Shchedrin ピアノ協奏曲第1番ニ長調/第2番/第3番
(ニコライ・ペトロフ(p)/
エフゲニ・スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団)


Russian Disc RD CD 11 129 Shchedrin

ピアノ協奏曲第1番ニ長調(1956年ライヴ)/第2番(1966年ライヴ)/第3番(変奏曲とテーマ/1873年ライヴ)

ニコライ・ペトロフ(p)/エフゲニ・スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団

Russian Disc RD CD 11 129 1977年録音

 Nikolai Petrov(1943ー2011露西亜)はあまり聴いていないように記憶します。手持ち音源点検整理に出現した音源。音質はかなり良好。Shchedrinのピアノ協奏曲録音は意外と少ないようで、この音源には山本さんの言及がありました。 他ネット情報を探ってもなかなか詳細は探せぬ作品みたいです。Rodion Shchedrin(1932ー露西亜)はバレエ音楽「カルメン」組曲が著名、お気に入り作品だからよく聴くけれど、他の作品にはほとんど馴染みはありませんでした。

 ピアノ協奏曲第1番ニ長調。第1楽章「Mestoso con moto」はトランペットとピアノの懐かしい旋律掛け合いから始まって、明るく細かい音形のソロが続きます。後年の前衛性とは無縁の懐かしい、わかりやすい旋律、ゆったりと揺れるリズムはなかなか勇壮雄弁。細かいソロの音形も可愛らしい。途中の激しいピアノ打鍵は大衆的Bartok風。(8:33)第2楽章「Scherzo-toccata-Molt vivo」はユーモラスな無窮動のスケルツォ、目まぐるしく躍動するピアノのアルペジオに弦のピチカートが支えてきつく暇もないほど。ここは相当な技術が要求されそうなところ。(2:53)第3楽章「Passacaglia-Sostenuto」は暗鬱なる緩徐楽章。重苦しく静かな管弦楽が1分ほど続いて、ようやく寂しげにピアノが始まります。Passacagliaとは古風な舞曲、これは延々と嘆きが続く変奏曲なのですね。(5:37) 第4楽章「Finale-Prest festoso」は快活に明るく躍動疾走すして、わかりやすく熱狂してノリノリ。ここもピアノは相当の技量が必要でしょう。やはり大衆的なBartok風+露西亜の旋律が混合したような雄弁が文句なく盛り上がるフィナーレでした。(5:50)

 ピアノ協奏曲第2番はがらりと風情を変えて硬派前衛的。第1楽章「Dialogi-Tempo rubato」から明らかに無調のピアノに管弦楽の不協和音が鋭く対峙しておりました。不安であり、脈絡なく旋律リズムは変遷して緊張とつぶやきが続きます。ここもピアノは難しそう。(9:50)第2楽章「Improvizatsy-Allgro」第1楽章も即興的雰囲気があるけれど、ここでははっきりとImprovizatsy=即興となっております。スケルツォ楽章でしょう。ソロのモウレツな息付く間もない疾走は山下洋輔を連想させる打鍵、それに応えるオーケストラにも高い技量が要求されそうなところ。(4:11)第3楽章「Kontrasty-Andante」は静かな弦楽による始まり。それはやがて怪しくも不安に成長して、唐突にピアノは細かい音形に突入!金管の叫び乱入も衝撃、こもはジャズの影響モロ、ベースのピチカート、マリンバの響きもそれらしい。ものすごくヒステリックであり、カッコ良い!ラスト、ピアノのもう止められない疾走に痺れました。(7:01)

 ピアノ協奏曲第3番(Variations and Thema)。主題と変奏ならぬ、変奏と主題?いきなりのヒステリックな高音木管から無定見に即興的なピアノが叫んで、それに呼応するオーケストラも無情な激しさ、叩きつけるように激しいソロの応酬は悲痛。第1番のわかりやすさが遠い昔のような、これも無調、硬派前衛な不協和音連続。時に静かに囁くようなピアノに、まるで未知の宇宙からの通信のようなオーケストラが返信しております。激しい慟哭も不安に雄大な歌もあります。おそらくはこれが変奏曲、ほとんど即興演奏に聞こえて、これも衝撃的。並のピアニスト、オーケストラじゃ演奏できそうもない難曲か?ここも山下洋輔を思い出しました。ラストの深刻に静謐なピアノ・ソロがもしかして主題?ラスト切れ味鋭い打楽器が呼応して終了。(21:50)

 安易に馴染みの作品ばかり聴いて弛緩しているノーミソに喝!な作品連続でした。ニコライ・ペトロフは文句なしのテクニシャン。

(2023年4月8日)

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written by wabisuke hayashi