Vaughan Williams 劇音楽「すずめばち」(アリストファネス組曲)
ピアノ協奏曲ハ長調(アシュリー・ウォス(p))/イギリス民謡組曲/
ランニング・セット
(ジェームズ・ジャッド/ロイヤル・リヴァプール・フィル)


NAXOS 8.572304 Vaughan Williams

劇音楽「すずめばち」(アリストファネス組曲)
ピアノ協奏曲ハ長調(アシュリー・ウォス(p))
イギリス民謡組曲(Gordon Jacob編)
ランニング・セット

ジェームズ・ジャッド/ロイヤル・リヴァプール・フィル

NAXOS 8.572304 2009年録音

賑々しくも愉しくユーモラスな「すずめばち」、かつて聴き知ったどんな個性とも異なるピアノ協奏曲の鮮度高いデリケートな叙情性と幻想、前衛性(!?)Vaughan Williamsはひと通り聴いてきたはずなのに、旋律風情に記憶がありません。お気に入り「イギリス民謡組曲」は吹奏楽なのに途中ヴァイオリンソロが入るのは空耳か、それとも微妙に編曲が違うのか。「ランニング・セット」は題名は知らんでも、誰でも馴染みのあるノリノリのアンコール・ピースでした。(2020年7月「音楽日誌」)
 James Judd(1949-英国)はマゼールとかアバドの弟子筋なのですね。ニュージーランド交響楽団の音楽監督が主たる経歴か(在任1999ー2007年)長く率いたフロリダ・フィルは残念2003年に解散しております。Ralph Vaughan Williams (1872-1958英国)には例外なくほぼ穏健素朴な旋律サウンド続いて、日本ではあまり好まれないようです。例外的な人気曲は「グリーンスリーヴズによる幻想曲」〜自分の英国音楽嗜好の源流もそこにありました。(小学生時代に出会ったアーサー・フィードラー/ボストン・ポップス管弦楽団17cmLP)このCDはデザインもステキ。音質はもちろん良好、清潔素直な表現、オーケストラの技量に文句ありません。作品の真髄を堪能するに必要にして充分過ぎるもの。

 劇音楽「すずめばち」(アリストファネス組曲)は序曲(10:02)間奏曲(2:43)台所用具の行進(2:57)間奏曲(3:43)バレエと最後のタブロー(6:41)5曲からなる作品。原作の筋は知りません。上記”賑々しくも愉しくユーモラス”と短く要約したとおり、序曲は、おそらく賑々しい羽音の模倣から始まって、やがて劇の行方を占うようなウキウキ+優雅に静謐な、そして懐かしい旋律が躍動しました。どーして知られていないの?訝(いぶか)るほど多彩なる名曲の始まり。そっと忍び足に不安げな間奏曲を挟んで「台所の行進」はなんとものどかな風景、キッチン道具や野菜が行進するんでしょうか。ときどき入る”ズドン”の一撃もアクセント。ホルンとティンパニが活躍する荘厳なる間奏曲を挟んで、ラスト「バレエ」は激しいリズムで始まり、遠い木管が静かに神秘的に呼応します。冒頭の賑々しい羽音(すずめばち)や序曲旋律もちょっぴり再現、これが徐々にボリューム・アップして、切迫する大爆発に至る大団円。

 RVWにピアノ協奏曲があったなんて!?そんな知名度の作品も名曲。繊細かつ達者な技巧を誇るAshley Wassというピアニストには数多く録音があっても詳細情報は探せません。初耳時には”鮮度高いデリケートな叙情性と幻想、前衛性”と感じて、第1楽章「Toccata: Allegro moderato」は粗野なリズムと和音がシンプルに繰り返してリリカルな緊張感、寄せては返す例の民謡風旋律も顔を出して悠然たるスケールに至りました。(6:48)やがて、ほとんどつぶやくように静謐に至ってアタッカにて第2楽章「Romanza: Lento」へ。内省的な風情は遠方からのフルート+そっと奏する弦に乗って幻想的です。この楽章の淡いデリケートな情感はいかにも英国的、屈指の傑作と思います。(9:15) 第3楽章「Fuga chromatica con finale alla tedesca: Allegro - Lento - Largo sostenuto - Andante sostenuto」も途切れなく、突然の金管からかなり前衛的な旋律がソロから始まって、それが無機的に管弦楽と絡み合い繰り返されるところ。前楽章とは雰囲気異なってかなり暴力的な迫力有。これが落ち着きを見せつつ・・・(4:57)第4楽章「Finale」へ。ここも内省的な雰囲気が続いて、ソロの旋律はやや難解に掴み所がないもの。やがてそれは懐かしい旋律の繰り返しに育って、ありがちな締めくくりに非ず、静かに幕は降りる。(6:40)

 著名な吹奏楽である「イギリス民謡組曲」エイドリアン・ボウルトにて出会ったMy屈指のお気に入り作品。(Gordon Jacob編)これは弦楽器も入る版らしい。(以下孫引用)第1曲 行進曲「日曜日には十七歳」(March - "Seventeen Come Sunday"2:57)(「日曜日には十七歳」「可愛いキャロライン(Pretty Caroline)」「富める人とラザロ(Dives and Lazarus)」)第2曲 間奏曲「私の素敵な人」(Intermezzo - "My Bonny Boy"3:15)(「私の素敵な人」「緑の茂み(Green Bushes)」)第3曲 行進曲「サマセットの民謡」(March - "Folk Songs from Somerset"2:58)(「朝露を吹き飛ばせ(Blow Away the Morning Dew )」「高地ドイツ(High Germany)」「とても高い木(またはWhistle, Daughter, Whistle)」「ジョン・バーリーコーン(John Barleycorn)」)からなる9分程の作品。おそらくは初耳でも懐かしい、Popな旋律が続いてある時は快活軽妙ユーモラスに、しっとりと後ろ向きに名残惜しく、時にしっかりとした足取りの行進曲風、こんな愉しい作品は滅多にあるもんじゃない・・・

 「ランニング・セット」は題名は知らんでも、誰でも馴染みのあるノリノリのアンコール・ピース、そう以前書いたとおり。変拍子の舞踏なのかな?シンプルな細かい旋律リズムがクルクル繰り返して、やがて熱狂を孕んで盛り上がる6:36。

(2021年4月10日)

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written by wabisuke hayashi