Mozart ヴァイオリン協奏曲全集
(エミー・ヴェルヘイ(v)/マルトゥレット/コンセルトヘボウ室内管弦楽団)


MasterTone 0014(Verdi Records原盤)売却済BRILLIANT99217/8 1989年録音 Mozart

ヴァイオリン協奏曲第1番 変ロ長調K.207/第2番ニ長調K.211/第3番ト長調K.216/第4番ニ長調K.218/第5番イ長調K.219
アダージョ ホ長調K.261/ロンド変ロ長調K.269/ロンド ハ長調K.373

エミー・ヴェルヘイ(v)/エドゥアルド・マルトゥレット/コンセルトヘボウ室内管弦楽団

MasterTone 0014(Verdi Records原盤2枚$3.98) 売却して→BRILLIANT99217/8入手  1989年録音

 以下の記事はおそらく20世紀中の記事であって、どんどんCDは買い替えたり、処分したり、で、十数年前のCDは棚中顔ぶれを変えております。BRILLIANTのMozart 全集は「40枚組」(選集)を早々に入手したため、バラ買いして徐々に追加収集、やがて170枚全集で出現→値崩れ→リニューアルして現役、もう価格云々するのが空しいくらい、一枚単価@100遙かに切っております。そこでは、このヴァイオリン協奏曲はカルミニョーラの担当になっておりますね。ほんまは(なんでも)少しずつ、ゆっくり味わいながら収集していく〜というのが正しい姿勢なんでしょう。でも、CDはどんどん廃盤になって入手しづらくなるし、全集ど〜んと値下がりして再発されちゃう・・・でも、今回はあまりの既存入手ダブりの多さに全集再購入しておりません。微妙に音源を替えているのも悔しいが。

 このエミー・ヴェルヘイは現在でも入手可能です。時代は変わりました。こどもの頃から愛読していた「レコ芸」への言及が以前のコメントに存在するけれど、もう10年以上その雑誌を見ておりません。そんな金があったらCD買ってますよ。情報や世評はネット上でいくらでも入手可能な時代に。わずか十年ほどの経過で、古楽器奏法も盛んになりました。久々の拝聴は〜

 2枚目ニ長調K.218〜イ長調K.219より。オーケストラは例のコンセルトヘボウ管弦楽団のメンバーより成る常設の室内オーケストラとのこと。マルトゥレットの手腕のせい?録音印象(オン・マイク/奥行き浅い)か、まずはフツウ、それなりの(あまり緻密ではない)アンサンブルであります。10年前のワタシは”切れ味が鋭すぎたり、神経質になったりしない、しっとりとした暖かい音色”、”線は細すぎず、豊満になりすぎず、ちょうど”、”テクニック的な破綻はありませんが、技術を意識させない自然なフレージング”、”ヴィヴラートが適度で、爽やか”・・・なるほどなぁ。ほとんど言い尽くされている感じ。おそらくはグリュミオー旧全集(1950年代モノラル録音)が念頭にあったんじゃないか。それともハイフェッツ辺りか。

 穏健、暖かいスタンダード。セクシーで艶のある音色に非ず、おそらくはマルトゥレットの伴奏印象も手伝って、洗練されたモダーンなリズム感でもない。ノビノビとして作為のない表現は”線は細すぎず、豊満になりすぎず、ちょうど”といったところかな。ニ長調K.218協奏曲では”洗練されたモダーンなリズム感ではない”ことが(ちょっぴり)気になったけれど、やがてイ長調K.219に至って素朴な愉悦がじわじわと伝わってきました。第1楽章カンデツァは白眉の魅力を誇ります(誰の作かは不勉強)。そうとうなテクニックだけれど、ほとんどそれを前面に表出させない。

 第2楽章「アダージョ」は、纏綿嫋々ではない、もっと健全で肉付きのよろしい音色(豊満なる贅肉に非ず)。ややオーソドックスに過ぎるか。終楽章も激しい現代には少々ノンビリとした味わいと聴き取りました。

 Mozart に駄作なし。アダージョ ホ長調K.261/ロンド変ロ長調K.269/ロンド ハ長調K.373、研究者の報告によると各々成立経緯があるらしいが、どれも絶品、文句なしの名曲ばかり。アダージョ ホ長調K.261に於ける陰影豊かな安寧(ようやく!コンセルトヘボウらしい深い音色のフルート大活躍)、ロンド変ロ長調K.269は愉悦に充ち、ウキウキとスキップするようなリズム感の妙、そして、ロンド ハ長調K.373には喜びのあまり駆け出すような天才の閃きを目撃可能。ワタシのもっとも愛する旋律のひとつ。

 ヴェルヘイは、おそらく協奏曲より好調であって、清潔なフレージングは抑制が利いてデリケート、ほとんど理想的。どこにも力みはない。

 今回、残り第1〜第3番再拝聴成らず。悪くない音質と思うが、少々色気、平板で奥行き足りぬ〜というのは贅沢な感想でした。

(2011年4月15日)
 

 クラシック音楽雑誌の老舗「レコ芸」は、1999年頃から輸入盤(論評)完全解禁したようで、日本では馴染みの薄い演奏家もじょじょに取り上げられるようになってきました。それでも、まだ隠れた名人はたくさんいるはず。

 エミー・ヴェルヘイという人、ここ数年ワタシが狙う激安盤に頻繁に登場してくれて、とても気になる存在。(ジャケットを見ると)赤いドレスが素敵な女性で、世代は不詳だけど新しい録音ばかり。ストラド「アール・スペンサー」という名器を使用しているそうです。オランダでの録音が多いので、オランダ人なのでしょうか。

 切れ味が鋭すぎたり、神経質になったりしない、しっとりとした暖かい音色が出色。線は細すぎず、豊満になりすぎず、ちょうどのところ。テクニック的な破綻はありませんが、技術を意識させない自然なフレージング。ヴィヴラートが適度で、爽やかなんです。

 こども時分からMozart 好きなワタシでしたが、ヴァイオリン協奏曲は苦手で、心から楽しめるようになったのはオジさんになってから。素人判断だけど、きっと嬉遊曲の世界なんですよ。ソロの妙技性、なんかじゃなくて、ソロもバックも一体となって、若いMozart の天衣無縫な音楽をのびのびと味わうことが肝要、と気付きました。

 第3・4・5番は聴く機会が多いでしょ?

 これを聴いて、やや人気のない第1・2番も名曲だなぁ、と痛感させられました。シンプルで、のんびりとした旋律はエミー・ヴェルヘイのやさしく歌うヴァイオリンで、黄金に変わっている。特別なことは何もしていないのに、懐かしくなるような感情がこみ上げます。とくに、各々第2楽章でゆったりと歌うことが最高。

 後半3曲の魅力は今更いうまでもなし。第3番の冒頭ソロが、ふつうグッと力んで入りますよね。これが控えめで、そっと走り出して、じょじょにエンジンを暖めていくような無理のなさ。声高には叫ばない。かといって、弱いわけでもないし、気持ちよく音楽の流れに乗れます。終楽章における突然の転調、ブレーキはいつ聴いても驚かされます。

 第4番は、ソロの中低音の深み、終楽章の上品な味わいも素敵。

 第5番は「トルコ風」と呼ばれるように、溌剌としたリズムが大切です。大きく跳躍する旋律も魅力的で、コロラトゥーラ・ソプラノが気持ちよく歌っているような錯覚にとらわれます。カデンツァの自由な世界はまさに、それ。

 オイストラフやグリュミオー(特に旧録音)はたしかに極め付き。しかし、この演奏を聴いていると(たしかに素晴らしい演奏に間違いはないが)演奏家の個性より、曲そのものの味わいを堪能できると思うのです。

 小曲3曲は宝石箱のよう。ハ長調ロンドの希望とあこがれに満ちた世界は、天才Mozart の作品中屈指のもの。走っているが、息も弾まないし、汗もでない。微笑みさえ浮かべている、そんな曲、演奏。

 バックを指揮するマルトゥレットは、やはり廉価盤に多く登場する人で経歴等一切不明。立派な指揮ぶりと思います。オーケストラはコンセルトヘボウの縮小版でしょうか、中音域の暖かいふくらみ、木管のコクのある響きはたしかに、それを連想させます。

 録音優秀。もう少し奥行きは欲しいところですが、少な目の残響でエミー・ヴェルヘイの個性は明確に伝わります。


その後・・・・・・BRILILIANT「Mozart MASERWORKS」という40枚組を買ったら、このCD2枚とダブッてしまいました。でも、ジャケットの写真はこちらの方が素敵。エミー・ヴェルヘイの情報はこちら。


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written by wabisuke hayashi