Schumann 交響曲全集(Mahler版)より
交響曲第1番 変ロ長調「春」/交響曲第2番ハ長調
(アルド・チェッカート/ベルゲン・フィル)



Schumann

交響曲全集(Mahler版)より
交響曲第1番 変ロ長調「春」
交響曲第2番ハ長調

アルド・チェッカート/ベルゲン・フィルハーモニー

BIS CD361+394 1987年録音  2枚組980円で購入

 Mahler版とは実演家としてのMahlerが、Schumannの合理的ではないオーストレーションをすっきりと整理整頓したものとか、こちらド・シロウトは楽譜に縁が薄くて、旧くはトスカニーニ、ジュリーニ、最近ではリッカルド・シャイーが採用しているとこのこと。Aldo Ceccato(1934-伊太利亜)が歴史あるベルゲン・フィルの音楽監督を務めたのは1985−1990年、Wikiの言及はずいぶんと素っ気なく、Schumannの交響曲を苦手とする昔の自らのコメントからなんの進展もありません。最近、バーンスタイン/ウィーン・フィル(交響曲第3番 変ホ長調「ライン」)コクのあるオーケストラの響きに魅了されて久々、こちら再聴機会を得たもの。作品そのものを聴くのも随分と間が空きました。

 交響曲第1番 変ロ長調「春」第1楽章「Andante un poco maestoso - Allegro molto vivace」冒頭金管のファンファーレが鳴り出して、記憶は蘇りました。リアルな作ったところのない音質、”凄く上手い!”オーケストラに非ず、素朴誠実なオーケストラの響きは重厚ではない。すっきりとした印象は小編成?それともMahler編曲の成果でしょうか。ちょっとリズムに緊張感不足気味、提示部繰り返しなし。(12:16)第2楽章「Larghetto」は夢見るように美しい緩徐楽章。ていねいな仕上げとは思うけれど、弦が薄いのと管楽器の響きが質素に過ぎる?木管と金管が同じ旋律を描くところは記憶より整理され、すっきりとした印象でした。(6:47)第3楽章「Scherzo. Molto vivace」へアタッカで突入。これはあまり効果的とは思えぬ指示かと。

 深刻な主題と軽快な中間部(2種)のスケルツォ。オーケストラの響きに厚みと潤いが足りず、中間部の対比は効果的。(5:33)第4楽章「Finale. Allegro animato e grazioso」華々しく短い序奏、やがてユーモラス、リズミカルな主部に入って、なかなか魅惑の旋律に・・・響きが濁るのは我が貧者のオーディオの責任かも。これって「クライスレリアーナ」の旋律でしたっけ?ピアノ・ソロのほうがええなぁ。やがて参入するホルンやら木管も随分と素朴な響き、緊張感は続かない・・・というのも、聴手が作品に共感が足らんせいでしょう。(9:29)

 交響曲第2番ハ長調は世間的には人気薄だけど、若い頃にFMから流れたエーリヒ・ラインスドルフ/ウィーン・フィル(1912ー1993 墺太利→亜米利加)の演奏が出会い、これが気に入りました。第1楽章「Sostenuto assai - Allegro ma non troppo」は爽やかな夜明けのような序奏。これは管楽器が素朴でも雰囲気ありますよ。やがて決然とした第1主題になだれ込んで、ノリノリにカッコ良いところ。提示部繰り返し有。重厚に分厚い響きを作らぬのはチェッカートの指示なのか、オーケストラの個性なのか。(12:50)第2楽章「Scherzo. Allegro vivace」ここは切迫するスケルツォ、怒涛のアッチェレランドにオーケストラの技量が問われます。弦の細かい音形に木管が呼応して、ここはなかなか聴かせるアンサンブル。中間部の雰囲気、色彩の変化はイマイチ、この辺りが作品のムツかしいところかも。ラストのアッチェレランドに今一歩のいや増す興奮を望む。(6:32)

 第3楽章「Adagio espressivo」は泣ける、情感溢れる旋律。弦、オーボエ、ファゴットに引き継がれ、ド・シロウトにも同じ旋律の重ね方が難しいやろなぁ、と想像させるところ。しっとり雰囲気ある仕上げ、途中からテンションの維持が難しい感じ。(10:30)第4楽章「Allegro molto vivace」はMahlerのカットを採用とのこと。快活リズミカルな出足、これはSchumannのピアノ作品そのままの印象でしょう。力いっぱいの演奏には響きがちょっぴり濁って、オーケストラの技量を感じさせるところ。陰影とか艶とかもっと欲しいですね。オン・マイクっぽい録音のせいもあったのでしょうか。(7:09)

(2020年8月9日)

 恥多き人生は消しゴムで消したいことばかり・・・自分のサイトはなるべく定期的に見直して書き直しているつもりだけれど、こんな原稿が残っていたのか()。そもそもチェッカートの全集の存在自体忘れていました。なんもワカランのにエラソーなこと書くなよ、ってか。(1999年くらいか)Schumannの交響曲は苦手、って、いつも言っているのにね。(以下Mahler版の楽譜のことにはいっさい触れること不可)

 ワタシ、相対的得意な第2番ハ長調より。ベルゲン・フィルというのはこれ以外聴く機会はなくて、素直だけれど響きに”芯”が弱い感じ。チェッカートの表現問題かも知れないが、濃厚なる浪漫派表現狙いではない。例えば(例が特殊かも知れないが)バーンスタイン/バイエルン放響(Virtuoso TWICE 70001 録音年不明)だと、ドキドキするほど「誤った情熱」みたいな切迫感が聴き手を追い込むけれど、こちらはずいぶんと平板なる感情(これを平穏と呼ぶべきか?)でしたね。

