もっとも美しいウィーンの音楽
(ロベルト・シュトルツ/ウィーン交響楽団/ベルリン交響楽団)


DENON COCO-6774 1966〜1971年録音。@250
J.Strauss(父子)

円舞曲「ウィーンの森の物語」
円舞曲「酒・女・歌」*
トリッチ・トラッチ・ポルカ
皇帝円舞曲
円舞曲「美しく青きドナウ」
円舞曲「春の声」*
ラデツキー交響曲
円舞曲「南国のバラ」
ピツィカート・ポルカ
円舞曲「ウィーン気質」

ロベルト・シュトルツ/ウィーン交響楽団 (* ベルリン交響楽団)

DENON COCO-6774 1966〜1971年録音。@250

 ワタシはウィンナ・ワルツのファンであって、ここ最近、急激に所謂”本場もん”に嗜好接近しております。CD在庫一般は急激に在庫処分しつつあるが、この類のものはいったん減らして、最近急激に枚数回復増勢傾向に〜これはシュトルツが晩年EURODISCに遺した録音の抜粋です。

 このCDは、おそらくもっと頻繁に入手しやすいウィンナ・ワルツ集でしょう。BOOK・OFF最安値でいつも見掛けるし、この執筆時点、Yahoo!オークションで(同じ内容のものが)8枚出品されておりました。(入札は一枚もない)当時よう売れた、ということか。このCDは1990年1,300円にて発売されたもの。ワタシはその後、(2006年10月@250にて購入済)と以下に書いてあるように、良品を入手しました・・・が、再び処分へ。というのも、RCA12枚組ボックスを別途購入し、それは同じ音源でしたから。

 名曲を一枚にまとめるとしたら、かなり理想的な選曲であって、贅沢言えば「芸術家の生活」が欲しかったところ。録音はそれなりの水準だけれど、ベルリン響との2曲は(音質もアンサンブルの質も)少々落ちます。ウィーン響は絶好調、本場風ゆったり余裕のリズムで雰囲気たっぷり。昔馴染みに出会った、といった風情であります。

 「ウィーンの森の物語」+「美しく青きドナウ」が二大看板であって、前者はツィターの優雅なソロ必須(たまにヴァイオリン・ソロで代用しているのを見掛けるが、言語道断!)、後者には合唱が欲しいところだけれど、その版での録音は滅多に見掛けません。優雅であり、少々クサいテンポの揺れ、タメも文句なく決まって、じつに安易に豪華ゴージャスであります。ツィターは録音のマジック全開で、手前に大きく出現するのも効果的。「〜ドナウ」は適度に洗練されない、颯爽としないリズムが、タマらぬ魅力横溢。なんとなくローカルで懐かしい感じか。

 ベルリン響(旧西)との2曲は「酒・女・歌」「春の声」、これも”やや”落ちるのであって、クサいテンポの揺れ、雰囲気は健在です。音質がやや刺激的金属的喧しく響くのもマイナスでしょう。オーケストラのサウンドもウィーン響より、ややリキみが目立って筋肉質なんです。リズムがちょっと固くて、やはり”独逸”なのか。

 「トリッチ・トラッチ・ポルカ」の躍動に不足はなく、「ラデツキー行進曲」には貫禄に、「ピツィカート・ポルカ」には小粋な「間」と「揺れ」に感服いたします。トライアングルが何とも言えぬ効果有。「南国のバラ」はワタシお気に入りのなんとも優雅な作品、「皇帝円舞曲」は少々ハデ過ぎで気品が足りないかも。「ウィーン気質」をラストに持っていったのは大正解で、ちょっとセンチな旋律が、名残惜しげ(「タメ」が頻出する)に、デリケートに表現されました。

(2008年12月12日)

 ちょっと掟破りだけど、金欠病で(サイフを盗られちゃって・・・1999年5月のこと)図書館で借りてDAT(2000年MDに)に落としたCD。ごめんなさい。「本とCDは自腹で買うもの」という鉄則の私も、背に腹は代えられない。岡山市立図書館のコレクションは、マニアックで面白くて、いっぱい借りてしまいました。(ヘタなレコード屋の比ではない)タダなのに、ほとんど(世間一般で云う)廉価盤を借りてしまうサガが悲しい。(2006年10月@250にて購入済)

 シュトルツって、昔から名前は知っているのに聴いたことはなかったんですよね。若い世代の人は知らないでしょうねぇ。1880年生まれ、1975年まで長命を保ったそうで、オペレッタ畑の指揮者であり、作曲家。オイロディスクにずいぶんたくさんの円舞曲やオペレッタを録音していました。そのなかから有名どころを取り出した一枚。

 ワタシ、こういう「軽音楽」(死語!)は好きですねぇ。LP時代はフィリップスから出ていた、エドゥアルド・シュトラウスの3枚組を愛聴していました。(現在も数曲DATに残してある)CD時代になってからは、PILZ3枚組(ショルツ、ファルク、ミヒャルスキ/ウィーン・フォルクスオーパー)で楽しんでおります。ま、なんでも良いんですよ。ウィーン・フィルにも、ウィーンにもこだわりなし。

 選曲OK。「ウィーンの森」と「南国のバラ」は欠かせません。「芸術家の生活」も欲しかったところ。録音もまぁまぁ良好。

 それに、あのいつもは腰のないVSOが、いつになく雄弁でしっかりしているのに驚き。ホルンやフルートもなかなか味わい深い。やはり、お国ものの意識でしょうかね。アンサンブルも整っていいて立派。
 シュトルツは第2次世界大戦中、アメリカに行っていたそうで、この演奏も豪華でやや派手めかも知れません。以前、なんかの評論で「こんなのはウィーンの演奏ではない」とボロカスに云われていた記憶もあります。(気にすることありません。)

 たとえば「春の声」なんかは、あの優雅な浮き立つような気分ではなくて、やたらとキンキラきんとして「こんなのは・・・」という感も有。ワルツのリズム感も、この演奏だけなんとなくちがう。(オーケストラのせいか)「トリッチ・トラッチ・ポルカ」も「ラデツキー行進曲」も、慣れた技で面白くないと云えば、面白くない。ありがちな普通の上手な演奏。新鮮さは不足気味か。(クナッパーツブッシュのが頭から離れない)

 でも、この3曲以外は気に入りました。

 場末のスナックで、信じられないくらい演歌の上手い、おじさんやおばさんがタマにいるじゃないですか。アルバイトの地味なおねえちゃんが、酔客のリクエストでマイクを持ったら度肝を抜かれるほど色っぽいとか。 シュトルツの演奏って、そんな感じだと思うんですよ。(ちょっとちがうかな?)

 グランド・マナーで豊満、ある種「いかにも」といった風の演奏が決まってますね。主旋律の細かいニュアンス(演歌におけるサビの声の裏返りに相当)、テンポ・ルバートも一聴の価値あり。ピタリとはまりすぎて、少々鼻につくくらい。ウィンナ・ワルツはこれで良いと思います。旧態依然とした雰囲気であり、あまり上品でなく・・・「ウィーンの森」と「ウィーン気質」が白眉。

 VSOは絶好調で、ベルリン響は少々ガサツ。(おそらく旧西の方のベルリン響でしょう。Berlin Symphony Orchestraという表記。ヘタクソさもそれを感じさせる)VSOは、ムジークフェライン・ザールでの録音だそうです。なるほどの豊かな音響。

(2000年6月23日更新)


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written by wabisuke hayashi