Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調
(カール・シューリヒト/ウィーン・フィル/1963年ライヴ)

Bruckner
交響曲第5番 変ロ長調
カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー
DG 435 332-2(150 Jahre Wiener Philharmoniker)
Carl Schuricht(1880ー1967独逸)はけっこう好きな指揮者。大昔、20年前に聴いて、素朴な恥ずかしい記録有。じつはウィーン・フィルの150周年記念ライヴ12CDボックスに含まれていたことは、最近知りました。この時期にしてモノラルは残念だけど、かなり良好な音質。やや低音に不足を感じるけれど、解像度は充分かと。軽くさっぱりクリアな響きと流れを前提として、かなりテンポは揺れ動く個性的浪漫的な表現を堪能いたしました。Bruckner中屈指の大曲だから、それに相応しい、見上げるように大仰に巨魁なるスケール演奏を期待される方には、スカみたいに響くかも。音質への不満もあちこちユーザーより不満の声が伺えます。
第1楽章「Adagio - Allegro」漆黒の奈落の底への階段を降りると、そこには巨大なる障壁!そんな始まりは速めのさっぱりとした風情〜雄大なる主題はたっぷりタメを作って、いつになく大仰なる動きと噛み締めるよう詠嘆に揺れ続けました。このテンポの頻繁な動きは好悪を分かつところでしょう。ウィーン・フィルの朗々たる金管は朗々と響いて、基本イン・テンポな表現を好む自分もこの自由自在な表現を堪能いたしました。(21:58)
第2楽章「Adagio」はさっぱり淡々として、ニュアンスたっぷりの弦が歌う緩徐楽章。金管の充実した絶叫もスッキリとして重くない、素っ気なくも速めのテンポにその表現は粘着質とは遠いデリケートに美しいもの。(17:36)
第3楽章「Scherzo: Molto vivace」ここも落ち着かぬ快速スケルツォ。叩きつけるようにモウレツな疾走から、優雅なレントラーの第2主題が対比されるけれど、速攻に快速に戻してさらにテンポ・アップ!金管絶叫も響きはあくまで軽快。ライヴならではの乱れるホルンも魅惑のウィンナ・ホルン、この辺り迄到達すると音質云々はまったく気にならぬと思うけどなぁ、いかがでしょうか。(12:33)
第4楽章「Finale: Adagio - Allegro moderato」は第1楽章冒頭の漆黒の階段下降、そして主題が再現されます。第2楽章も振り返り、さらに第3楽章を連想させるステキな主題がしみじみ歌って、この辺りの展開はさっぱりとした語り口でもテンポはあまり速くはない。じっくり入念に歌うもの。そしてギヤ・チェンジにテンポを上げてフクザツな二重フーガ、万感極まるコラールが金管により荘厳に宣言。たっぷりテンポを落としてたっぷりとした間。遠いホルンと木管が静かに爽やかに、やがて弦がフィナーレへと呼び込んで決然たるクライマックスへ、そして熱気を帯びた第1楽章冒頭主題が戻って、かなり大仰なるテンポ・ダウンに感動的な結末を迎えます。サウンドはあくまで軽く、この辺りは第1楽章よりテンポの動かし方はぐっと自然に有機的。(25:26/フライング拍手熱狂的喝采有) (2025年4月26日)
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Bruckner
交響曲第5番 変ロ長調
カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー
MEMORIES HR4582 1963年2月24日ライヴ録音(モノラル) $1.99で個人輸入
2004年夏、猛暑にはMahler だったけれど、秋の声を聞くと俄然Brucknerが・・・しかも、ここ最近敬遠気味であった歴史的録音も、するする聴けちゃう。心境の変化ですな。やや平板で、奥行きには不足するが、音質はそう悪いものでもありません。重苦しさは存在しないが、第1楽章はそうとうに遅いテンポが基本であり、そして揺れ、速くなったり、元に戻ったり〜けっこう表情が濃い演奏なんです、コレ。(おお!数年前の自らの感想とほとんど変わりない)
ホルンの味付けはもちろんだけれど、弦が泣いてますよ。金管の節回しも入念でしつこいくらい。「シューリヒトって自然体でサラサラして・・・」なんていう先入観を持っていると、おっ!と驚きます。走ったり、どんよりしたり、行ったり来たり、しっかり「間」をとったり、スケール大きく第1楽章は進み、怪しげなスローテンポ〜アッチェランドで終了。少々やりすぎか。でも、チカラづくで煽ったりしない人ですから。
第2楽章も基本じっくりと構えた演奏なんだけど、途中するすると旋律が走ってオーケストラがあわてている様子も有。そんな些細なことはともかく、どんどんアツくなって、ぐいぐいと進んでいくが、やっぱりこの人どんよりしないですねぇ。どこか感覚がサッパリしていて、鈍重にならない。第3楽章の快速開始、ワルツが挟まってその表情も飄々としてやさしく、またまた即、快速特急に戻っちゃう迫力・推進力。「Brucknerのキモはスケルツォだ!」なんて言われるが、この演奏のキモも「スケルツォ」に間違いない。このテンションの高さ+颯爽とした風情は、晩年の爺様のワザとは俄に信じがたい水準です。
金管が(特に)魅力的。精一杯鳴っていて、響きに艶と厚みがある。たいした録音じゃなくてもちゃんとわかりますよ。最終楽章は、冒頭のじっくりスタイル音楽に回帰しちゃう。しかし粘らない、やさしい風情もあります。時にテンポをぐっと落として、シミジミ歌ってます。金管で疾走する部分との対比も鮮やか。そしてシューリヒト特有の爽やかな熱狂がやってきます。時間もスケールも巨大な作品だけど、けっこうあっ!という間に終了しましたね。脂肪は少な目の方がたくさん食べられる。
ラスト、テンポを落としてタメを思いっきり→優しい表情の旋律に移ってしっとり歌→軽快なるテンポ→再びタメ→テンポ・アップ→めまぐるしく動いてテンポは入念に歌い→高らかに冒頭主題が回帰して堂々たるラスト!(拍手盛大)これはかなり個性的な演奏です。ウィーン・フィルでここまでやるんだね、といった感慨有。 (2004年10月16日)
まず質問。
Brucknerはお好きですか?「女性にBruckner・ファンは存在しない」という噂は本当でしょうか。(少なくとも日本では)それが、Bruckner受容の歴史が浅い日本固有の問題なのか、音楽そのものが持っている特性なのかは、知りません。でも、「大好き」という女性は見たことはないなぁ。
朝比奈さんの大ブームで、そんな垣根が払われることを願って止みません。閑話休題。
このCD、DGから出たものと同じ演奏だと思うのですが、音の状態はまぁまぁ聴けんことはない、といったところ。1963年録音にしてはずいぶん奥行きがないし、あんまりお勧めしません。やはりBrucknerはそれなりの音質で聴かないと、印象が散漫になる。でも、3、7、8、9番と素敵な録音を残してくれていたので、この曲も期待しておりました。
例のドキドキするような冒頭の低弦ピツィカートから、重苦しさはなくて、やはりそこはシューヒリトらしい。でも、旋律の歌わせ方はいつになく念入りで、テンポもそうとう(というか、かつてどんな演奏でも聴いたことがないくらい)揺れるし、しつこいくらいの「キメどころ確認」があります。ライヴならではの感興の高まりのなせる業でしょうか。
録音のせいか、その「揺れ」がピタリと決まっているとは感じられません。細部のアンサンブルが整わないのは、このひとのクセで、なんということもないのですが、同時期のスタジオ録音の端正で軽快、ひょうひょうとした演奏とはかなりの差異。金管による全開の絶叫でも、重くならないのはいつも通りのマジック。でも、なんかやっぱりいつもの印象と違う?(と、最近女性に流行の語尾上げ言葉風に)
アダージョにおける弦は、ゾクゾクするほど魅力的な歌・・・・なんでしょうが、かなりの想像力が要求されます。「オレはシューリヒトが好きだ、絶対だ、ほかは何も聞こえない」くらいの集中力も欲しいところ。ま、そこまでいわんでも、黙って聴いていると、ジワジワと音楽の中には入っていけます。(中間部の木管の絡み辺りから)
スケルツォが本領発揮で、快速で叩きつけるような疾走。激演。そしてワルツの優しさとの対比は、さすがの軽妙さ。金管の爆発も美しさを維持。(ホルンの牧歌的な響きは貴重)いつもは見られないアッチェランドも決まってますね。この楽章は、保留条件なしで文句なしの出来。
終楽章に至ると、耳(というより、カラダ)が慣れてきて、しっかりとした足取りと、爽やかさが同居する音楽に浸り込めます。やはりここでも、いつにない朗々とした「弦の泣き」(でもクドくならない)が聴かれて、ハッとする瞬間も有。呼応するホルンの深みも滅多に聴けない。
あわてず騒がず(意外とテンポは早くない)、じっくりとフィナーレへの歩みを進めます。と、思いきや例の「揺れ」がやってきて、金管の一撃。再び弦は天使の歌。金管の意味深さは、ウィーン・フィルにしか出せない説得力。
最後まで聴いて、はじめて満腹。納得の演奏。これだけ個性的でも、絶対に重すぎない、うるさくならないのは身上。(拍手入りが嬉しい)
最初、録音状態と、いつものシューリヒト(先入観はいけないなぁ)らしからぬ濃厚な表情にとまどいました。でも、このひとの基本姿勢は「爽やか」で、後半に行けば行くほど納得の美しさで、古くささを感じさせません。これだけのテンポの揺れは、それなりの練習が必要だと思うし、ましてやライヴでこれだけ説得力を維持するのは驚き。
MEMORIESというレーベル。DEGITAL REMASTERINGしました、とジャケットに書いてあるから、これがクセ者か。DGの復刻盤はどんな音ですか。Brucknerはできるだけ、ちゃんとした音質で聴きましょうね。
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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