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 「HISTORYフルトヴェングラーのヒンデミット」

お手紙ありがとう


匿名希望さんからのCD感想文が届きました。ワタシのサイト関連です。以下、そのまま掲載。(hayashi)

HISTORYフルトヴェングラーのヒンデミット、 「ウェーバーの主題による…」ですが、 私も、この演奏は以前から注目しておりました。 ヒンデミットに開眼したのも、この音源からです。

もちろんHISTORY盤も持っておりますが、 私が以前から愛聴しておりますのは、 国内盤のPOCG2350(91年発売)です。 とにかく、「トテツモナイ」演奏です。 強奏部も素晴らしいのですが、 特に好きなのは、むしろ弱奏部です。 強奏部と弱奏部のコントラストから生まれる、 純粋で、今にも浄化しそうな芳香です。 音楽を耳から聴いているのに、 まるで十九世紀的な、その芳香が匂ってくるようです。

これこそ近代作曲家を指揮した場合のフルヴェン節とも言える、 フルトヴェングラー独特の天才的な表現と思えます。 この芳香は、フルトヴェングラーでなければ出せませんし、 また、手兵のベルリンフィルでなければ生まれない物だと思います。

寄せては返す波の動きのような、どこからともなく現れ、 どこへともなく去っていく、その音の作り方、 これこそフルヴェンの真髄と思います。 とにかく、この音源を聴いた後は、言葉が出ないのです。 しかし、残念ながら、この音源に気付く人は少ないです。

林さんが採り揚げて下さり、 私の感性が間違えでなかったことを確認した次第です。 心から感謝しております。

世評では、フルヴェンの代表音源は、 ベートーヴェンのバイロイトの第九などといわれますが、 私、あれは何回聴いても感動したことがありません。 私が代表音源を揚げるとすれば、間違いなく、 このヒンデミットは代表音源の一つになります。

という訳で、 フルトヴェングラーの真髄は近代作曲家にも、強く現れています。 ですが、基本的に名演が生まれる要因の一つに、 相性という物があります。馬が合う合わないの相性です。

この場合、作曲家と指揮者との感性が合うかどうかです。
余談ですが、 フルトヴェングラーと感性が合わないのが、 Brucknerです。 フルトヴェングラー大好き人間がこのようなことを、 言ってはいけないのですが、 フルトヴェングラーのBrucknerからは、 Brucknerが聴こえて来ない。 シューリヒトや、マタチッチ、朝比奈のそれです。

そこで、近代作曲家で、もう一人忘れてならないのが、 リヒャルト・シュトラウスです。

この作曲家とフルトヴェングラーの感性は、 ヒンデミット同様、やはりピタリと一致しているようです。 フルトヴェングラーのリヒャルト・シュトラウスも、 ヒンデミット以上に「トテツモナイ」演奏だと思います。

その魅力は、ヒンデミットの「純粋な芳香」ではなく、 十九世紀的なムンムンするような色香です。 クリムトの絵のような、 けして「グロ」ではないのです。純粋なんです。 例えば、エーリッヒ・クライバーの「ばらの騎士」からは、 このムンムンした色香が匂ってきません。

「アッ、匂ってくる…」と待っていると、 いつの間にか、その部分が終わってしまうのです。 この色香が聴きたくて購入したのですが…。 ですから、フルトヴェングラーが、 「ばらの騎士」を残さなかったのが、 かえすがえすも残念です。

そんな訳で、 フルトヴェングラーの指揮するリヒャルト・シュトラウスも 是非、注目していただきたかったのです。 私がリヒャルト・シュトラウスに開眼したのも、 フルトヴェングラー盤が最初でした。

多分、私にとって、 フルトヴェングラーを凌ぐ演奏には今後も出会えないと思います。 フルトヴェングラーのリヒャルト・シュトラウスは、 どれも素晴らしい演奏ですが、 一番分かりやすいのは、「ティル…」です。 が、「ドンファン」からも、「死と変容」からも、 「メタモルフォーゼン」からも、その色香は十分伝わって来ます。

そして、その中で、どうしても注目いただきたいのが、 戦時中(44年1月12日)のベルリンフィル、 旧フィルハーモニーライブの「家庭交響曲」です。 これはもう、ヒンデミットの比ではありません。 フルトヴェングラーが当時の気持ちを、 そのままタタキツケタような凄まじい演奏です。

この曲、作曲者自身の家庭の描写を音化しているようですし、 妻子に献呈されたようですが、 フルトヴェングラーの手にかかると、 「家庭交響曲」なんていう題名は何処かに吹っ飛んでしまっています。

その凄まじい強奏部から、弱奏部に移った時の何とも言えぬ色香。
この演奏に一度とりつかれてしまうと、 フルトヴェングラー意外の指揮者など、 まるで「子供の使い」のように感じられてしまうくらいです。 是非、一度御注目を。

そして、フルトヴェングラーのリヒャルト・シュトラウスは、 ベルリンフィルでなければ、その真髄に触れることが出来ません。 EMIのウィーンフィル盤など、全く別人のようです。
ハッキリ言って、全く面白くないのです。

幸いHISTORY 10枚組の中にもこの「家庭交響曲」が入っています(3137)。 が、イマイチ、HISTORY盤では、 旧フィルハーモニーホールの音の余韻が伝わって来ないのです。 まあ、値段が値段ですから、仕方がないと思っています。 出来ますれば、もう少し音の良い盤で聴かれる事をお薦めします。 私が聴いていますのは、89年発売のF20G29095です。

演奏の真価は音質によっても多いに左右されます。 もちろん、この「家庭交響曲」もヒンデミット以上に、 フルトヴェングラーの代表音源の一つです。

ということで、簡単ですが独断と偏見に満ちた、 フルトヴェングラーのヒンデミットとR.シュトラウス演奏に関する一考察でし た。

(2002年3月1日)


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written by wabisuke hayashi