Shostakovich 交響曲第7番ハ長調「レニングラード」
(レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック)


これはLP時代のデザイン Shostakovich

交響曲第7番ハ長調「レニングラード」作品60

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

CBS/SONY 1962年録音(データ拝聴)

 後年1988年の再録音は聴いたことはありません。Shostakovichは大概苦手。旧ソヴィエット系のよろしくない音質とか、ストレートな政治的意図、その真反対の真意云々、いずれも辛気臭い風情が気に喰わなくて幾星霜、こどもの頃に聴いた第5番二短調(キリル・コンドラシン/モスクワ・フィル)から一歩も理解が進んでいない自覚もありました。

 「レニングラード」も然り。かなり以前いかにも怖そうなムラヴィンスキーが人数の欠けた(空席目立つ)オーケストラを指揮する映像の記憶があって、あれはプロパガンダ(特定の主義・思想についての宣伝)映画だったと今なら理解できます。戦禍真っ最中のレニングラード初演は1942年8月9日、カール・エリアスベルク指揮レニングラード放送管弦楽団(国内初演は既にサモスード、ムラヴィンスキーも演奏済)更に海外初演(ヘンリー・ウッド、そしてトスカニーニ)も済んでおりました。ナチス包囲網の中、地方に疎開していたレニングラード・フィル、ムラヴィンスキーではなく、実際にタクトを取ったはエリアスベルグ( 1907-1978)だったそうです。この辺り詳細は「電網郊外散歩道」に有。(勝手にリンクごめんなさい)

 閑話休題(それはさておき)。シュワちゃんのちちんぶいぶいCM以来、いっそう苦手意識が強まった作品。久々、この明晰わかりやすい演奏を拝聴して、けっこうな感銘をいただきました。音質もアンサンブルもかなり良好、バーンスタイン44歳の情熱と集中力を堪能いたしました。作品自体、ちゃんとまともに聴いたのも初めてかも。ニューヨーク・フィルは好調です。ぎりぎりCD一枚に収まりました。もっと凄い演奏があるんでしょうね、きっと。

 第1楽章「Allegretto/戦争」(27:50)。冒頭「人間の主題」にものものしい勇壮さ、いかにも前向きな戦う意欲を表現しているように大柄な出足。清明な木管、弦主体の「平和な生活の主題」を経、小太鼓の軽快なリズムに乗って12回執拗に繰り返される「戦争の主題」(シュワちゃんのちちんぶいぶいCM)へと進みます。シニカルなユーモアさえ感じさせてノリノリ、この辺り「ボレロ」連想は誰でも気付きまっせ、云々旋律の引用は誰それを暗喩しているとか、その辺りは専門の方に委ねて、スケール大きな重み厚み、情熱表現をたっぷり堪能いたしましょう。後年の演奏はもっと遅いらしいけど、これも相当大仰な構え+情熱、そして明るく前向きなオーケストラの響きであります。

 第2楽章「Moderato. Poco allegretto/回想」(13:59)。スケルツォ楽章だけど、妙に寂しげ途方に暮れたような・・・第4番ハ短調の第2楽章を連想いたしました。オーボエの長いソロも暗いなぁ、ピチカートもぼそぼそつぶやいているような・・・途中から突然リズムが早まって(三拍子)オーケストラの絶叫が始まって金管、打楽器も参入していかにも「戦うぞ!」的盛り上がりへ。ここ決然とカッコ良いですね。やがて静謐に戻って、この楽章も若い頃のバーンスタイン印象から離れて、ずいぶんと緻密な集中力演奏でしょう。

 第3楽章「Adagio/祖国の大地」(17:52)。管楽器を主体としたコラール風主題から、弦による神聖な旋律が高らかに、前向きに歌われます。やがてフルートが寂しげな長い旋律を奏で、それは静謐に荘厳に弦に引き継がれ、それはShostakovichには珍しい安寧を感じさせるもの。やがてテンポ・アップに疾走して悲痛な切迫感を強め、盛り上がりを形成しつつ、打楽器参入・・・はパターンでしょう。(第5番二短調第1楽章を想起)一筋縄ではいかぬ「緩徐楽章」也。ここでの集中力演奏(とくに弦の叫び)も立派。冒頭のコラール風旋律〜寂しげ、静謐に荘厳に弦に回帰。そのままアタッカにて・・・

 第4楽章「Allegro non troppo/勝利」へ。(15:18)暗い出足から、木管によるモールス信号「V」(・・・−)はVictoryの意か、それとも「運命」動機のパロディか(Wikiより)。細かい音形が執拗に繰り返され、音量とテンポが上がっていくところ(+ダメ押しに打楽器参入)第5番にクリソツなパターンでしょう。大音響に響きは濁らず、弓の背で叩く弦(でしょうか)もリアルに響きます。中間部テンポ・ダウンして重い足取りは静謐に暗く、これは「作品の輝かしい帰結」と称されるんだそう(ヘンやなぁ。こんな内向きっぽい部分なのに)やがて奈落の底から立ち上がるように徐々に声は大きくなって、第1楽章勇壮な「人間の主題」輝かしい金管によって復活!圧巻のクライマックスを導きました。

(2016年7月31日)

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written by wabisuke hayashi