Spohr 交響曲第4番ヘ長調「音の浄化」/歌劇「ファウスト」序曲/
歌劇「イェソンダ」序曲(アルフレート・ヴァルター/ブダペスト交響楽団)


Marco Polo 8.223122 Spohr

交響曲第4番ヘ長調「音の浄化」作品86
歌劇「ファウスト」序曲 作品60
歌劇「イェソンダ」序曲 作品63

アルフレート・ヴァルター/ブダペスト交響楽団

Marco Polo 8.223122   1987年録音

 ここ最近(数年スパン)”レコード屋”に通わなくなって、もっぱら通販とかデータ・ダウンロードになってしまいました。この作品、知名度的にナニだけど、ネットで拝聴可能ですよ、味わいある画像つきで。Marco Poloというレーベルはやたら珍しい作品ばかり、系統的に揃えて下さって、絶対に量は売れないはず。しかし商売的には「NML」のストリーミング配信で大成功、貴重なる音源も全部聴ける!というのが凄い。一昔前、というか20世紀中、本格的なネット社会前夜だったら廃盤になっちまって中古で探すしかない、みたいな時代でしたから。Louis Spohr(1784-1859)はBeethoven (1770-1827)のやや後輩、Schubert (1797-1828)のちょっぴり先輩、以前から好きで、ヒット曲はヴァイオリン協奏曲第8番 イ短調 作品47「劇唱の形式で」 (←これは悪訳と思う)くらいか、あまり知られた旋律がないのが残念。もちろん(自分が知る限り)滅多に演奏会演目にも乗りません。

 第1楽章序奏「ラルゴ」は暗く重苦しい静謐が支配し「ほんまにヘ長調?」、やがて明るく優しい穏健なる「アレグロ」へ。これってSchubert の大ハ長調交響曲のパターンなんでしょう。なんとも優雅なわかりやすい、親しみやすい旋律が続いて、ブダペスト交響楽団(=ハンガリー放送交響楽団とのこと)は素朴ローカルな響きであります。激しい爆発部分に響きは少々にごります。おそらくアルフレート・ヴァルターは序奏〜主部の激しい対比を嫌って、慎重にコトを進めております。ややユルいかも、アンサンブルも少々手探りな感じ。時に木管の足並みが揃いません。(10:30)

 第2楽章「アンダンティーノ〜アレグロ」可憐な緩徐楽章は一分半ほど経過したところで、軽快な駆け足をはさみます。チェロのソロが途中切々と(なんども)歌い、それを木管が受け止める、ちょっぴり哀しげな旋律。ここも親しみやすい旋律でっせ。やがて穏健安寧が回帰してゆったりと終了。(6:44)

 第3楽章「行進曲のテンポで」ここ全曲の白眉でしょう。トランペットのファンファーレから始まる、題名通り元気な行進曲というか、王様の戴冠式、みたいな風情、四角四面なリズムがいかにも馴染みでウキウキしますよ。スケールも大きい。「Ambrosian Ode」という副題の意味合い、背景が理解できません(ご教授乞う!)。そういえば交響曲の副題である「音の浄化("Die Weihe der Tone")」というのも意味不明。こんな戯言つぶやきつつ、音楽は勇壮に進行して、時に暗転し、立ち直り、ほんまにわかりやすく、シンプル。但し、ヴァルターはやや安全運転気味、ここはもっと激しいところ、優雅な表情との対比メリハリが欲しいところでしょう。後半、金管(コラール風旋律)頑張ってかなり盛り上がります。(13:50)

 終楽章は低いティンパニが遠雷を連想させ、不安な木管にて開始(ラルゲット)。荘厳な弦が低弦ピツィカートに乗って準備完了〜って、ここはツマらん音楽やな、と思ったら主部(アレグレット)に入って弦が複雑に絡み合って。美しい叙情がやって参りました。木管と対話を続けつつ、やがて金管(ホルン)も参入して少しずつ、少しずつクライマックスを目指して粛々たる歩み・・・は、中途半端な盛り上がりなのだな。結局、静謐に収束して・・・美しいが・・・残念。(7:55)

 Spohrのオペラなんか現在まず上演されぬことでしょう。「ファウスト」序曲は優雅で明るく、「イェソンダ(小惑星)」序曲は暗く静かな開始から、ピッコロが呼び水となって明るく軽妙に転じました。ラストは俗っぽい終わり方。なんせ”音にしてくださるだけで、感謝”状態だから贅沢言えず。おそらくはアルフレート・ヴァルターの表現は、叙情が勝ってメリハリと強靭なパンチ、ノリが足りない。あちこち美しい、わかりやすい旋律満載作品であります。音質サウンドもごく自然。

(2013年4月20日)


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written by wabisuke hayashi