Stravinsky バレエ音楽「火の鳥」(1910年版)/「ペトルーシュカ」(1947年版)
(ロバート・クラフト/フィルハーモニア管弦楽団1996/97年)
Stravinsky
バレエ音楽「火の鳥」(1910年版)
バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)
ロバート・クラフト/フィルハーモニア管弦楽団(1996/97年録音)
NAXOS 8.557500 970円
Stravinskyは中学生で出会って以来(バーンスタイン/ニューヨーク・フィルによる組曲「火の鳥」1919年版/そして「春の祭典」はピエール・ブーレーズ1969年録音にて)お気に入りであります。初期の人気作品のみならず、知名度低い作品もCDで聴ける機会は多くて、作曲者自身の良好な音質、安価な全集も入手可能となりました。ロバート・クラフト(Robert Craft,1923-)は最晩年の弟子筋だそうで、掛け値なしの直系演奏〜でも自演の録音が残っているし、指揮のプロが確立した時代だからなぁ、あまりそんな蘊蓄抜きにして愉しめば良いのでしょう。
KOCH音源の再発売、「火の鳥」は世界初録音となっているから、細部詳細楽譜とか楽器使用の指示とかが異なるんでしょう。聴き手がまったくのド・シロウトなのでなんのことやら・・・詳細22トラックに分かれて親切な編集であること、なにより驚異的な音質の鮮度!豊かな残響、しっかりとした音の芯、奥行き、各パートの自然な定位と存在感(我がディジタル・アンプとの相性も抜群)・・・フィルハーモニア管弦楽団は滅茶苦茶上手い!20年前アンセルメ最後の録音でも優秀なアンサンブルでした。
幻想的なメルヘンを感じさせる「火の鳥」〜かつては1919年組曲版が主流だったのは、LP時代の収録問題だったのでしょうか。現在ならたっぷり45分、全曲を聴かないと物足りない。冒頭「イントロダクション」弱音コントラバスのリズム感、これが意外とちゃんとできていない録音が多い。ここで勝負は決まるんです。正確なリズム、ほとんどイン・テンポ、美しい旋律、サウンドを雰囲気で聴かせない。クールというか怜悧、ほとんど冷酷なばかりに正確であり、素っ気なくも淡々と進む音楽。できあがった音楽はひんやりと、青白く燃える炎のように妖しく美しい。
もともと腕利きであり、指揮者の意向に柔軟に従うフィルハーモニア管弦楽団の力量には驚くばかり。フルトヴェングラーの歴史的録音に”入魂”を感じることは事実なんだけど、20世紀以降の音楽には”クールというか怜悧、ほとんど冷酷なばかりに正確”なことが基本なのでしょう。余計な色付け(色気)はかえって作品の個性を歪めるかも。どんなに大規模管弦楽が咆哮する場面でも響きが濁らない。音楽は嗜好品だから、好き好きは各自勝手ばらばらでよろしいんだけれど、幾分食傷気味なほど聴き込んでいる録音中、出色の鮮度と集中力を誇って(おそらく)ヴェリ・ベスト。
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「ペトルーシュカ」は何故か3管編成の1947年版の録音となります。以前に収録問題にはコメントしておりました。けっこう全曲、ちゃんと録音しているものはあまりないもの。(自演の録音でさえ)ワルター・クラフトには、「1911年版4管編成」録音は存在しないんでしょうか。彼の明快な表現は、響きの薄さを露出させていると感じます。 期待からちょっと外れたというか、技術的には上々だけれど、”味が足りない”印象を受けました。これは嗜好ですからね。評判悪いモントゥー/パリ音楽院管弦楽団(1911年版/1956年録音)をワタシはとても気に入っていて、アンサンブルのズレ、リズムのよろめきさえ、”危うい現代音楽”(同時期録音の「春の祭典」も)としての味わいに感じてしまったものです
先ほどの「春の祭典」とは180度異なる(エエ加減!)コメントは3年ほど前のものだけれど、今回の拝聴では”一理有”と感じました。お気に入りは、シャルル・デュトワによる1976年旧録音であって、細部描き込みがていねい、しかも自然かつ適度なリズム感(特異な強調なし)は快い”熱”を発してジンワリ気持ちがよろしい。この人、どんなに激しい部分でも響きが濁りませんよね。土俗的作品は似合わないかも。弱さはないと思うんです。やさしく、浮き立つような華やかさ(これぞメルヘンか)もあって、ヴァーシャリのピアノのリリカルなキレも特筆もの
・・・なるほど。クラフトのリズム感は少々堅苦しくて、先ほどの「火の鳥」と同じ方向性ながら、真逆の印象を受けるとは〜作品個性と表現の相性問題なのかも。(2010年5月14日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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