Tchaikovsky 交響曲第6番ロ短調「悲愴」
(イーゴリ・マルケヴィッチ/ロンドン交響楽団)


PHILIPS Tchaikovsky

交響曲第6番ロ短調「悲愴」

イーゴリ・マルケヴィッチ/ロンドン交響楽団

PHILIPS 1962年録音

 ヒマな引退身分は365日祝日正月盆乃至日曜状態に時間はたっぷり、好きなだけ音楽を聴いて、トレーニングルームに通い、テレビドラマやYoutubeを眺め、料理洗濯を続ける日々。「音楽日誌」に毎朝駄文を継続しているのは生活のリズム、週末【♪ KechiKechi Classics ♪】定例更新も自分なりのケジメのつもりです。

 当初別な作品を更新執筆を考えていて、偶然昨夜拝聴した昔馴染の「悲愴」にすっかり打ちのめされました。Igor Markevitch(1914-1983烏克蘭→瑞西)がTchaikovskyの交響曲全曲をステレオ初期に録音していたのは知っていたけれど、もしかしてちゃんと聴いていなかった?とは思わぬ不覚。これは凄い演奏です。偶然ここ数日この作品ばかり、ロリン・マゼール/ウィーン・フィル(1964年)やエフゲニ・スヴェトラノフ/ロシア国立交響楽団(1990年オーチャード・ホール・ライヴ)リッカルド・ムーティ/フィルハーモニア管弦楽団(1977年)を続けて、若い頃気恥しかった「悲愴」の甘く情感あふれる旋律へのアレルギーは完全に消え、各々の演奏個性を堪能したものです。あまりに著名な作品故、表現の方向には種々嗜好があるのでしょう。ムラヴィンスキーの透徹した集中力は別格として、あまり本場粘着質演奏は個人的に苦手でした。

 そこにマルケヴィッチとの出会いは衝撃。まず音質が鮮烈そのもの、細部聴こえぬパートは存在しない!中低音が充実したPHILIPS録音は、当時ピエール・モントゥーに統率されたロンドン交響楽団の絶好調ぶりを捉えておりました。(但し、自分がネットより2018年に入手した音源ファイルの状態はいまひとつみたい)所謂露西亜風泥臭い抒情にに非ず、テンポの揺れ動きタメは常に適性を感じさせて表現は洗練、メリハリが効いて明晰な切れ味を感じさせるもの。ムリムリな煽りや不自然な変化は存在しません。

 第1楽章「Adagio - Allegro non troppo」絶望的に暗い序奏からテンポは速め、響きはスリムに引き締まってクール。第2主題の懐かしい詠嘆の揺れも効果的に決まって、展開部の激烈な切れ味、金管大爆発との対比、タメもティンパニもみごとに決まります。ロンドン交響楽団のアンサンブルは優秀です。こどもの頃から馴染んでいる作品だけど、入念緻密に計算された作品、つくづくその作品完成度、名曲の名曲たるゆえんを身体で再確認いたしました。(18:43)

 第2楽章「Allegro con grazia」は4分の5拍子だけどワルツ?いかにもTchaikovskyらしい、甘美に優雅な旋律は低弦と木管に始まります。かっちりとしたアンサンブルに甘さ控えめ、端正な表現。中間部の不安な対比はデリケート、最終盤の自然なテンポの落とし方も熟達のワザでしょう。(7:36)

 第3楽章「Allegro molto vivace」が一番の聴きどころ。いや増すノリノリの熱気に充ちてロンドン交響楽団は絶好調、パワフルな金管の爆発、いままで気付かなかった対旋律や、各声部の掛け合いが浮かび上がって効果的。7:30辺りのタメもしっかり決まって一糸乱れぬ!というのはこのことを指すのでしょう。熱狂だけどクールな完成度。(9:25)

 第4楽章「Adagio lamentoso」はウェットな情感に非ず、冒頭の悲愴な主題はすぱっとしたフレージングに仕上げて、鮮やかな陰影に充ちておりました。やがて6分辺りからテンポを上げて高まる熱気、そして終末のドラは無常の響き。このまま諦観の静謐に収束して全曲を静かに閉じます。この集中力、テンションの維持に脱帽。(9:52)

(2022年11月26日)

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written by wabisuke hayashi