Schubert 4つの即興曲 D.899 作品90/
4つの即興曲 D.935 作品142
(アンドレイ・ガヴリーロフ(p))


DG Schubert

4つの即興曲 D.899 作品90
4つの即興曲 D.935 作品142

アンドレイ・ガヴリーロフ(p)

DG POCG-7123 1991年録音

 いかにもSchubertの魅力爆発!気紛れに多彩な歌謡的旋律を誇る即興曲は大好きな作品です。作品との出会いは万感の別れを惜しむようなバックハウスのライヴ?(Allgretto 変イ長調)アルフレッド・ブレンデルの旧録音VOXのLPだったでしょうか?誰の演奏を聴いても、ちょっぴり寂しく哀しく、懐かしく、シアワセな時間を過ごせる傑作でしょう。ところがこのガヴリーロフの微妙なテンポの揺れや、タメにはちょっぴり違和感を覚えて、幾度か繰り返して確認したもの。音質は上々と思います。Andrei Gavrilov(1955ー露西亜)もいつの間にかヴェテランになってしまって、自分の中では未だ若手なイメージ。これは未だ30歳代の記録でした。ピアノのタッチはリアルな優秀録音。

 4つの即興曲 D.899 作品90「Allegro molto moderato」(ハ短調)は素っ気ない無機的な主題に始まって、やがて自在に姿を変える変奏曲。その冒頭の主題提示は乱暴に力み過ぎ、やがて変奏の抑制は軽快、充分にデリケートなもの。その対比を意識し過ぎて時に大仰、微妙な表情付けはもっと淡々と自然体に飾らぬ演奏を望みたいもの。全曲の始まりだから、ここの印象は重要です。(8:32)
 「Allegro」(変ホ長調)は流麗な無窮動が陰影豊かに歌って、ステキなところ。一息入れる挿入部にはもっと余裕と詩情が欲しい。前曲ほどの力みはないけれど、ここも微妙に落ち着きが足りない。(4:34)
 「Andante」(変ト長調)はゆったり、静かなせせらぎに身を委ねるように揺れる絶品の「無言歌」(Wikiによる)明晰なタッチによる懐かしい説得力、奥床しい風情は文句なしでしょう。(5:41)
 「Allegretto」(変イ長調)は、はらはらと花びらが散るように、名残惜しい切ないつぶやきが続きます。美しく抑えたタッチはデリケート、テンポの微妙な揺れも適正を感じさせました。(7:31)

 4つの即興曲D935作品142。「Allegro moderato」(ヘ短調)は劇的な哀しみを湛えて始まり、切ない表情はやがて明るく変化して、弾むように疾走する明快なタッチ際立って、ここは音質のクリアさが際立つところ。(10:13)
 「Allegretto」(変イ長調)ここはバックハウスの刷り込みかなぁ、往年の巨匠たちの達観した語り口が懐かしい。人生に静かな別れを告げるように万感胸に迫って、切なくも淡々とした諦念の旋律が続きます。ここもちょっと力み過ぎなタッチに感じました。(8:11)
 「Andante」(変ロ長調)は誰でも知っている「ロザムンデ」安らぎの主題による変奏曲。ここはしっとりと落ち着いたタッチでした。消え得るようなラストもおみごと。(10:45)
 「Allegro scherzando」(ヘ短調)は陰を感じさせる符点のリズム、躍動とキレのあるタッチが劇的でした。(6:28)

(2024年4月27日)

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written by wabisuke hayashi