Respighi 「ローマの噴水」/Vaughan Williams 交響曲第5番ニ長調/
Stravinsky 協奏曲ニ調(バルビローリ)


HISTORY 205638-303 10枚組2,286円で購入したウチの一枚 Respighi

「ローマの噴水」

ニューヨーク・フィルハーモニック(1939年)

Vaughan Williams

交響曲第5番ニ長調(1944年)

Stravinsky

弦楽のための協奏曲ニ調「バーゼル協奏曲」(1948年)

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

XXCM(HISTORY) 205638-303 10枚組2,286円で購入したウチの一枚

 21世紀になって、驚異的な低価格で出現した歴史的録音のシリーズでした。音源出典少々怪しいが、現在もレーベル名変えてスリムな紙パックになって(更に値下げされ)入手可能。いずれ、安価に、幅広く音楽を楽しめるようになることは素晴らしいことです。残された宿題は聴き手の感性のみ。この「BARBIROLLI MAESTRO GENTILE」10枚組ボックスには、過半が協奏曲伴奏であって、ある意味戦前のバルビローリの評価が理解できる収録となっております。

 バルビローリのニューヨーク・フィル時代(1936〜1943年)の評価は芳しくなかったらしいが、残された録音はいずれも立派なものだと感じます。「ローマの噴水」は、録音時期を感じさせない、明快かつ分離の良い音質が(まず)驚異的。夜明け(ジュリアナの谷)〜朝(トリトン)〜真昼(トレヴィ)〜たそがれ(メディチ荘)から構成される色彩豊かなる作品だけれど、ニューヨーク・フィルの歯切れ良い、明るいサウンドを基調として集中力あるアンサンブルを実現しております。

 この辺りはトスカニーニ得意の作品だから、きっと比較対照に於いて評価苦戦したんだろうな、当時。骨太な印象はあるけれど、いずれ纏綿と良く歌うスタイルは当時から変わっていなくて、しかも若々しい推進力もあります。ハレ管弦楽との録音と続けて聴くと、アンサンブルの集中力に一日の長はあるけれど、作品の相性問題でしょう。ワタシはとても楽しみました。  

 Vaughan Williamsは1943年戦時空襲下のロンドンで(作曲者自身の指揮にて)初演、聴衆を勇気付けたとのこと。ハレ管(マンチェスター)へのシェフ就任直後の録音(初演の一年後)であり、これも奥行きがあって、それなりに聴きやすい音質でしょう。静かでジミな作品ですね。爆発やら、疾走、激昂、絶叫が一切存在しない、一説によると「祈りの音楽」であるとのこと。教会音楽から多くのインスピレーションを得た、との解説も拝見いたしました。第3楽章「ロマンツァ」は、起伏の少ない旋律を纏綿と歌って、敬虔なる精神溢れて白眉の表現・・・ハレ管って、特別なる作品との相性を示していると思います。

 最終楽章「パッサカーリア」は、抑制が前提ながらも”魂の叫び”的昂揚もあり、やがて清廉なる精神の浄化へ・・・こんな、横流れのずるずる旋律を振らせたら、バルビローリの魅力全開なのは当たり前。日本では人気ない作品だそうです。疲れ切った深夜に聴くべき音楽か。(男性に限る)

 Stravinskyの「バーゼル協奏曲」(パウル・ザッヒャー依嘱)は1946年(新古典主義の時代)の作品だから、この録音も初演直後となるのでしょう。ワタシは、リリカルな、というか、感情の起伏がないような、こんなアルカイックな作品が大好きです。色気はないけれど、難解苦渋たる作品ではない。感情押し殺して、ばりばりクールな技量で奏されるべき作品なのでしょう。特別にバルビローリの個性を必要としていないとは思うが、彼は慈しむようにていねいに表現しております。

 第2楽章「アリオーソ」の優しい旋律が聴きものでしょう。この録音もわりと聴きやすい。

(2006年12月8日)


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