Sibelius 交響曲第2番ニ長調
(ジョージ・セル/ニューヨーク・フィル1953年ライヴ)


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交響曲第2番ニ長調 作品43

ジョージ・セル/ニューヨーク・フィル(1953年ライヴ)

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 サラリーマン晩年を現役・営業の現場監督として過ごさせていただけることに感謝しております。どんなお仕事でもキツいものだけれど、帰宅すると心身とも少々疲労を感じてしまって、”音楽に逃げている”感じはありますね。もっと生演奏を、CDだって厳選し集中して・・・というのが望ましいのに、だらだら、ぼんやり聴いている不遜な態度を反省いたしましょう。子供の頃から音楽を聴いてきて、佳き音質、オーケストラのアンサンブルの質、この辺り自分なりの基準はますます混迷を深めております。演奏の良し悪しは嗜好だから、人それぞれ。ワタシの場合はコロコロ変遷するのがエエ加減だけれど。閑話休題(それはさておき)

 ジョージ・セルのこの作品は、コンセルトヘボウとの1965年(正規盤をかなり以前に入手しているのに再聴していない)、そして著名なる日本での最晩年1970年ライヴを拝聴する機会を得ました。いずれ厳しい集中力とテンションの高い演奏を堪能できます。”北欧の自然云々”したら、これは支持されないかも。でもね、オーマンディの豊満、バーンスタインの熱血も、この作品にはなかなかよろしかった記憶有、ネット・ダウンロードしたきり、放置しておいた自主CDをようやく拝聴いたしました。

 ようやく拝聴、と書いたけれど、おそらく聴いていたはず〜というのは、音質にも演奏スタイルにも記憶があったから。1950年頃亜米利加の録音って、だいたい残響少ない硬質金属的、潤いの少ないでしょ?(トスカニーニが代表例)ましてやライヴ。しかし部屋でボリューム上げてしっかり集中したら、それはそれで芯もあるし、解像度も意外と高い・・・聴き手の集中力を削ぐようなひどい状態に非ず。乾いた音だけれど。

 この辺り北欧英国系音楽は、重厚なサウンドが似合うとは限らない。第1楽章 「Allegretto」は”第1主題は弦楽器の葉ずれのようなざわめきを背景に、木管楽器で奏でられる印象的な歌にホルンが応答”との作品解説があったが、”葉ずれのようなざわめき”どころの騒ぎじゃない、ジョージ・セルはテンション高く、明るく、硬質なサウンドで”カッチリ”、朗々雄弁と、アツく、決然と歌うんです。高原やら北欧凍り付くフィヨルドの涼風・・・そんなんじゃない、もっと情熱的な推進力を誇って、ニューヨーク・フィルは絶好調です。アンサンブルも優秀。このオーケストラは好不調の波はかなりありますね。

 第2楽章「アンダンテ」の怪しい低弦ピツィカートの正確なこと!微妙にテンポを揺らせるワザもドキドキするほど決まっております。やがて弦が、金管が高らかに歌ってアッチェランドが掛かってアツい。コラール風旋律による金管のタメもお見事。間を存分にとって、優しい表情に落ち着く対比も絶妙の描き込み。これだけ細部作り込んでも、不自然な感じはないんです。正確だけれど怜悧ではない。浪漫に重すぎない。第3楽章「ヴィヴァーチシモ」〜ここがオーケストラの技量が問われるアンサンブルの腕の見せどころ。セルは快速で弦を煽ります。この指示に付いていくニューヨーク・フィルの技量もたいしたものだけれど、ライヴ故の”勢い重視”を狙っていると思われます。”舌を巻くほどの凄い縦線の合わせ方”迄は辿り付かないが、このアツさは貴重でっせ。ほとんどヤケクソ的大爆発。

 トリオ部分の牧歌的な対比は絶妙です。暴力的なほどの推進力の合間に挟まるからこそ、そこが生きるんです。ジョージ・セルの優しい浪漫に不足はない。

 そして終楽章。んもうタメにタメて!〜爽快なる解放へ。雄弁だけれど、引き締まった表現を基本としているので、妙に立派な重々しさはないんです。暗鬱に崩れる部分での絶妙なるテンポの揺れ、表情の微細な味付け変化、静謐への抑制〜単なる馬力系元気演奏とは桁が違いますよ。ニューヨーク・フィルの明るい、強烈大爆発金管は亜米利加的サウンドではあるが、無機的ではない暖かさ、輝かしさに溢れました。ここまで集中できたら、当日の聴衆と熱狂を分かち合えるでしょう。音質問題で”ヴェリ・ベスト”は断言できぬが、おそらくは第1楽章途中から、それは忘却の彼方へ〜保証します。

 最高。会場熱狂した聴衆は”フライング・ブラーヴォ”状態。これなら納得です。

 自主CDなので、CDR収録80分ぎりぎりまで埋めたいのが、治らぬビンボー症。Sibelius 交響曲第7番ハ長調〜ヘルベルト・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団(1955年)・・・エエ時代でっせ。2曲揃えてamazonCDR代一枚13.8円也。例の如し、語り口の上手い、とらえどころのない幻想曲を絶妙にまとめております。オーケストラは上手く、雰囲気たっぷり。カラヤン42歳、晩年ほどの徹底したレガート奏法に至らず、清涼なるテイストをちゃんと残しておりました。カラヤンのSibelius を聴く機会はすっかり少なくなったが、フィルハーモア管弦楽団時代のものが一番よろしいでしょう。

 そういえば、かなり以前に駅売海賊盤(処分済)で第2番を聴いておりました。もうちょっとしたら、パブリック・ドメインとなってネットから自由に拝聴できるようになるでしょう。再聴はそれからの宿題です。

(2011年5月1日)

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written by wabisuke hayashi