Schumann ピアノ協奏曲イ短調
(アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/
ヨーゼフ・クリップス/RCAヴィクター交響楽団)


LP時代のデザイン Schumann

ピアノ協奏曲イ短調 作品54
(ヨーゼフ・クリップス/RCAヴィクター交響楽団 1958年)

交響的練習曲 作品13(1961年)
アラベスク 作品18
予言の鳥(「森の情景」作品82-7)(1969年)

アルトゥール・ルービンシュタイン(p)

RCA BVCC-35078

 浪漫派の音楽はやや苦手系、後期のMahlerやBrucknerだったら、そして室内楽やらピアノ・ソロだったら拝聴機会も多いけれど、交響曲は拝聴機会は少ないもの。名曲中の名曲、このピアノ協奏曲はワリと好きですよ。正直なところ誰の演奏でもそう印象は変わらぬ粗忽者ですが。Arthur Rubinstein(1887ー1982)は暖かくも豊かな響き、味わいあるお気に入りピアニストの一人、若き日の岩城宏之さん(1932ー2006)がマルタ・アルゲリッチと彼の演奏会を聴いて感激した様子が著作に記されておりました。新旧膨大な録音が残って、意外と聴いて、どれもまずハズレはない印象。Schumannのピアノ協奏曲は1967年ジュリーニとの録音が有名、こんな旧録音があったとは初めて気付きました。RCA-Living Stereo録音の音質良好。

 いかにも録音用といったオーケストラはリンク先参照のこと。これがけっこう上手い、名手ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips、1902ー1974)の統率も盤石です。

 第1楽章「Allegro affettuoso」ま、Schumannって何を聴いてもそうなんだけど、自由自在に気紛れな歌、この楽章はもともと「ピアノと管弦楽のための幻想曲」として独立していたんだそう。緊迫した付点のリズムにて開始、やがて展開部は短く夜想曲風に甘い旋律が纏綿と歌われます。この対比、優しい歌、序奏の遣る瀬ない復活、押さえた表情に躊躇いがちに揺れる名残惜しさ、切なさ、ルービンシュタインは絶品ですよ。技巧を前面に出す人ではないけれど、無機的な響きとは無縁、安定した技巧に語り口の上手さが光ります。(15:39)

 第2楽章「Intermezzo; Andante grazioso」は間奏曲。緩徐楽章でもスケルツォでもない、いや両方の性格を兼ね備えているような不思議な楽章でしょう。淡々と語るようなオーケストラとの対話、シンプルな音階が次々転調して豊かな旋律を生み出すマジック。優雅な弦や木管にそっと応えるピアノが甘い会話であります。この辺りはクリップスのとの息の合い方がポイントなのかも。(5:31)そしてアタッカ(attacca)

 第3楽章「Finale;Allegro vivace」へ。華やかな終楽章の始まりは付点のリズムに躍動して、流麗な旋律、時にガラリとリズムを変えて自由自在、そしてどこか切なく名残惜しい。幾度冒頭の旋律リズムが登場して変容され、華麗なピアノ・ソロが続きました。ルービンシュタインは力みがないなぁ、余裕やなぁ。細かい音形に神経質を感じさせない華やかさ。ソロとオーケストラの対話も交互に主役を譲っているような印象を受けて、ここも息がぴたり合っておりました。ラストはトッカータって云うんですか?流麗に盛り上がって、ここはいつも「ウルトラセブン最終回」を思い出すところ。(リパッティの演奏だったらしい)(10:52)

 「交響的練習曲」とはずいぶん厳つい題名だけど、嬰ハ短調のAndante主題による13の変奏曲。切なく甘く劇的な作品は練習曲というくらいだから技巧的には難しいのかも。交響的というのはスケールの大きさを意味しているのか。手持ち音源は音質やや曇っても、日常聴きに不満はない水準でしょう。(約33分ほど)浪漫派の真髄はこの辺りにあるんやな、変幻自在なリズム、心象やら風景の変化が目眩く展開されて・・・やや雑然としたイメージは、ポリーニ(1981年)のあまりに洗練された演奏を聴いているから?それとも音質印象か。ド・シロウトがこんな素敵な暖かいタッチにケチ付けたらバチ当たりまっせ。

 「アラベスク」は気紛れ+安寧+切ない風情(8:13)「予言の鳥」は哀しくつぶやくようなアンコールであります。(3:24)CD収録の配置は完璧。

(2018年9月8日)

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written by wabisuke hayashi