 「春」「ライン」は人気のある作品だけれど、個人的にワタシは苦手としております。旋律が大衆的過ぎ(言い過ぎだよ!)、響きが濁りがち、繰り返しがくど過ぎ・・・って、コレ純粋に自分の好みですみません。きっとまだ「!」という演奏に出会っていないだけなんでしょう。ところがチェッカートの味わいはずいぶんとちがう。

 ベルゲン・フィルって、例えばオーボエなどはとても美しいし、奥深い厚み〜には少々不足するが、気持ちよく聴けました。「響きが濁りがち、繰り返しがくど過ぎ」なんていう勝手な言い種(=ワタシ)など云々させないで、するする耳に入っていく感じ。ああ、こんな演奏なら聴き疲れしないな、苦労せず全二枚終了。「春」「ライン」もOKです!どんと来い。

 コレ、優秀録音のせいですか?それともMahler 編曲のなせるワザか。でもね、これってやっぱりSchumannじゃないと思います。もっと気紛れで、自由で、奔放じゃないと。ちょっと平和すぎだし、やっぱりオーケストラの自発性みたいなものに不足するんでしょうか。ちょっと苦しみながら、ああ、自分の趣味じゃないな、なんて文句つぶやきつつ、時に「!」な場面ってあるじゃないですか。

 ずず暗い悲劇性魅力の第4番ニ短調も、少々優等生過ぎか。名曲としてのカタチは理解できるが、もっとエグい演奏を既に聴いちゃいました。それでもSchumannはワタシの縄張りに近づきつつあります。めでたい。

(2003年10月24日)
以下は、数年前の拙文そのまま。

 Schumannの交響曲が、管弦楽の技法としてはかなり無理がある、との話は聞いていました。あの謹厳実直なセルでさえ、自分なりに改訂した楽譜を使っているとのこと。ま、ワタシのようなド素人が、とやかく気にするような話ではありませんが、「Mahler 版全集」というとちょっと気になるじゃありませんか。(未聴ですが、ジュリーニがPOと録音した「ライン」がMahler 版とのこと)

 Schumannの交響曲は、同じようなボリュームなのに、Brahmsに比べて人気はイマイチ。個人的には、LP時代のセムコフ/セントルイス響(CDも買いましたよ。VOXBOX CDX5019〜田舎臭い雰囲気がたまらない)による全集以来のつきあい。いつのまにか数種類のCDが集まりましたが、すべてが「コレだ!」というような納得する演奏には、なかなか出会えません。難曲揃いです。

 ワタシ楽譜のことなんかわかりませんし、「ふ〜ん、どこがMahler なんだ?」てな感じで聴いていました。録音が自然で柔らかいこと、ベルゲン・フィルのアンサンブルが(意外と)立派で、素朴で素直な味わいが嬉しい演奏でしょう。響きは洗練されませんが、どのパートも技術的に、そう危ういところは見あたりませんでした。チェッカートの力量かも知れません。

 第1番「春」という題名が示すように、明るく希望に満ちた旋律が美しい曲。どこが「Mahler 編曲」なのかは、さっぱりわからない(どの曲も)。全体に響きがすっきりとして、厚ぼったい響きが整理されていることはたしかか。誠実で淡々とした演奏。あまり工夫がないと云うか、これといった特別な個性も感じないまま終わってしまいます。スケールも不足気味、というか自信なさげななところがタマに見受けられる。弦に深みが不足気味。

 第2番は人気が低いようですが、個人的には4曲の中でもっともお気に入り。第1楽章冒頭の深い霧の中から朝日が昇ってくるような神秘感、アレグロのいきいきとした躍動感。スケルツォの細かい弦のパッセージの興奮。最終楽章の圧倒的な高揚。

 オーケストラの技量の真価を問われる難曲中の難曲。ベルゲン・フィルは手堅い演奏ぶり。全体として大人しすぎ、普通っぽい演奏ではあります。面白味に欠ける。(スケルツォは、セルのライヴ〜ERMITAGE〜の異様な興奮に包まれたアッチェランドが念頭にある)

 第3番「ライン」は、その名の通り大河の流れを思わすスケールの大きな旋律が売り物。Mahler 編曲のせいか、ずいぶんオーケストラの響きが透明に鳴っていると思います。ただし節回しはサラリと流してくれないと、クドくて聴いていられない曲。ここでも飾り気のないふつうの演奏ですが、この曲にはそれが決まっていて好感が持てます。活躍するホルンは深く魅力的な響きで技量充分。朗々として立派です。4曲の中では一番の出来。

 第4番は、フルトヴェングラーの情念のような劇的な録音が有名ですし、そのように聴いてしまいがち。リズムがややもっさりとしている感もありますが、繊細で美しい演奏でしょう。腹の底に響くような重さは足りませんが、素直。

 BISのCDはあまり聴いたことはありませんが、隠れた名団体を発掘し、育てていくのが得意のようですね。エーテボリ響とか、ラハティ響、マルメ響、最近ではバッハ・コレギウム・ジャパンとか。ベルゲン・フィルはこれ以外の録音の存在を知りませんが、予想よりはずっときちんとした演奏であり、強烈な個性はなくても「資料的価値」を凌駕する魅力あるCDでした。

 正直云って、たびたび取り出そうと思うような、個性的な演奏ではありません。ま、@500の世界ですから、それはそれとしてありがたく聴きました。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi