Tchaikovsky 交響曲第6番 変ロ短調「悲愴」
(エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル1960年)


これがオリジナルデザイン Tchaikovsky

交響曲第6番 変ロ短調「悲愴」

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル

駅売海賊盤CC-1019/20 1960年DG録音

 憂愁鬱蒼と甘美な旋律は日本人好み、出会いは小学生だったか中学生だったか・・・ユージン・オーマンディだった記憶は鮮明です。ムラヴィンスキーは(Evgeny Mravinsky/1903-1988/少なくとも当時)世評高い決定盤、長じて社会人になってからLP2枚組を入手したけど、詰め込み過ぎ、音質にちょいと難があったような・・・CD時代に至って、おそらく1990年頃駅売海賊盤を入手・・・これがもう四半世紀前のこと。おそらく十数年ぶり、久々取り出したらちゃんと再生できましたよ。音質も悪くないじゃないの・・・シロウト耳には。

 これがかつての記憶とかなり違う。ちゃんとしたオリジナル音源とかSACDとか、きっとびっくりするほど凄いんだろうけど(閑話休題それはさておき)音質かなり良好、充分な鮮度であったこと。オーケストラのサウンドは洗練され響きは濁らない。分厚くも泥臭い露西亜臭皆無、引き締まって切れ味たっぷり。もちろん(期待の金管)迫力、テンションもニュアンスも充分、なにより速めのテンポは颯爽として旋律表現に飾りが少ない。所謂”トスカニーニ系”ですね。

 最近はあちこち全世界的にオーケストラは上手くなったけど、この時点レニングラード・フィルの縦線の揃い方、各パートの表現の雄弁さは筆舌に尽くしがたいほど。世評をバカにしたらあきまへんで。21世紀に完全に現役。第1楽章 「Adagio - Allegro non troppo 」。出足暗鬱なファゴット、そしてヴィオラを主体とした第1主題はいかにも鈍く、くぐもって鬱蒼と湿っぽい雰囲気満載。記憶よりずっとテンポは速め、さっそうとスタイリッシュ、そしてデリケートであります。いくらでも詠嘆にタメを作りたい旋律も、むしろすっきりとしてセンスはモダーン、充分厚みのある響きはクリアそのもの。切れ味鋭い金管を伴った疾走ぶりも壮絶にカッコよろしい。

 第2楽章 「Allegro con grazia」。4分の5拍子によるワルツ。甘く優雅、そして不安定な変拍子はやはりキモチ速め。微妙なアクセントがチェロの旋律に導かれて、優雅に躍動しております。音色が太い、味わいが深いオーケストラの音色であります。第3楽章「Allegro molto vivace」。快活なスケルツォこそ、オーケストラの底力が必要でしょう。ここもテンポは速め(というかますます熱気を増して)肌理細かい旋律の縦線はぴたりと合って熱狂的。金管の壮絶な輝きは筆舌に尽くしがたいテンション。これはやはり露西亜なんやろなぁ。ここは息も吐かせぬほど凄い。

 第4楽章「Andante lamentoso」。オーマンディがテンション高く朗々としている(そう記憶している)のに対して、かなり抑制を以ってデリケートに開始。ここも情念に粘ったテンポに非ず、重心は低くても颯爽と”泣き”も流麗、カッコ良いっすよ。(差別的表現かも知れぬけれど)男らしい表現、かなりオシャレでダンディでっせ。ダメ押しのように金管炸裂!やがて静かに全曲を閉じる・・・ぼちぼち60年になる録音だけど、これも凌駕する演奏はちょっと思いつきません。

(2016年10月9日)

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written by wabisuke hayashi