Shostakovich チェロ協奏曲第1番/Tishchenko 17本の管楽器、打楽器とチェロのための協奏曲/
Vlasov チェロ協奏曲(ロストロポーヴィチ(vc))


BRILLIANT BRL-92771 Shostakovich

チェロ協奏曲第1番 作品107

ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/ソヴィエット国立交響楽団(1961年ライヴ)

Tishchenko

17本の管楽器、打楽器とチェロのための協奏曲

エフゲニ・スヴェトラーノフ/交響楽団(1968年ライヴ)

Vlasov

チェロ協奏曲

ロジェストヴェンスキー/ソヴィエット国立放送交響楽団(1964年ライヴ)

ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(vc)

BRILLIANT BRL-92771/CD5

 ロストロポーヴィチが鬼籍に入ったのが2007年、自分のイメージとしては1960年代30〜40歳代の演奏がもっとも脂がのっていた、と感じます。米PIPELINEは旧ソヴィエット時代の膨大なる放送音源を所有していて、現在はBRILLIANTにてCD化されております。2000年代初頭に発売された韓国YedangClassicsには粗雑な編集(音源選定/拍手の中途半端な削除)に苦しめられました。こちら良心的と思いますよ。この3曲収録の一枚は良心的な音質、滅多に聴く機会のない珍しい作品も愉しめます。

 著名なるShostakovich〜これがもの凄い。モノラル、やや遠い感じの音録りだけれど、奥行きもあってけっこう鮮明です。冒頭から例の如し、シニカルなユーモラスを感じさせる旋律スタート、その緊張感とキレ味たるや尋常に非ず。第2楽章「モデラート」は、ロシアン・ホルンの濃厚かつ無遠慮なホルンに仰け反ります。そこに朗々纏綿たるチェロが(イヤらしいほどセクシーに)絡みます。第3楽章「カンデツァ」の壮絶なる技巧はかつて聴いたことがない、ほとんど開いた口が塞がらぬほど・・・

 終楽章のティンパニは(先のホルン同様)無遠慮前面に立ってびしばし叩き付け、チェロのスピード冴えは「ハイフェッツもかくや!」と思わせるほど。たっぷり濃厚、官能性前面、お下品と感じる人もいるやろうなぁ。嗚呼、疲れた。

 Tishchenko(ボリス・ティシュチェンコ)はShostakovichの弟子筋の人らしい。ほとんど現代の人ですね。かなり前衛的、不協和音っぽいソロが冒頭から延々、朗々、しつこく続きます。やがて管楽器が似たようなテイストで絡み合って参入、暗鬱難解重厚晦渋な雰囲気、ほとんどどっぷり。こうしてロストロポーヴィチは、新しいレパートリーに常に取り組んでおったのだね。やがて金管は(暗鬱難解重厚晦渋なまま)激しく盛り上がって、ついに打楽器も参加。チェロの超スロウ・ポルタメントの効果(凄いテクニック)激しく、金管の緊張感いや増すばかり・・・

 全22:49。未知の作品をしっかり聴くのは音楽への緊張感維持の基本行為であります。

 Vlasov(ヴィクトール・ヴラソフ)に至ると、ほとんど名前さえ初耳。Movement1/2/3から成り立つ、映画音楽風勇壮+甘美な安らぎ、わかりやすい旋律連続、かなり保守的な24分ほどの作品也。その合間にロストロポーヴィチの妙技が挟まる、といった風情であります(Movement1)。Movement2は静謐な子守歌風であり、Movement3は高音短いパッセージを自在に操るソロの妙技が幻想的に響きました。まさに甘美な映画音楽風、そしてユーモラスなリズム感。

(2011年7月30日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi