Schubert 八重奏曲 ヘ長調 D.803
(モディリアーニ弦楽四重奏団 /
ザビーネ・マイヤー(cl)/ ブルーノ・シュナイダー(hr)/
ダク・イェンセン(fg)/クヌート・エーリク・スンドクヴィスト(cb))


Mirare MIR438 Schubert

八重奏曲 ヘ長調 D.803

モディリアーニ弦楽四重奏団 /ザビーネ・マイヤー(cl)/ ブルーノ・シュナイダー(hr)/ダク・イェンセン(fg)/クヌート・エーリク・スンドクヴィスト(cb)

Mirare MIR438 2018年録音

 この作品はクラリネットを先頭に、ファゴット、ホルン、ヴァイオリン2台、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという大掛かりな室内楽、というよりMozart辺りのセレナーデ、ディヴェルティメントのような風情を感じさせる、なんと晴れやかに明るい、前向きな傑作。たいていどんな演奏を聴いても、大きな喜びとシアワセを感じ取れる作品でしょう。名手を揃えてクリアな音質、ヴィヴィッドに表情豊かなアンサンブルでした。

 第1楽章「Adagio-Allegro-Piu allegro」はちょうどMozart「グラン・パルティータ」風神妙な始まり、各パートがお互いの音を確認しあって、やがて快活に走り出します。やがてちょっぴり憂いを含んだシンプルな歌謡的主題(歌曲「さすらい人」)が陰影豊かに展開、とくにクラリネット、ホルン、ヴァイオリンの妙技が光って例の如し、いつまでも笑顔と歌が止まらないよ!そんな熱を増して、長大な作品となりました。Bruno Schneider(1957-瑞西)がアンサンブルのリーダー、例のクラウディオ・アバド率いるルツェルン・フェスティヴァル管弦楽団にも参加していたそう。ひときわ雄弁に浮き立って魅惑の深い音色を堪能できます。(15:20)

 第2楽章「Adagio」はクラリネットの懐かしい旋律から始まる、落ち着いて陶酔の緩徐楽章。主役はザビーネ・マイヤー(cl)、浮き立つように華やかさ絶品。弦のさわさわとした伴奏に乗って、その旋律はファゴットに引き継がれました。ここも切々と歌って懐かしく、情感は高まって時に哀しい。この楽章はお休み?そう思ったらやがて遠くから控えめにホルンも参入いたしました。(11:40)

 第3楽章「Allegro vivaceーTrio-Allegro vivace」は快活に符点のリズムが躍動するスケルツォ。すべてのパートは元気よろしく息を合わせて、クラリネットの合いの手は牧歌的、トリオの優しい風情もSchubert旋律の魅力爆発でしょう。(6:13)第4楽章「Andanteー Variations: Un poco piu mosso ーPiu lento」はなんともシンプルにノンビリな主題(ヴァイオリン)はまるでHaydnみたい。やがて優雅な変奏曲が語り掛けるように静かに表情や心情、音色を加えていくところ。前楽章のトリオを上回る牧歌的な愉悦に充ちて、これは天才のワザですよ。第4変奏曲?ホルンとクラリネットが静かに語り合って、ヴァイオリンの細かいオブリガートは絶品。次の変奏曲はチェロが控えめに主役を務めました。ある時は悲しく、暖かく、ある時は陶酔の詠嘆、ラストは静かに名残惜しく終了して、この楽章は全曲中の白眉!個人的にはそう思います。(12:05)

 第5楽章「Menuetto. Allegretto-Trio-AllegrettoーCoda」はHaydn辺りのメヌエットとはずいぶん趣が違って、ちょっと物悲しい安寧にデリケートな舞曲。雄弁なホルンが光ります。(6:59)第6楽章「Andante moltoーAllegroーAndante moltoーAllegro molto」は嵐の前のように不穏な序奏。やがて表情はじょじょに、夜が明けるように明るくなって軽快な歩みがやってきました。それは時にちょっぴり陰りをみせつつ、弾むようなリズムに、一点の曇りもない笑顔が続きました。細かい音形、クラリネット辺りは相当なテクニックが要求されそうなところ。(9:54)

(2023年4月29日)

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written by wabisuke hayashi