Vivaldi ヴァイオリン協奏曲ニ長調RV208「ムガール大帝」/ハ長調RV186/
イ短調 RV 3/ホ長調RV 271「恋人」/ハ長調RV 171/ニ長調 RV2
(シュロモ・ミンツ(v)/イスラエル室内管弦楽団)


NI2500 Vivaldi

ヴァイオリン協奏曲ニ長調RV208「ムガール大帝」/ハ長調RV186/イ短調RV3(「調和の霊感」作品3/6)/ホ長調RV 271「恋人」/ハ長調RV 171/ニ長調RV2(「調和の霊感」作品3/9)

シュロモ・ミンツ(v)/イスラエル室内管弦楽団

Nimbus NI2500 1992年

 Shlomo Mintz(1957ー)がイスラエル室内管弦楽団のミュージックアドヴァイザーを務めていた頃(1989-1993)、Vivaldiの協奏曲をCD10枚分録音していたことは意外と知られておりません。レーベルがマイナーで販売窓口が狭かったのか、時代が古楽器系に移行したせいでしょうか。おそらくは団塊の世代に大人気だったイ・ムジチとか、その後アーノンクール(1977年「四季」)辺りを嚆矢に、古楽器系が次々と切れ味あるリズムで登場して、それらに比べると存在そのものが少々ジミだったのかも。

 これが端正な美音、歯切れの良いリズム、小編成のモダーン楽器アンサンブルは誠実そのもの、やや表現が四角四面に誠実生真面目だけど、それはVivaldiの愉悦を損なうものに非ず。もちろん音質抜群。Vivaldiはどれを聴いても似たような?という声には一理有、ま、硬いことを云わず明朗な、伊太利亜の陽光を感じさせる晴れやかな旋律を愉しみましょう。ニ長調協奏曲RV208「ムガール大帝」の由来はWiki参照のこと、Bachがオルガン協奏曲第3番ハ長調 BWV594に編曲して、例の如し巨大なるスケールに変身するのは驚くべきことです。こちら第3楽章「Allegro」に長大壮麗なるカデンツァが入らないから、もしかして作品7第11番(RV208a)なのかも。

 ハ長調協奏曲RV186は牧歌的に晴れやかな旋律にほっといたします。第1楽章「Allegro」には陰影も感じさせて素敵、第2楽章「Largo」にもシンプルなヴァイオリン・ソロにちょっぴり哀しみが宿りました。第2楽章「Allegro」は一点の曇りもない躍動であります。イ短調協奏曲RV3は馴染みの「調和の霊感」より。これがミンツのソロがしっとりウェットに物悲しい風情抜群、別に引き崩している”泣き”じゃないんだけど、際立って美しい開始(第1楽章「Allegro」)也。第2楽章「Largo」に哀しみはいっそう深まって、第3楽章「Presto」の生真面目なリズムの刻みに硬さはありません。

 ホ長調協奏曲RV 271「恋人」。これもちょっと甘い雰囲気のある人気作品ですよね。第1楽章「Allegro」は溌剌快活な若々しい”恋人”みたい。途中型通りの”憂いの表情”(短調へ暗転)も陰影を深めて、ミンツのソロも甘いもの。第2楽章「Largo」の儚いため息のようなソロは恋の不安?最高っす。第3楽章「Allegro」は一点の曇りもない伊太利亜の陽光が戻ってまいりました。ハ長調協奏曲RV 171はユーモラスな明るい旋律がシンプルに躍動しておりました。

 ラスト、ニ長調協奏曲RV2も「調和の霊感」からの著名な作品。弦の合奏が喜びいっぱいに開始する第1楽章「Allegro」、通奏低音のチェンバロが印象深くヴァイオリン・ソロと対話する第2楽章「Larghetto」、第3楽章「Allegro」には第1楽章の歓喜が戻ります。ミンツのVivaldiCD10枚全部続けて聴け!と云われると少々ツラいけど、この一枚は間違いなく穏健派の美しいモダーン楽器の成果であります。

(2016年4月23日)

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written by wabisuke hayashi