Bruckner 交響曲第7番ホ長調
(スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団)


ARTE NOVA 74321277712 Bruckner

交響曲第7番ホ長調

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団

ARTE NOVA 74321277712 1991年ザールブリュッケン・コングレスホールにて録音。

スクロヴァチェフスキのBrucknerはARTE NOVAの白眉。NAXOSのティントナーもかなり売れたとのことですが、こちらも一時どこのレコード屋さんへ行っても流れてましたね。日本のリスナーの目利きは高い、さすが。若杉の第2・9番があるから全集にはならないか、と思っていたら、無事全集録音となったらしい。おそらくこの録音が一番最初のもののはず。

 じつはここのところ、ヨッフム/ドレスデンの全集を買ったのを機会に、第7番ばかり集中して聴いていました。「Brucknerはオーケストラで決まる」とつくづく思ったところで、もういちどスクロヴァチェフスキを聴きたくなりました。なにせザールブリュッケン放響でしょ。ワタシはネーム・バリューは気にしないが、このオーケストラが深く重心の低い音である、とのウワサも聞かない。そこをスクロヴァ爺さんがどう料理したのか再確認。

 数年前に聴いた感想では「アンサンブルは驚異的。オーケストラの自発性は足りなくて、やや線が細い。美しいBruckner」。(あたりまえだけれど)良いとこ突いてます。スクロヴァチェフスキは、かつてマーキュリーやVOXで立派な仕事をしていて、どれもアンサンブルの水準が高く、透明。レパートリーも広くて、ラヴェルやストラヴィンスキーの繊細な響きも凄かった。ハレ管時代の録音はほとんど聴いていないのですが、ブラームスとか、Brucknerの4番でしたか、ボチボチ話題になっていましたね。超一流のオーケストラとの録音が少ないことにも好感が持てます。

 で、結論的に、かつて聴き取ったものと変わらず。

 大時代的な、茫洋、かつ大仰な表現とは無縁な、クールで集中力あるBruckner。オーケストラは、ドレスデンとかコンセルトヘボウのような「ハッ」とするような音は期待できません。但し、アンサンブルのテンションは素晴らしい。細部にまで指揮者の意志が徹底しているようで、明快、クリア、透明、どんな旋律も流さない、ていねいに、きちんと、心を込めて表現されます。威圧するようなスケール感ではないが、小さくまとまった演奏ではない。

 ここまでのアンサンブルだと文句なしですが、オーケストラは少々線が細いでしょうか。Brucknerは余裕を持った金管の全奏とか、気の遠くなるようなホルンの魅力的な(割れた)音色を聴きたいもの。最終楽章では、その辺の不足が少々気になります。それでも「アダージョ」は息詰まる、緊張感溢れ、慈しむような美しさに不足はない。(盛大な打楽器が入っているからノヴァーク版でしょうか)

 Brucknerのキモ〜スケルツォは、豪快さより、きっちりとしたリズム感が印象的で、これも従来のイメージとずいぶんと異なります。

 ま、クナッパーツブッシュや、フルトヴェングラーなんかの超個性的な演奏も好き。やはり時代の音なんでしょうか、ずっとスッキリしていて「スクロヴァチェフスキは面白味のない演奏」と思う人もいるでしょう。力のあるオーケストラが、存分に自発性と妙技性を発揮する世界とは違っていて、やや人工的な印象はあります。しかし、どんなオーケストラとでも完璧な、室内楽のようなアンサンブルを実現するのは、師匠であるセル譲りの実力か。

 ヨッフムと比較するとわかりやすいのですが、この演奏は神経質です。それを嫌う人もいるでしょう。Brucknerの魅力は、一種おおらかで開放的な響きもポイントですから、聴き疲れするかも。こういったスリム系で完成度の高い演奏が出現するのも、時代の証言なのでしょう。全68分45秒。優秀録音。ティントナーもちゃんと聴かなくちゃ。(2000年10月22日更新)


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written by wabisuke hayashi