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藤原さんからのメール〜武満徹の話し

藤原さん、お手紙ありがとう


藤原さんは校正のお仕事をされているそうで、ときどき珍しい話しをメールで送っていただきます。今回は、武満徹の話しでした。

藤原です。今日は「校正で聴く音楽」の話です。
仕事で音楽に関わりました。

平凡社からでる、武満徹の伝記『音の河のゆくえ』の付録部分――年譜と作品一覧 ――の校正を手伝ったのです。

悪一代(カツシン!)とか、元禄一代女(たしか岩下志麻主演。田中絹代の西鶴一代 女のTV版。女主人公がいっとき扇子屋のおかみさんとして平和な日を送るのです が、扇子屋の主人役に青島幸男が出てました)とか、ドラマの黄金時代に武満徹の音 楽が流れていたという のはすごい。僕は小学生のころ、見た覚えがあるのです。

しかも、年譜を見ただけでも武満氏と関わってくるのは、音楽家以外にも、石原慎太郎、江藤淳、大江健三郎、城山三郎……昭和30年代の青春というか、素晴らしいキャスト。
「映画狂った果実」(中平康の「太陽族映画」です)のなかのハワイアンが武満の作品だなんて、いいじゃないですか。

NHKでも、日テレでも、フジでもいいから、武満徹の伝記、長時間ドラマにしてほ しいですね。武満役は、三上博史(フジ系で指揮者やピアニストをやった)か、豊川 悦司(「愛していると言ってくれ」での画家)ですね。

ただし、廉価盤では、この辺は手薄です。デンオンあたり、出してほしいところ。 もっとも、この校正を編集者に渡して帰りのタクシーでは、何と運転手が音楽好きな のか、ヒンデミットがFMで流れてきて、ちょっとしんどかったのも事実。


以下はワタシの返信です。

 「校正で聴く音楽」って、もしかして「本で聴く音楽」のパロディでしょうか。ワ タシのでっち上げ、無名HPも見ていただいたんですね。恐縮。

 武満は非常に好きなのですが、いかんせん廉価盤が少ないので、買うに買えない、という苦しさ。
ましてや、ハワイアンなんか出ていません。むかしフォーク・ソングというものがあって、 「死んだ男の残したものは」(詩;谷川俊太郎)が武満の作曲だったことに驚いたも のです。

 RCAから出ていた(いまでも?)小澤/トロントの「ノベンバー・ステップス」 (2000円もした!)は、その透明で東洋的な響きに魅了されます。たしか、最終版の ピツィカートは(記憶が薄れていますが)原爆もののアニメに使われていました。

 やはり日本ではRCAから発売された岩城/メルボルンの管弦楽曲集は、オーストラリ アABCレーベルの輸入盤ではわずか$1.99。(まだ真剣に聴いていない)BBCでアンド ルー・デイヴィス/BBC響による「From me flows what you call Time」(なんと訳 すのでしょうか?英国初演)これはたしか$0.99。これはもう武満ワールドで、静謐 さと幻想が溢れる名曲。もっているのはこれくらいです。

 武満が映画好きだったのは知っていたけど、凄いですね。「集大成」みたいのが出 ないでしょうか。不況だから無理か。伊福部辺りがけっこう出ているのに、少々不思 議ですね。ドラマ化はねぇ・・・・・・なんか失敗しそう。むしろNHKでドキュメン タリーにして欲しいなぁ。三上も豊川もイマイチ好みではありません。

 ヒンデミットって辛気くさいですよね。有名で、何度も聴いているし、世間の評価 も高いのに、感動したことなし。東京ではクラシック好きの運転手がいるんですね。 映画「のど自慢」で、竹中直人がカラオーケストラ好きの運転手をやっているじゃないです か。あんなかんじですか?


(藤原さんから)
■ヒンデミットの運転手というのは女性です。
自己紹介が運転席の背中に下げてあり、 1.旅行。2.音楽。3.相撲。だそうです。いろいろ、話してみればよかったので すが、疲労の極みで。

■ドラマはフジや日テレだとああなるな、というところ。フジには新日フィル、日テ レは読売日響の関係ですが、それにトヨエツは、なかにし礼もやってるし(似てな いって)。
もっとも、「ヨーロッパの解放」ふうのそっくりさんを楽しむのならあのキャストは だめ。

そもそもが、僕は、伝記ドラマファンなのです。
昔小学館から出ていた、FMレコパル(この誌名でいいのかな?)に、レコパルライブ コミックという読み切りの漫画があって、 松本零士描くところのフルトヴェングラーや、ワルター、望月三起也描くところのト スカニーニ(もろ「ワイルド7」ふう)とか ありました。そのセンですね。

でも、ドラマ化は、著作権料やプライバシーの問題でまず無理。芥川(作曲家のほ う)さんは三回結婚していますから、最初の奥さん芥川沙織や、二回目の奥さん草笛 光子が出てくるシーンを脚本家が書いても、カットされ続けてしまうでしょうね。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi