Schumann「幻想小曲集」作品73/民謡風の5つのヴァリアント 作品102/ アダージョとアレグロ 作品70/
Schubert アルペジョーネ・ソナタ イ短調 (マリア・クリーゲル(vc)/クリスティン・メルシャー(p))
Schumann
幻想小曲集 作品73(クラリネットのための)
民謡風の5つのヴァリアント 作品102(チェロのための)
アダージョとアレグロ 作品70(ホルンのための)
Schubert
アルペジョーネ・ソナタ イ短調
マリア・クリーゲル(vc)/クリスティン・メルシャー(p)
NAXOS 8.550654 1991年録音
女性に年齢はナニだけれど、マリア・クリーゲル(Maria Kliegel, 1952年 - )はヴェテランの域でしょう。メジャーレーベルではない、廉価盤専用レーベル(?)NAXOSにかなりの録音が存在するから、あまり話題になっていない実力者だと思います。2003年6月@480での購入とメモがありますね。当時、音楽聴取の幅を広げようといった意欲に溢れておりました。美しく、落ち着いた旋律、しっとりとした優しいチェロ(+ピアノ)、音質もよろしい。ほとんど極上。
浪漫派の音楽の神髄は室内楽とか、ピアノ・ソロにあるんじゃないか(声楽をあまり聴いていないが、きっと歌曲も同趣旨)。交響曲より、多彩な旋律が素直に、ストレートに感じられます。幻想小曲集 作品73は、3〜4分の短い、懐かしくも明るい旋律が3曲続く、小振りな作品。原曲はクラリネットながら、チェロのほうが表情豊か、表現の幅が広いと感じます。Schumannは気紛れに変幻する、魅力的な歌が特徴であって、第3楽章「急速に、燃えるように」に於ける華やかな躍動には喜び一杯で胸が熱くなりました。
民謡風の5つのヴァリアント 作品102は、もともとチェロの作品であって、”民謡風”というだけあって、先の「幻想小曲集」よりリズミカル、快活、ユーモラスな哀愁にて開始される佳曲であります。これも2〜4分の短い曲ばかり。纏綿たる安寧の歌との対比、もの悲しい静かな嘆き、破顔一笑、快活な風情、ちょっぴり怒りに充ちて・・・気分感情は次々と遷り変わります。
「アダージョとアレグロ」は、ちょうどChopin の「アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ」みたいな組み立てになっていて、静かな悠々とした前半〜躍動する後半で構成されます。言わずと知れたホルンの名曲であって、流麗なるチェロより不器用なホルンで奏されるほうが作品旋律の魅力は深く引き出される・・・とはワタシの感想です。「アレグロ」は喜びに溢れ、輝かしい。
マリア・クリーゲルは技術的な洗練は前提として、あまりに大柄にぎらぎら表現するタイプではなくて、美しいしっとりとした音色で優しく歌う、といった風情。師匠のロストロポーヴィチの艶やかな音色に似るが、こちらのほうが抑制が利いて気品がある・・・室内楽に適正がありそうだけれど、協奏曲も悪くないんです。
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「アルペジョーネ・ソナタ」は、既に消滅した楽器であるアルペジョーネのための作品とのこと。ARCHIVEでその録音が出ていて、ずいぶんと素朴、表現の幅も狭くて、慣例に従ってチェロの名曲として聴くのが正しい・・・なんせ、この詠嘆に充ちた(ほとんど)究極の名旋律故。いくらでも雄弁に振って大柄に表現可能(念頭にはロストロポーヴィチ有)ながら、こちらクリーゲルは微妙絶妙なテンポの揺れ、細部描き込みの入念さ+雄弁寸前の抑制がお見事であります。表情は変幻自在、詠嘆と溜息を大仰に表出しない・・・ロストポーヴィチに似るがやや小柄、といった風情か。弱音の抑制が素晴らしい。
クリスティン・メルシャーのピアノは、あくまで裏手に回ってチェロを引き立てております。ここ最近、Mahler の巨大作品ばかり聴いていたから、こんな親密な世界に酔いしれました。 (2011年4月9日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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