Vivaldi ヴァイオリン協奏曲集
(ダニエル・ホープ(v)/ヨーロッパ室内管弦楽団)


DG UCCG-1437 Vibaldi

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 RV234 「不安」
ヴァイオリン協奏曲ホ短調RV273
2台のヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ・のソナタ ニ短調 作品1の12 RV63 「ラ・フォリア」
ヴァイオリン協奏曲 変ホ長調 作品8の5 RV253 「海の嵐」
アリア「太陽はしばしば」 (歌劇「救われたアンドロメダ」より)
2台のヴァイオリン、チェロのための協奏曲 ニ短調 作品3の11 RV565 「調和の霊感」より

ダニエル・ホープ(v)/ロレンツァ・ボッラーニ(v)/ウィリアム・コンウェイ(vc)/アンネ・ソフィー・フォン・オッター(ms)/他/ヨーロッパ室内管弦楽団

DG UCCG-1437 2008年録音

 モダーン楽器による快速バロック演奏。旋律表現音色種々変化取り揃えて変幻自在、キレッキレの技巧を駆使して闊達ノリノリなリズムを刻むDaniel Hope(1973-南阿弗利加)個性前面の一枚。この人はユーディ・メニューインに育成され、著名なボザール・トリオのメンバーだったのですね。往年の巨匠らによる豊満な世界からもちろん遠く、スリムな風情は古楽器奏法に比較的近いけれど、それとも世界が異なる、もっと自由に、テンション高く緊張感に充ちた世界は浮き立つように新鮮でした。ヨーロッパ室内管弦楽団って無国籍なサウンドに感じて、ウェットな旋律にも乾いた美しさがありました。音質極上。

 ヴァイオリン協奏曲ニ長調 「不安」は劇的に叩きつけるような鋭角にスリリングな開始、緩徐楽章のソロは大げさに表情は豊か、終楽章はリズムが弾けるように劇的でした。Allegro molto-Largo-Allegro(2:00-1:27-2:40)ヴァイオリン協奏曲ホ短調は前曲以上に”不安”げに暗い出足、ソロが詠嘆しております。緩徐楽章のソロは弱々しく泣いて絶品の節回し、終楽章はウェットに情感豊かな旋律でした・Allgro non Molto-Largo-Allegro(5:11-3:52-5:52)伴奏の反応がよろしくて強弱の対比はデリケート、ソロとの息の合わせ方はおみごとでしょう。

 「ラ・フォリア」は誰でも知っている哀愁の旋律が変奏される、Arcangelo Corelliにインスパイアされた単一楽章作品。通奏低音はテオルボでしょうか(←大活躍/チェロも入る)。 Lorenza Borrani (1983-伊太利)はヨーロッパ室内管弦楽団のコンミスとのこと。ダニエル・ホープと丁々発止の掛け合いは劇的緊張感と、緩急豊かな対比に充ちたもの。(9:33)ヴァイオリン協奏曲 変ホ長調「海の嵐」は著名な「四季」(冬)の後に配置されて、そのワリを喰って演奏や録音機会は少ないかもしれません。元気よろしい快活な始まりは例の如し、細かい音型のソロと合奏が挟まれるリトルネロ形式とか。湧き上がるような熱気を感じさせます。第2楽章わずか16小節、ほの暗くしっとり纏綿とソロが歌います。終楽章もリトルネロ形式、がっちりとしたリズムの合間にソロが軽快に歌って、いかにも馴染みのVivaldi風味と感じたものです。Allegro-Largo-Presto(2:57-2:40-3:36)

 歌劇「救われたアンドロメダ」とは作品存在自体初耳、2002年に発見され、2004年にアンドレーア・マルコンによって蘇演されたと検索できるけど、作品全貌は見えないし、真作かどうかも怪しいらしい。アンネ・ソフィー・フォン・オッターのしっとり哀愁のアリア「太陽はしばしば」 は絶品の歌唱+名曲(言葉の意味ははわからない)もしかしてオリジナルはカウンター・テナー向けのものかも。ヴァイオリン・オブリカートが忍び泣いております。(9:18)ここがこのCD収録中の白眉でしょう。

 ラスト、著名なる「調和の霊感」より2台のヴァイオリン、チェロのための協奏曲 ニ短調 作品3の11は著名なる名曲。3人のソロの掛け合いの緊張感、リズム感の強調、優しい部分での抑制とバランスが計算されて、こんなに豊かな表情の変化を経験したもの初めてでした。(0:55-3:11-2:12-2:21)

(2023年2月18日)

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written by wabisuke hayashi