
歌劇「リエンツィ」序曲
歌劇「タンホイザー」序曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と「愛の死」
ジークフリート牧歌
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
舞台神聖祭典劇「パルジファル」より前奏曲
ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル
Westminster 1962年録音
前回拝聴は2008年。
そこにも書いたように「ローエングリン」「オランダ人」両面に収録された17cmLP以来のお付き合いは昔馴染み、やがて30cmLP、そしてCDでも愛聴しておりました。デッドに奥行き空間も残響も足らぬ音質、リハーサルなどまともにやらぬHans Knappertsbusch(1888ー1965独逸)だからアンサンブルの精度など云々すべきではないのでしょう。この度Wagner音源ファイルをすべて失って、順繰りネットより再入手中、自分の体験の原点から振り返って噛み締めるように聴いております。
記憶通りの慌てずゆったりと落ち着いたテンポ、悠揚迫らざるスケール、そして音質の加減もあってか、オーケストラの素朴な響きを味わい深く堪能いたしました。現代の颯爽と流線型にカッコ良いスタイルとは時代が違って、まったりと味の濃い個性が音質乗り越えて堪能できました。
初耳時にそのあまりの素朴なアンサンブルに驚いた記憶も鮮明な、静謐に神聖な「ローエングリン」(7:23)は当時”つかみどころがない”と感じたもの。無骨にややユルい「オランダ人」(12:23)は骨太に噛み締めるような重量感。どちらも昔の記憶と寸分変わらない。カッコよい上昇旋律の「リエンツィ」(13:37)も、壮大なるスケールを誇る「タンホイザー」(16:08)も著名な録音が多い輝かしい作品、これはずいぶんとテンションが低い?落ち着いて素朴、慌てぬ風情でした。
甘美な旋律が歌う「トリスタン」の彫りの深い官能的表現に不足はないけれど、管弦楽だけでは物足りない。ここはやはり女声がほしいところ(15:35)「ジークフリート牧歌」の静謐、安寧の愛の世界は絶品!これは飾らぬサウンドに雰囲気も最高でしょう。(19:12)勇壮な「マイスタージンガー」神聖なる「パルジファル」とも巨魁なスケールに余力を感じさせて、のんびりまったりと敬虔、湧き上がるような高貴な精神と仰ぎ見るような立派な演奏でした。オーケストラも実力充分。(10:54-11:44) (2024年8月10日更新)
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Wagner
歌劇「リエンツィ」序曲
歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
ジークフリート牧歌
楽劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー
MCA MCAD2-9811-A 1963年録音 150円(中古)
ほんのこどもの頃、「さまよえるオランダ人」序曲/「ローエングリン」前奏曲が裏表になった17cmLPを所有しておりました(おそらく当時600円!)。もしかして、社会人になってからLP2枚分を購入していたかもしれない(記憶曖昧)。いずれ、残響も奥行きもない乾いた劣悪音質、流麗とはほど遠いヘタクソ演奏に驚き呆れた記憶ばかりであります。やがて幾星霜、人生の荒波に流され、もまれ、このCDに出会ったのが2006年5月16日新宿DU・・・とのメモが残っておりました。
こどもの頃の記憶力、集中力は驚くべきもので、ワタシの基本的嗜好はほぼその時期に確立しております。英国音楽好きだって「グリーンスリーヴス」がルーツですから。Mahler だって、ワルター/コロムビア交響楽団の「巨人」が刷り込みなんです。久々の邂逅印象は、まず音質がマシ、ということ。昔聴いた17cmLPの音質が酷すぎたのか、もともとがこの程度であったのか、いずれちゃんと聴ける水準であります。優秀録音とは言えないけれど。
オーケストラの響きが素朴、牧歌的であること(あまり上手いオーケストラじゃない)。リズムが重いというか、たどたどしい歩みがあって、まことに耳あたりが悪い。細部アンサンブルの縦線をきっちり合わせようと意欲は元よりないようで、ひたすら悠々たる巨魁な流れが、重々しくうねる演奏であります。スタイリッシュとかカッコ良さとはほど遠いものがあって、ま、他のクナッパーツブッシュ演奏を聴いても印象は変わらないから、これがスタイルなんでしょう。
「リエンツィ」から始まって、その雑然としたアンサンブルに最初戸惑いつつ、やがて「オランダ人」に至って耳慣れ、怒濤の迫力にココロ奪われました。噛み締めるようなテンポのタメがあって、アンサンブルの磨き上げ云々するのは空しい行為と自覚いたします。ミュンヘン・フィルは明るく、暖かく、重苦しくないサウンドで鳴っております。
「ジークフリート牧歌」は絶品。ま、一般に遅いテンポの人だけど、ここではさらりと、そっと繊細に音楽は流れます。あくまで素朴さは失わない、甘すぎたり、雰囲気で聴かせるワケじゃない。誠実に、丁寧に歌うんです。まさにこの作品のヴェリ・ベスト。
この「ローエングリン」前奏曲はこどもの頃には理解できないものでした。どれがどれだか主題が見えない、天使の囁きのような弦の旋律がキレイに絡み合わない、ついにやってくる官能の爆発が有機的に導かれない・・・といった記憶だったはずが、たった今現在の耳では、それはすべて充足されている不思議。ここでも特別にテンポが遅かったり、粘ったりせず、自然な流れが揺れて呼吸しております。
素っ気なく、表面は磨かれないが、粗削りな美しさに溢れます。金管楽器は時に乱れる(それも粗野な味わいが悪くない)が、弦の清涼な歌は賞賛されるべき水準でしょう。
こどもの頃の記憶はいったいなんだったのか。
(2008年11月28日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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