Shostakovich 交響曲第14番ト短調「死者の歌」
(ラディスラフ・スロヴァーク/スロヴァキア放送交響楽団/
マグダレーナ・ハヨーショヴァー(s)/ペテル・ミクラーシュ(b))


NAXOS 8.550631 Shostakovich

交響曲第14番ト短調「死者の歌」

ラディスラフ・スロヴァーク/スロヴァキア放送交響楽団/マグダレーナ・ハヨーショヴァー(s)/ペテル・ミクラーシュ(b))

NAXOS 8.550631 1991年録音

 弦楽器+打楽器+ソプラノ+バスという編成。自分にとってはShostakovich受容の原点みたいなLadislav Slovak(1909ー1999斯洛伐克)全集。NAXOSによる画期的な録音だったけれど、価格的にはその後ルドルフ・バルシャイとかマリス・ヤンソンスが激安全集として出現してから旗色が悪くなりました。Magdalena Hajossyova(1946-斯洛伐克)はけっこうあちこち、旧東側の録音に多く参加しております。Peter Mikulas(生年情報探せず-斯洛伐克)は堂々たるヴェテラン。ふたりとも充実しておりました。

 この一連の作品にはパワフルなオーケストが必須、スロヴァキア放送交響楽団(ブラティスラヴァ)は頑張っていて、音質もなかなか良好だけれど、ちょっとテンションに足りぬ感じ。それでもCD入手当時、苦手系極北な存在だったShostakovichを勉強すべく一生懸命これを聴いておりました。この第14番は弦と打楽器(8種)のみ、管楽器爆発がないせいか、オーケストラの弱さはあまり気になりませんでした。これが交響曲、どこが?といった連作歌曲集、整ったアンサンブルに声楽陣もなかなか好調。それにしてもShostakovichは絶望的に暗い作品が多くて、作品に時代が追いついた感じ。ト短調というのは前半中心、全体としてはほとんど無調。言葉の意味は理解できないけれど、いずれ「死」をテーマにした内容ばかりとのこと。こんなズズ暗い作品にも感銘を受け取ることができろようになりました。

 第1楽章「深いところから」(b)は静謐な弦に暗鬱に朗々たるイケボが絡んだ始まり(低弦の呻くような動きが思いっきりイヤらしい)(4:49)第2楽章「マラゲーニャ」(s)は切迫する弦のリズムにヒステリックな女声 +カスタネットや打楽器が印象的に際立ちました。(2:48)

 第3楽章「ローレライ」(s)(b)は緊張感たっぷりな男女声はまるで怒りの掛け合い。そして打楽器の合いの手がシニカルなユーモラス(馬の蹄のよう)。ラスト辺り鐘二つは歌合戦の無慈悲な評価みたい。この楽章はニ番目に長い。(8:28)第4楽章「自殺」(s)題名通りの風情、絶望のソプラノ詠嘆と絶叫に虚無なチェロ・ソロが浮遊するように絡みました。そして虚しい鐘。(6:26)

 第5楽章「用心して」(s)12音階のシロフォンの旋律がオモロく繰り返して、種々打楽器のリズムはユーモラスだけど題材はじつは危ういもの。ソプラノと弦の絡みにも緊張が走ります。この辺りの”色彩”は心に刺さるところ。(3:03)第6楽章「マダム、ごらんなさい!」(b)(s)は男女声二人と弦のみによる短い警戒。これはまるでオペラですよ。(1:41)第7楽章「ラ・サンテ監獄にて」(b)は男声と弦のみによる暗鬱に静謐、絶望的な嘆きもあるAdagio。無機的な弦のピチカートに、無表情な打楽器、そして低弦の嘆きが男声とともに重苦しく歌います。ここが全曲中一番長く、圧巻の迫力。(9:57)

 第8楽章「コンスタンチノープルのサルタンへのザポロージュ・コサックの返答」(b)これは怒りに充ちた力強い男声が力強い。弦の伴奏も重層的に効果的、これはそうとうにパワフルな迫力、Bartokを連想させました。音質効果抜群。(2:03)第9楽章「おお、デルウィーク、デルウィーク!」(b)哀愁の泣ける弦から優しい朗々切々とした男声が絡み合いました。暗いチェロ・ソロの説得力が素晴らしい。(4:50)

 第10楽章「詩人の死」(s)は絶望的な虚無が弦の囁くような弱音とともに歌われます。(4:53)第11楽章「むすび」(s)(b)はほんの短い死の賛美。弦の激しい不協和音に締めくくって、とてもカッコよい。(1:07)

(2024年11月23日)

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written by wabisuke hayashi