Schubert 「さすらい人」幻想曲/ドイツ舞曲集
(マルティン・ファン・デン・フック(p))


BRILLIANT 99678/11 Schubert

「さすらい人」幻想曲 作品15D760

ドイツ舞曲集
作品18-1、4/作品9-2,4-6/12のウィーンのドイツ舞曲D128、D643,D722/2つのドイツ舞曲D769,16のドイツ舞曲集 作品33D783/D820,D970-975

マルティン・ファン・デン・フック(p)

BRILLIANT 99678/11 2000年録音

 BRILLIANTの激安ボックスにはずいぶんとお世話になりました。安価に、まず作品を堪能するということは基本。この11枚組は入手時2,790円(税込)との値札有。幾度かオークション処分を狙って、とうとう引き取り手が見つかりません。ま、知名度はないからね。しっかり手元において愉しみましょう。レビューはまずまず、未聴音源に心悩ませつつ意外と聴いていることに気付きました。(ピアノ・ソナタ第21番/第9番/人生の嵐初期ピアノ・ソナタ集即興曲 作品90/142

 「さすらい人幻想曲」詳細はWikiにお任せ、聴くだけの人(=ワシ)はお気楽、弾く側はたいへんな難行苦行らしいですね。第1楽章「Allegro con fuoco ma non troppo」冒頭の力強い主題はまさにBeethoven風、輝かしく華やかに決然とした出足であります。第2楽章「Adagio」この悲壮な主題が歌曲「さすらい人」なんですね。これが静かに神妙に変奏される7分間、情感に充ちてここの美しさはピカイチ!途中きらきらと高音のアルペジオを飾るところなんて最高。第3楽章「Prest」の明るさ、躍動にほっとしてこれは「スケルツォ」そのもの、ちゃんと「さすらい人」主題が木霊しております。中間部の優しい風情もSchubertの歌ですねぇ。

 終楽章「Allegro」。ごつごつとした低音の主題提示はBach風フーガみたいに、やがて巨大な構築物に育ってスケールも大きい。ここはとくに左手の細かい音形が難しそうで、ピアニストの腕の見せ所でしょう。マルティン・ファン・デン・フックは阿蘭陀のピアニストとのこと。来日もしているみたい。きらきらとした美音を誇る人ではないようだけど、暖かい音色、まずは万全のテクニックとニュアンスと云ってよろしいでしょう。

 Schubertのドイツ舞曲集は難物でして、どれも1-2分の短い、親しみやすい小品ばかり。例えばMozartのコンタルダンスみたいに、ほんの添え物、BGMとして珠玉の旋律を愉しめばよろしいのでしょう。おそらくはマルティン・ファン・デン・フックの配慮によって選定、並び順を決め、録音したもの。先ほどの「さすらい人」幻想曲みたいに劇性に溢れた多彩な響きに非ず、淡々とシンプルかつニュアンス豊かな歌とリズムは延々と50分ほど、続いて快いものです。

(2016年3月27日)

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written by wabisuke hayashi