Telemann トリオ・ソナタ集(フェデリコ・グリエルモ(v)/
コンタディン(bass viol)/ロッレジャン(cem))


Brilliant BRL94831 Georg Philipp Telemann (1681-1767)

トリオ・ソナタ ト短調 TWV42:g1/トリオ ト長調TWV42:G10
トリオ・ソナタ ホ長調TWV42:E7/トリオ・ソナタ ト短調TWV42:g10
音楽の練習帳 トリオ ニ長調TWV42:D9/トリオ ロ短調TWV42:h6
Georg Michael Telemann (1748-1831)
トリオ・ソナタ ヘ長調TWV42:F10*(「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」 BWV 599)
トリオ ト短調 TWV 42:g11

フェデリコ・グリエルモ(v)/クリスティアーノ・コンタディン(bass viol)/ロベール・ロッレジャン(cem)

Brilliant BRL94831 2013年

 Federico Guglielmo (1968-伊太利亜)は新イタリア合奏団のコンマス、来日もしております。作品はちょっぴり色気の足りないBach風、しっとりとした古楽器の響き自在な技巧の冴え、瑞々しい音質に聴き惚れます・・・とは一年ほど前のカンタンなコメント。これらの作品を含むCDセットはCristiano Contadinが担当するヴィオラ・ダ・ガンバ(ヴィオール)を含む協奏曲室内楽5枚分、意欲的な録音でしょう。Georg Philipp Telemann(1681ー1767独逸)は大Bachと同時代に活躍して、当時はたいへん著名な存在であった由。こちら永遠のド・シロウト音楽ファンに作品詳細分析解析もちろん不能、古楽器による古雅な響き、美しい旋律を堪能するのみ。瑞々しい音質も極上。

 ”ちょっぴり色気の足りないBach風”とは失礼な言い種だけど、Bachの旋律リズム変幻自在な魅惑は別格でっせ、種々編曲されてポピュラー音楽になっているくらい。この作品も負けぬ価値を持ったヴァイオリン+通奏低音によるシンプルな三声、静かに続きました。通奏低音と書いたけれど、ガンバは自在な活躍にヴァイオリンと対等、それ以上に雄弁です。トリオ・ソナタ ト短調 TWV42:g1はAdagio-Vivace-Adagio-Allegroからなる8:19。なんとも哀愁漂うしっとりとした世界に一気に引き込まれました。トリオ ト長調TWV42:G10は安寧穏健に充たされる8:14(Cantabile-Vivace-Affentuoso-Allegro)。人懐こい躍動が続いて「Affentuoso(愛情を込めて、情趣豊かに)」との対比も鮮やかにヴィヴィッドでした。

 トリオ・ソナタ ホ長調TWV42:E7はたっぷり歌うガンバのソロから開始。やがてしっとりとヴァイオリンが絡んでみずみずしい世界が広がります。ここがSiciliana、短調じゃないけれどなんとなく寂しげ。そして元気平明にPrest-Andante-Vivaceと続く10:23。たっぷり田園風景が堪能できますよ。Andanteの寂寥も佳きアクセント。ロベール・ロッレジャンによる控えめなチェンバロもよく歌っておりました。トリオ・ソナタ ト短調TWV42:g10始まりのCantabile、もの哀しい風情はBachに比べると、さっぱりと素朴なんやな。ーAllegro-Largo-Vivace=10:21。緩急緩急の「急」部分は21世紀古楽器のキレあるリズム感とスウィングを堪能できます。魅惑の旋律は延々と続きます。

 音楽の練習帳(Essercizii musici)と名付けられたトリオ ニ長調TWV42:D9、その所以を知りません。Dolceとは「甘く柔らかに」「可愛らしく」の意、符点のリズムが柔らかく可憐に踊っております。あとは晴れやかに駆け抜ける-Prest-Patrale-Vivace=7:55。Vivaceに於けるガンバの快速パッセージ、緊張感あるヴァイオリンとの対話はかなりの技巧なのでしょう。トリオ ロ短調TWV42:h6も寂しげに物憂い旋律「Largo」から始まって、緊張感を維持したままーVivace-Andante-Allegroと続きます。ここのVivaceのヴァイオリンとガンバのアツいやり取り、細かいパッセージは魅力たっぷり。Andanteではチェンバロが雄弁に活躍します。9:44。

 問題はトリオ・ソナタ ヘ長調TWV42:F10 Georg Michael Telemann (1748-1831)は孫?親戚筋でしょうか。Bachの「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」BWV599(オルガン小曲集)が顔を出すのも理解不能。楽譜出版の時に混じったものか。旋律の趣は他の作品とやや違って、深く切ない浪漫を湛える名曲。Grave-Allegro-Andate-Vivace 10:18。ラストはかなり劇的にアツいもの。トリオ ト短調 TWV 42:g11は例の如くしっとり、ため息のようなCntabileから開始。悲しげに嘆く-Vivace-Dolce-Allegroへと続く10:48。

 これは発見やったなぁ、ややワン・パターンっぽいけれど大Bachに負けぬ美しい世界が続きました。

(2020年3月8日)

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written by wabisuke hayashi