Schumann オーボエとピアノのための作品集
(ヨージェフ・キシュ(ob)/イェネー・ヤンドー(p))


NAXOS 8.550599 Schumann

民謡風の5つのヴァリアント 作品102
幻想小曲集 作品73
3つのロマンス 作品94
アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70
ヴァイオリン・ソナタ イ短調 作品105(オーボエ版)

ヨージェフ・キシュ(ob)/イェネー・ヤンドー(p)

NAXOS 8.550599 1991年録音

 これはNAXOS初期の録音、1990年台中盤には入手したCDと記憶します。Jeno Jando (1952-洪牙利)はワリと有名だけど、Jozsef Kiss(1961-洪牙利)はブダペスト交響楽団のメンバーらしい。NAXOSならではの知名度薄き名手の発掘録音であります。当時、NAXOSは選曲にもひと工夫があって、アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70は本来、ホルンかチェロで演奏されるべきもの、ヴァイオリン・ソナタのオーボエ版も唯一無二でしょう。民謡風の5つのヴァリアント 作品102もチェロで演奏されることが多いはず。夢見るように気紛れな、美しい旋律連続、流麗なソロ、そして瑞々しい音質・・・ピアノは盤石の伴奏であります。

 ・・・んなエラソーなことを云っても、こちらオーボエに対してさしたる知識はありません。名手ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger, 1939ー瑞西)はずいぶん昔から聴いてきたけれど、正直なところあまり好みの音色に非ず、ローター・コッホ(Lothar Koch , 1935ー2003)はベルリン・フィル黄金時代の音として馴染み、ギュンター・パッシン(Gunther Passin、1937ー2014)にはベルリン放送交響楽団やバッハ・アカデミーの録音に特別な好意を抱いておりました。明るい、浮き立つような色気のある音色。

 5つの民謡風小品 作品102は「ユーモアをもって」-「ゆっくりと」-「速くなく、たっぷりとした音で」-「速すぎぬように」-「力強く、表情豊かに」からなる各々2-3分の小曲集。Schumannって交響曲みたいなガッチリとした構成の作品より、心境が次々変わる自在な作品に真骨頂があると思います。悠々のびのびとしたオーボエの音色。突っかかるようなリズムがオモロい「Mit Humor(ユーモアをもって)」「NIcht zu rasch(速すぎぬように)」は思いが吹き上がるような憧れを感じさせるところ。ラスト「Stark und markiert(力強く、表情豊かに)」は題名通りの激情が走りました。

 幻想小曲集 作品73はクラリネットのための作品。ヴァイオリンやチェロでも演奏されるけれど、オーボエ版は珍しいと思います。「静かに、感情を込めて」-「活発に、軽やかに」-「急速に、燃えるように」途切れなく演奏される10分ほどの作品。おそらくは必ずどこかで聴いた記憶のあるであろう、哀愁や憧憬の表情濃い作品であります。オーボエでは軽快端正な風情が増しておりました。

 3つのロマンス 作品94はこのアルバム唯一の本来オーボエのための作品。奥様へのプレゼントとか、ヴァイオリンやフルートでも演奏されることもあります。「速くなく」-「素朴に、心から」-「速くなく」11分ほどのしっとりとした情愛に充ちた雄弁な旋律。気持ちのせいか、この旋律がオーボエにとって一番自然な感じがしました。歌に溢れた旋律はいかにも浪漫派でしょう。とくに「素朴に、心から」が懐かしさと不安な心象風景が傑作、そのまま歌詞をつけて歌いたいくらい。

 アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70。これはホルンによる、ちょいと無骨なソロがお気に入り作品でした。(8:12)深い眠りから目覚めていくような「Adagio」。やがて「Allegro」では生命の躍動が〜馴染みの作品はオーボエによって華やかに、軽やかに生まれ変わっております。テンポもやや速めかな?ラスト、ヴァイオリン・ソナタ イ短調 作品105。第1楽章「Mit leidenschaftlichem Ausdruck(情熱的な表現で)」第2楽章「Allegretto」第3楽章「Lebhaft(いきいきと)」計14分ほどの作品。第1楽章に於ける哀愁の表情の濃さはSchumannの真骨頂、陰影豊かな旋律たっぷり、淡々としてデリケートな第2楽章を経、劇的に躍動する第3楽章のリズム、スタッカートはオーボエに相応しいと感じたものです。

(2018年12月29日)

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written by wabisuke hayashi