Vaughan Williams 交響曲第1番「海の交響曲」
(エイドリアン・ボウルト/ロンドン・フィル1954年)


DECCA オリジナルデザイン Vaughan Williams

交響曲第1番「海の交響曲」

エイドリアン・ボウルト/ロンドン・フィル/合唱団
イゾベル・ベイリー(s)(Isobel Baillie,1895-1983英国)/ジョン・キャメロン (br)(John Cameron,1918ー2002濠太剌利)

英DECCA 1954年録音

 旧録音は幾度か聴いていて、Sir Adrian Boult The Decca Legacyと銘打ってDECCAより再発されたCDは音質解像度の改善印象かなり顕著、ズシリと低音も効いて驚きました。いちおう2管編成?だけどピッコロも入るし、クラリネット3本+バス・クラリネット、ファゴット2本+コントラファゴット、多種多様な打楽器+ハープ、オルガン。そして合唱+ソロ二人は壮大な編成。テキストはWalter Whitmanの「草の葉」 (Leaves of Grass) より。壮麗なる合唱を伴うスケール大きな英国版「千人の交響曲」風、こちらのほうがずっとユーモラスかつ明るく暖かく、平明にに親しみやすい旋律が続きました。初演は1910年。同時代のStravinsky辺りを思い出すと、オーソドックスに保守的な音楽でしょう。合唱の国、英国の面目躍如な名曲。Adrian Boult(1889ー1983英国)当時65歳気力体力充分、自信に充ちた輝かしい統率を堪能いたしました。

 第1楽章「全ての海、全ての船の歌」(A song for all seas, all ships)Andante Mestoso は金管炸裂、輝かしい希望に溢れて前向きに壮麗な始まり。冒頭から感極まった高揚が続いて合唱はパワフルでした。ジョン・キャメロンによる、いかにも”船乗りの男”風朗々たるソロに力強く合唱が呼応します。言語理解不如意だけど、英語だからMahlerやらBachよりずっと親しげ。やがてソプラノが気高く歌うけれど残念、意味理解不能。後半はやや落ち着いた風情に至って、これは個人的にMahlerの交響曲第8番 変ホ長調第1楽章「来れ、創造主なる聖霊よ」よりずっと親密、わかりやすいと感じます。(8:37-11:00)

 第2楽章「夜、渚に一人いて」(On the beach at night, alone)Largo Sostenuto ここは落ち着いた風情の緩徐楽章。後年の「南極交響曲」がちょっぴり木霊して、バリトンのモノローグに女声合唱が寂しげに絡みます。やがて前向きな前進が始まって表情は明るく決意に充ちたものへ。男声ソロと合唱の呼応は常に効果的、それは管弦楽も同様の迫力とデリカシーを以て静かにこの楽章を閉じました。(11:4)

 第3楽章「波」(The waves)Scherzo, Allegro Brillante ここはScherzoだけど諧謔風に非ず、冒頭合唱から切迫と緊張感漲(みなぎ)って、ロンドン・フィルにパワフル闊達な推進力を感じます(とくに金管のキレ味)。ここは合唱のみ、声楽ソロはお休み。(7:18)第4楽章「探求する人々」(The explorers)Grave et molto Adagio ゆったり荘厳に神妙な管弦楽と合唱がそっと始まって、やがて夜が明けるようにじわじわ、いや増す敬虔な壮麗さ、これはBachまたはMahler 交響曲第8番 変ホ長調第2部冒頭を連想させるところ。声楽ソロは中盤以降静かに、いかにも大団円風に登場します(とくにジョン・キャメロンはあまりに大仰、昔風スタイルかも)。あまりに予想通り型通りにカッコ良く決まり過ぎて、少々ハナに付くくらい(少々)スケール大きくも少々クサい詠嘆ダメ押し音楽、なんて不遜な感想すんまへん。静かに潮が引くように終了して、ボウルトの確信にいささかの揺るぎはありません。(12:22-4:39-3:27-8:35)

(2022年12月17日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi