3曲のイギリスのセレナード
(ケネス・クライン/ニューヨーク・ヴィルティオージ室内交響楽団)


ASV CD DCA655 Vaughan Williams

音楽へのセレナード(詩;シェイクスピア「ヴェニスの商人」の最後の場面による。 1938年)

Elgar

弦楽セレナード ホ長調 作品20(1892年)

Britten 

テノール、ホルン、弦楽のためのセレナード 作品31(1953年)

ケネス・クライン/ニューヨーク・ヴィルティオージ室内交響楽団/カイパー(hr)ハースト(t)*合唱は12人の個人名を表記

ASV CD DCA655 1989年(頃)録音  $1.99にて購入(個人輸入)

 作品も、そして演奏者はもっと馴染みがないでしょうか。ケネス・クラインは1970年ニュルンベルク交響楽団でデビューしたこと、ニューヨーク・ヴィルティオージ室内交響楽団は1982年に彼によって創設されたとの解説があります。でも、ネットで「KENNETH KLEIN」とか「THE NEWYORK VIRTUOSI CHAMBER SYMPHONY」と検索しても、それらしき情報は少ないんです。しかし、このCDは知名度ともかく作品、演奏、録音、三拍子そろった素晴らしいもの。プロデューサーは懐かしいジョン・マックルーア(元CBSコロンビア)。このCDは廃盤かな?最近、ASVレーベルもあまり店頭では(以前ほど)見掛けないし。(更にこの価格!でも、入手できないようでは仕方がない)

 Vaughan Williams 「音楽へのセレナード」はソプラノ、アルト、テナー、バス各4人(ここではその編成。または各一人+混声合唱)+管弦楽の編成となります。ま、馴染みの「グリーンスリーヴス」並の安寧と静謐、懐かしい雰囲気に充ちた作品でして、「ヴェニスの商人」は(せいぜい)逸話のみで詳細筋さえ知らぬ粗忽者故、歌詞内容はわかりません。管弦楽はさわさわと爽やかであり、合唱(+時にソロ)は端正だけれど表情豊かであります。トランペットとホルンが静かに弦の囁きを呼び覚ます冒頭から、例のごとしのけっして激高しない、英国紳士たる(ジミな)音楽が続きました。(13:39)

 Elgarの「セレナード」はわずか3楽章12分ほど、録音の機会も多いようで、ワタシの手許にもたくさんの音源があります。(なかでもライロフ/パヴロフスク交響楽団の演奏が激遅表情過多で凄い!)ここでは適正なテンポで、しみじみと味わい深い、練り上げられた繊細なるアンサンブルが静かに詠嘆してます。まるで(遠い眼)隠棲の音楽か。

 Britten 「テノール、ホルン、弦楽のためのセレナード」は、ピーター・ピアーズ(t)、デニス・ブレイン(hr)という二人の天才のために書かれた作品であり、そのメンバーによる自演の録音も存在します。(未入手未聴)ホルン無伴奏ソロのプロローグ〜英国の著名詩人達による6つの歌曲(テナー)〜エピローグで構成される希望と精気漲(みなぎ)る名曲。30分ほど。(後に発見された「さあ、深紅の花びらを閉じて」は含まれない)

 解説によるとL.ウィリアム・カイパーはニューヨーク・フィルのホルンニストだそうで、その強烈存在感と圧倒的豪放迫力、技巧の切れ、弱音のニュアンスには驚くばかり。グレイソン・ハースト(t)は若々しい清潔な歌いぶりに好感を持てる(声量だってある)が、ここでの主役はホルンでしょう。とにかく、ホルンの立ち位置やら(音録りも主役に据えている)弦の奥行きが眼前に浮かぶほどの明快なる音質に驚愕します。

 Vaughan Williams/Elgar/Britten各々皆持ち味は違うんだけれど、濃厚甘美浪漫的旋律ではない、というところが共通点かな。Brittenはセンスとしては一番現代的にリリカルな味わいだけど、常に奔放を抑制した旋律味わいがあって、最後は必ず静かに終わる・・・というところも同じでしょうか。あくまで個人の嗜好だけれど、ワタシはBeethoven より、この類の音楽がしっくり来るんです。蛇足だけれど、この作品の題名を書いておきます。

1) プロローグ(ホルン・ソロ)
2) 田園(コットン)
3) 夜想曲(テニスン)
4) 哀歌(ブレイク)
5) 葬送歌(アノン 15世紀の詩人)
6) 賛美歌(ベン・ジョンソン)
7) ソネット(キーツ)
8) エピローグ(ホルン・ソロ)
(2006年2月3日)


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written by wabisuke hayashi