Tchaikovsky 幻想序曲「ロメオとジュリエット」/交響曲第4番ヘ短調/
イタリア奇想曲(カルロス・パイタ/モスクワ新ロシア管弦楽団)


Lodia LO-CD 791 Tchaikovsky

幻想序曲「ロメオとジュリエット」
交響曲第4番ヘ短調
イタリア奇想曲

カルロス・パイタ/モスクワ新ロシア管弦楽団

Lodia LO-CD 791  1994年録音 500円

・・・これぞ”爆演”であって、オーケストラが(とくに金管)ばりばり鳴って、爽快なほどお下品であります。ワタシの安物イヤホンでは最高潮で音が割れます。これは精神状態がハイであればとことん愉しめるものであって、頭痛気味のワタシも本日は大丈夫。ま、年に一回聴けばよいか。怪しげなオーケストラはけっこうちゃんとしたアンサンブルでした。

録音明快、素性不明なるオーケストラ(ロシアにはありがちの現象だ)ではあるが、素晴らしく洗練され、よく鳴るオーケストラで気持ち良いっすよ。所謂”暑苦しい爆演系”かな、と想像したが、異形なる泥臭い表現ではなく、ひたすら爽快に爆発する!といった表現がとてもわかりやすい。やや苦手なTchaikovskyをここまでウキウキ楽しませて下さって、感謝感謝の500円でした。

ワタシは”爆演系”を称揚しないが、あれは精神状態体調による嗜好なのでしょうか・・・うんもう、これにはほんまに痺れました。まぁ、エエがな、まず大きな音出さんとニュアンスがどうの、いうても聞こえまへんがな、一発スカっといきましょや。そしたら、抜いたときに効果出まんねん・・・あんまりムツかしいこと言わんと、がんがん演ってます。仕上げが雑なワケでも、無名オーケストラ(録音用臨時団体か?)の技量に不足するわけでもありません。ラテン系のモウレツなノリを心ゆくまで楽しみましょ。(以上過去の「音楽日誌」より検索)

 ワタシのしがないコメントは上記に尽きていて、あまり贔屓筋の作品でもないので、しばらく棚中に放置。時あたかも猛暑の夏、夏休みをいただいて精神的にかなりリラックスしての再聴は、じつに快いものでした。但し、”素晴らしく洗練され”、”異形なる泥臭い表現ではなく、ひたすら爽快に”というのは嘘っぱちでして、粒の粗い豪放な響きは洗練から遠く、かなり泥臭いと評すべきでしょう。”爆発する!といった表現がとてもわかりやすい”というのはまさにその通り。”ばりばり鳴って、爽快なほどお下品”なんですよ、うひひ。ま、異形ではないか。

 見よ、この脂ぎった顔!素晴らしい精力!選曲も録音も良好(なんというのか、ごりごり鳴って奥行きが、とか、定位が、というものとは無縁だけれど)だと思います。「ロメ・ジュリ」から気合いが入っていて、いやはやこんな名曲であったか!と感服するばかりのド迫力。この辺りで、心身共に弱まっている音楽愛好家は耐えられぬと想像されます。ひたすらクサく、アツく絶叫して素晴らしい勢い有。

 そのままの”熱”維持したまま交響曲へ突入。ワタシもここ最近、すっかり「Tchaikovsky アレルギー」克服して、甘美で恥ずかしい旋律を堪能できるようになったのは厚顔なる加齢を重ねたからか。モスクワ新ロシア管弦楽団という団体はかなり怪しい存在だけれど、上手いもんです。金管の鳴りっぷりは壮絶だし(あちらの人々の肺活量がちゃうんでしょうな)、第2楽章「アンダンティーノ」の”泣き”の弦も決まっている。第3楽章「スケルツォ」のピツィカートのアンサンブルもノリノリでお見事。終楽章の打楽器と金管の大爆発、強靱な木管と弦の掛け合いも文句なし。

 楚々とした(つもりの)弱音部分も妙に裏がありそうで、案の定、次の非常識なくらいの金管せり出しの対比効果を狙っているんでしょう。ここ数年聴いたうちでは最高の”爆演”也。間違いない。喧しいくらい。屁理屈とか精神性とか、もうエエでしょ、的ラストのアッチェランドお見事。たまには。いや増すばかりの金管増強に、頭痛持ちの人は気を付けなはれ。

 「イタリア奇想曲」は、ドラティの素晴らしき録音(1955年!)が刷り込みです。こうしてみると、録音はぐっと新しいし、音質も良好だけれど、やはり”泥臭い”んですよね、パイタは。(誉め言葉のつもり)ま、期待通りの金管と打楽器は文句なしのテンションと体温の高さを実現しております。バランスなんかかなり滅茶苦茶苦で、時に弦の甘美な旋律が前面に出ちゃうし、トランペット・ソロも「ここぞ!」と言う場面で(ちゃんと)出しゃばります。ま、少々(いえ、かなり)アクがあって強烈な迫力であり、イタリア(?)の明るい陽光を間違いなく感じさせる”ラテン系”演奏也。賑々しいですよ、たっぷり。

 これは500円だったら、ほんまに安い!価値ある一枚。全部続けて聴くと疲れます。

(2008年8月22日)

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written by wabisuke hayashi