チェロ名曲集(ピエール・フルニエ(vc)/小林道夫(p))


SONY SRCR 1648 Martinu

チェロ・ソナタ第1番

Debussy

チェロ・ソナタ ニ短調

Schubert

アルペジョーネ・ソナタ イ短調

Schumann

アダージョとアレグロ 変イ長調

ピエール・フルニエ(vc)/小林道夫(p)

SONY SRCR 1648 1981年録音

 小学生以来の音楽好き、音源収集は病膏肓に至って日々ネットより(守銭奴ならぬ)”守音奴”状態へ。音楽ファンのケジメとして週一回の【♪ KechiKechi Classics ♪】定例更新も、溢れかえる音源にまず選定迷う日々。ちゃんと数えていないけれど棚中CD残は1,200枚ほど?10年ほどオークション処分を続けて1/5に身辺整理(継続中)新たな購入はもちろんCD拝聴機会も激減、ネットからデータ拝聴が主流となりました。華麗なる加齢に衰える記憶力、データ含め在庫点検すると”日々発見!”に驚いてある日、こんなCDを見つけました。おそらく入手20年。Pierre Fournier(1906ー1986)は往年の仏蘭西出身のチェリスト、現役時代はロストロポーヴィチと人気を分かち合っておりました。これは珍しい(最後の)来日時の録音。小林 道夫さん(1933ー)は多くの著名な来日アーティストの伴奏を務めた名手。

 Bohuslav Martinu (1890-1959)のチェロ・ソナタは Poco allegro(5:52)ーLento(5:06)ーAllegro con brio(6:00) 3楽章からなる、ややハードな作品。フルニエに捧げられた1939年の作、いかにもRousselの弟子と実感できる野性味溢れる作品です。ふつう安寧な緩徐楽章であるべき第2楽章「Lento」は怒りと激情と暗さ、そこはフルニエの柔和なフレージングが救いとなります。終楽章「Allegro con brio」はいっそうハードに切迫して甘美の欠片もない、息つく暇もない疾走。この作品直後、ナチスの手を逃れて亜米利加に渡らざるを得なくなる怒りを感じさせる作品であります。75歳、テクニックの衰えは一切感じさせぬもの。

 著名なDebussyは最晩年、短いけれど名曲中の名曲でしょう。Prologue : Lent(ゆっくりと)(4:08)-Serenade : Moderement anime(3:25)-Final : Anime, leger et nerveux - Lento(3:31)、上記作品と比べゆったりとして美しい旋律作品、じつ超絶テクニックが必要とか。幽幻として遣る瀬ない風情漂う「Prologue」、不思議な静謐さを湛えて、気紛れなピチカートが多く出現する「Serenade」はピアノの不思議かつデリケート音色が絡みました。アタッカで続く「Final」は流麗な流れに西班牙の旋律リズムを感じさせました。

 歌心が溢れて止まらぬアルペジョーネ・ソナタ以前別録音を聴いておりました。これももともと別楽器による音域の違いに、チェロにとっては難曲中の難曲らしい(とくに高音部)。切なくも懐かしい人の声を連想させる第1楽章「Allegro moderato」変幻自在な転調とピアノの対話に心奪われ、浪漫派の魅力はここに極まった!そんな感慨有。(7:42)朗々と穏健、晴れやかでどこか寂しい第2楽章「Adagio」(4:07)を経、途切れなく第3楽章「Allegretto」の安寧と希望の主旋律に不安な影が対応して陰影深い、表情豊かなもの。(8:01)これは大好きな作品です。

 Schumannはもともとホルンのための作品かな?自分としてはホルンの悪戦苦闘のほうが好きでっせ。ド・シロウトなので詳細構成はわからぬけれど、Schumannにはいつも”気紛れ”勝手気まま自在な旋律を連想します。切々と愛を語ってピアノと絡み合う「Adagio」(4:25)躍動する喜びを歌い上げる「Allegro」そのまま歌詞を付けてほんまに歌いたいくらい。(4:55)

 自分で記憶できぬくらい音源を日々収集して、結局20年前のCDに立ち返る虚しさ。昔1,000円で買った廉価盤CDに感慨を深めておりました。音質も上々です。

(2018年9月16日)

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written by wabisuke hayashi