Schumann ヴァイオリン協奏曲ニ短調
(ゲオルグ・クーレンカンプ(v)/シュミット・イッセルシュテット/ベルリン・フィル)


MEISTERKONZERTE100枚組8,519円也 66枚目 232098/66/2009年12月購入HMV通販 Schumann

ヴァイオリン協奏曲ニ短調

ゲオルグ・クーレンカンプ(v)/ハンス・シュミット・イッセルシュテット/ベルリン・フィル(1937年)

クララ・ヴィークの主題による変奏曲 作品14(1954年)

ウラディミール・ソフロニツキ(p)

序曲、スケルツォとフィナーレ ヘ長調 作品52

マルク・アンドレーエ/ミュンヘン・フィル(1974年)

MEISTERKONZERTE100枚組8,519円也 66枚目 232098/66

 自分の嗜好、聴く頻度ともかく、歴史的に生き残ってきた名曲を棚中に揃えておくこと、それは音楽を愛する者としての矜持と考えます。経済的物理的にそれはかなう時代となりました。2009年も押し迫った12月、 MEISTERKONZERTE100枚組を衝動(大人)買い、半年ほど前に”歴史的録音はもーエエかも”と大量処分したこともすっかり忘れて、毎日楽しく拝聴しております。ある日、無定見に箱を探って出てきた一枚、Schumann のヴァイオリン協奏曲ニ短調〜LP時代TELEFUNKENレーベルで愛聴していた音源がまさにこれじゃないですか。おお、懐かしい。

 ”音楽を愛する者としての矜持”などとエラソーに書いておいて、この作品はCD所有していないんじゃないか?と思い当たりました。正確には、ルジェーロ・リッチのVOX盤をオークション処分した記憶有。いえいえ、自分がそんな軽はずみなことをするはずがない!どこかに別なCDはあるはずだ・・・棚中探索30分、サイト内検索を掛けてもとうとう出現せず。こうして自分の不明を恥じるばかり・・・閑話休題(それはさておき)

 作品の成立/初演の経緯は曰くありげですよ。リンク先情報によると、大幅に改訂されているとのこと。この録音もおそらくそうなんだろうが、比較対象の術(すべ)がない・・・こともなくて、メニューインがオリジナルらしい。(新しい録音もネットで確認可能)いずれ、現役ヴァイオリニストの日常レパートリーではないみたい(楽譜の版権問題があるらしい/クレーメルの録音が存在するが)エエ曲なんですけどね。

 記憶よりずっと音質は良好で、もともとの音源状態もよろしかったのでしょう。作品旋律にはすっかり馴染んでいて、第1楽章「力強く、速すぎないように」は自由で劇的な旋律の躍動し、雄弁に歌います。第2楽章「ゆっくりと」には瞑想的な優しさに溢れました。ここが一番好きだな。終楽章「生き生きと、しかし急速でなく」はリズミカルな付点リズムが、晴れやかな表情であります。ちょっと技巧に走り過ぎて、ラスト辺りはダレちゃうかも。全30分ほど。クーレンカンプの音色は濃密で陰影豊かだけれど、時代を感じさせるような遅れた浪漫主義ではありません。知的な表現とスムースな技巧を誇って甘美に過ぎない。シュミット・イッセルシュテットは当時30歳代の若手だったのだね。

 このボックスはCD一枚当たりの収録は短めだけれど、フィル・アップにちょいと工夫があるんです。往年の露西亜の名ピアニスト・ソフロニツキ(1961年没)の音源登場。「クララ・ヴィーク変奏曲」はほんの8分弱の作品だけれど、寂しげでとつとつとした世界がまるで葬送行進曲。「雪の降る町を」≒Chopin 幻想曲ヘ短調のテイストにもちょっと似ている。音質は期待したほどでもないが、音楽鑑賞がツラくなるような水準に非ず。繊細丁寧な集中力を感じることは可能でしょう。

 ラスト、「序曲、スケルツォとフィナーレ」〜まるで小交響曲の味わいであって、日本でもお馴染みマルク・アンドレーエ登場。往年のスイスの巨匠フォルクマール・アンドレーエ(1879〜1962/凄いですねBrucknerの全集有)のお孫さんだそうです。もちろん、初耳音源どころか、存在さえ知らぬものでした。ひっそり密やかな悲劇風で開始され、すぐに軽妙で爽やかな旋律に変貌します。スケルツォは題名通りの剽軽なリズムに、優しい表情の旋律が中間部に挟まりました。フィナーレは喜ばしげな、これも(スケルツォ同様の)付点リズムで締め。作品的にはヴァイオリン協奏曲より完成度は高いと思います。

 1970年代にしてはちょっと曇りがちの音質であり、演奏も少々響きや奥行きが薄い印象はありました。リズム感は軽快です。

(2009年12月11日)


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