英国音楽集(ダニエル・バレンボイム/イギリス室内管弦楽団)


DG 439529-2 Vaughan Williams

(1)「グリーンスリーヴスによる幻想曲」
(2)オーボエ協奏曲イ短調(ニール・ブラック(ob))
(8)「雲雀は飛んでいく」(ピンカス・ズッカーマン(v))

Delius

(3)「春、初めてのカッコウを聞いて」
(4)「川の上夏の夜」
(5)「二つの水彩画」(FENBY編)
(6)「フェニモアとゲルダ〜間奏曲」

Walton

(7)「二つの弦楽小品」〜「ヘンリー5世」より

ダニエル・バレンボイム/イギリス室内管弦楽団

DG 439529-2 1975/77年頃録音 1,500円ほど?

 ダニエル・バレンボイム1942年生まれ。ベルリン州立歌劇場の音楽監督であり、ミラノ・スカラ座の実質上のシェフでもある、現代もっとも脂の乗りきった”巨匠”。でも、個人的嗜好としてほとんど興味はない。実演はもちろん録音でもシカゴ以降のものは聴いたことさえありません。若い頃、ピアニストとして、そして新進気鋭の若手指揮者として出始めた頃の録音は意外と聴く機会がありました。この録音は、30歳代前半のもの。彼にはElgarの交響曲やら協奏曲録音もあるから、けっして珍しいレパートリーでもないでしょ。1990年代初頭に入手したCD。現在なら稀少盤の類か?

・・・感性瑞々しかったバレンボイム30代前半/若き日の録音也。現在、独墺系中心の彼のレパートリーからは信じられないが、驚くべき繊細さと、細部まで配慮ある静謐な世界が広がります。ソロも名手を揃えて、誠実なる歌に胸もアツくなっちゃう・・・

もしかしてこのCD、ワタシとバレンボイムとの出会いだったかも(記憶を辿れば1,500円程か)。静謐なるラプソディーであるオーボエ協奏曲の魅力、黄昏の空が茜色に染まる「雲雀」、Deliusの表現には特別なマジックが必要だと思うが、それはここにたしかに存在します。おそらくは当時、DGレーベルの若手として、レパートリーの穴埋めを依頼された録音と類推するが、将来を嘱望させるに充分なる完成度でした。

・・・とは2006年9月「音楽日誌」の引用です。

 概ね上記で言い尽くされていて、素直でていねいな仕上げ、清涼なるサウンドに溢れます。英国音楽はお気に入りだから、数多く聴いているが、(ソロにも恵まれ)歴代数々の名演奏に引けを取らぬ魅力有。音質極上。

 「グリーンスリーヴス」はさっくりとジミに表現されて、バルビローリ辺りのグラマラスな表現とは対極にあるもの。オーボエ協奏曲は名手・ニール・ブラックの変幻自在なる、超絶技巧をたっぷり堪能できます。ラプソディックであり、静謐な清涼感が両立する名曲であります。バレンボイムのバックも繊細な配慮に溢れるもの。

 Deliusには特別なマジックが必要でして、演奏者を選ぶと思います。先入観的にはバレンボイムは絶対ダメ!だけれど、これが思わぬ優美な成果を上げておりました。「春、初めてのカッコウを聞いて」は表情付けがやや濃厚に過ぎるが、細部仕上げのていねいな歌を賞賛いたしましょう。子供の頃、気怠い夏休みの儚い甘美を思い起こさせる「夏の夜」も同様。

 「水彩画」だって、弦に入魂のヴィヴラートで味付けして、切ない情感を表現して余りがある。「間奏曲(インテルメッツォ)」のフルート、オーボエ、ホルンは胸に染みる誠実で奥行き有、さわさわと弦が(控え目に)後方で支えます。若手でもこんな表現できるんだな、いまだったらどうか。

 Walton はわずか3分/2分の小曲だけれど、Deliusとは違った気高さと気品を持った旋律でした。静謐清涼であることは英国音楽として同様。バレンボイムの味付けは、ここでは抑制気味。ラスト、著名なる「雲雀は飛んでいく」(通称「揚げひばり」〜季語らしいが、語感が”鶏の唐揚げ”っぽくて・・・)ワタシ、ピンカス・ズカーマンの(温微的?)ヴァイオリンはどうも好みではない〜が、ここでの幻想的かつ(やはり)静謐清潔なる味わいは素晴らしい。

 途中いくつか”サビ”は(ちゃんと)あるんだけれど、基本つぶやくような、山場のない音楽は日本じゃ人気ないでしょうね。イギリス室内管弦楽団は久々の(CD)聴取だったが、素晴らしく洗練されたアンサンブルでした。息の長い団体だけれど、最近の消長はいかがでしょうか。堪能いたしました。

(2009年4月24日)


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written by wabisuke hayashi