Shostakovich ピアノ協奏曲第1/2番
(ヤブロンスキー(p)/オルティス(p)/アシュケナージ/ロイヤル・フィル)


Shostakovich 協奏曲全集より

ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
ピアノ協奏曲 第2番 ヘ長調 作品102

ペーテル・ヤブロンスキー(p)(第1番 1991年録音)
クリスティーナ・オルティス(p)(第2番 1989年録音)
ヴラディーミル・アシュケナージ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

DECCA/PHILIPS 4752602 3枚組

 行きつけのご近所図書館で借りたCDでして、ま、無料だから、ふだん聴く機会の少ないものも”ものは試し”とばかり持ち帰ります。ワタシ、Shostakovichは少々苦手なんです。ピアノ協奏曲だって、ユージン・リスト盤のコメント(加筆ちょろり)には愛情の欠片もないし、ヒューストン盤は演奏がヘロ過ぎました。(ひどいこと言ってごめんなさい)

 アシュケナージ/ロイヤル・フィルの交響曲第5番にも失望しちゃった罰当たり者であるワタシ。だから、このCDも、ま、人生勉強だ、ということで借りたCDなんです。いや、ところが、この楽しさ、優しさ、溌剌感はなんでしょ。ヤブロンスキーもオルティスも名前でしか知らなかったが、こんな見事な演奏をしてくださるなんて。名曲には名曲を自覚させてくださる演奏が必要、という自明の理でしょうか。

 第1番はヤブロンスキーご担当です。20歳の頃の録音か。ちょっとウェットな旋律に始まって、即、人を喰ったようなシニカルでユーモラスな雰囲気に変化するでしょ?作品的には円熟より、センスが必要なのでしょうか。暗いようであり、ふざけているようであり、笑顔だけれどココロからは楽しんでいないようでもあり、非常に複雑なテイストをもった作品。才気煥発というのかな、こういうピアノは。クールに淡々と弾いているようだけれど、センスの良さが滲み出ております。

 第2楽章は、ずいぶんひっそりと抑えた表情だけれど、ワザと心情を込めていないかのような粛々としたもの。低音の叩くような打鍵にさえ配慮が行き渡っている感じ。バックはずいぶんと集中力もあって成功しております。抜群に上手いトランペット・ソロも味わい深い。終楽章出足は、まるでChopin かScriabinか。そのまま快速特急に乗って、素晴らしきテクニックがピカピカに光ります。終楽章はどんどん転調して、時にブレーキを掛けたり、ゆったりと立ち止まったり、やがてどうにも止まらないよ・・・とばかりトランペットが尻を叩いて・・・ああ楽しい。でも額には汗ひとつかいておりませんね。

 第2番はブラジルの才媛クリスティアーナ・オルティスが担当になります。曲はまるでおもちゃの兵隊の行進みたいに楽しくて、第1番より大衆的な作風と思いますね。オルティスのピアノは、さきのヤブロンスキーに比べると幾分ウェットで、第2楽章の繊細で幻想的な味わいはピカイチでしょう。そこはかとない、哀しみを感じさせる心象風景はとてもわかりやすい。終楽章の抜いた感じの粋なカルさも大成功。変拍子もユーモラスだけれど、第1番に比べてそう乾いているように聞こえないのは、オルティスの個性でしょうか。

 この二曲、テクニックをかなり要求されそうですね。粋とかセンスとか、そんなものも。正直、以前に聴いていた演奏は(今になって思えば)未整理、というか、浪漫派の作品を演奏するときと同じ扱いをしていたのか、と思い当たりました。

(2004年4月14日)

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written by wabisuke hayashi