武満徹 弦楽のためのレクイエム/ノヴェンバー・ステップス/
遠い呼び声の彼方へ!/ヴィジョンズ(若杉弘/東京都交響楽団)


COCO73083 武満徹

弦楽のためのレクイエム(1957年)
ノヴェンバー・ステップス( 琵琶、尺八、オーケストラのための/1967年)
鶴田 錦史(琵琶)/横山 勝也(尺八)
遠い呼び声の彼方へ!(ヴァイオリンとオーケストラのための/1980年)
堀米ゆず子(v)
ヴィジョンズ(オーケストラのための I-神秘/II-閉じた眼/1989年)

若杉弘/東京都交響楽団

DENON COCO73083 1991年

 武満 徹(1930ー1996日本)は日本を代表する20世紀の作曲家、彼は音楽学校を出ていないのですね。20世紀のゲンダイオンガクを云々できるような知識も見識眼もない、こちらド・シロウト。ただ”聴いた”とするには、あまりに痺れるような感動が続いたので、いちおう記録しておきましょう。以下蛇足。難解晦渋な不協和音のみならず、けっこう流行り歌や(その昔の)フォークソング辺りも手掛けて、映画音楽も膨大。意外と器用な人だったみたい。喰うためだったのかも。

 弦楽のためのレクイエムは劇団四季「野性の女」のための音楽を発展させ、東京交響楽団の委嘱を受けて完成させたとのこと。師である早坂文雄の死、当時は不治の病であった結核に罹患していた自分へのレクイエムとしたらしい。(以上Wikiの丸写し)背筋がぞくぞくするようにウェット、妖しくも静謐な瞑想に溢れ、寄せては返す深呼吸のような弦楽合奏、この人の作品には常にクールな幻想と官能を感じさせます。(9:31)

 ノヴェンバー・ステップスは武満徹の一番人気でしょう。小澤征爾(トロント交響楽団1967年)を聴いたのは若い頃、他、岩城宏之やベルナルト・ハイティンクのライヴ録音で馴染んでおりました。イメージとしては壇ノ浦に沈んだ平家の霊に取りつかれる耳なし芳一、余人を以て代えがたい鶴田 錦史(琵琶)横山 勝也(尺八)和楽器と管弦楽の協奏曲なのですね。委嘱はニューヨーク・フィル、弦木管金管にハープ、奏者4名による種々打楽器が神秘的に響き渡ります。琵琶と尺八はカデンツァなんだそう、この楽器は予備知識なしで日本人の琴線に触れる超絶技巧。(ジョン・海山・ネプチューンによる尺八演奏はあまりジャズ的で不評であった由/Wikiより)。珍しく聴き知った作品を聴いたのも久々、1991年は既にディジタル時代、ソロは鉄板の初演メンバーを揃えて、自分の記憶の範疇だけどオーケストラが、ややバランスおとなしい印象がありました。いずれ、神秘の名曲。(19:59)

 遠い呼び声の彼方へ!はヴァイオリン協奏曲。驚異的に美しい静謐な不協和音。Wikiに指摘されるように、Bergのヴァイオリン協奏曲を連想させ、堀米ゆず子(1957-日本)のソロは大きな管弦楽の海を儚く漂うよう。弦+木管+種々打楽器のみの編成。(14:55) ヴィジョンズ(オーケストラのための I-神秘/II-閉じた眼)はこれが世界初録音なんだそう。神秘の泉から生命がゆったりと生み出されるような静謐かつ透明、儚くも輝かしい「神秘」、行方知れぬ不安な魂がさまよい続ける「閉じた眼」。うんと上品に薄味なMessiaen風でしょうか。(5:44-6:43)

(2022年12月10日)

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written by wabisuke hayashi