Vaughan Williams 揚げひばり
(豪州のオーケストラによる英国音楽)


ABC Classics 4812522 Vaughan Williams

揚げひばり

アントニー・ウォーカー/シンフォニア・オーストラリス/ディミティ・ホール(v)(2003年)

トーマス・タリスの主題による幻想曲

パトリック・トーマス/クイーンズランド交響楽団(2003年)

グリーンスリーヴスによる幻想曲

デイヴィッド・スタンホープ/タスマニア交響楽団(2008年)

「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント

カール・ピーニ /シドニー交響楽団(1995年)

交響曲第5番ニ長調 〜 第3楽章「Romanza: Lento」

パトリック・トーマス/アデレード交響楽団(2003年)

二重弦楽合奏のためのパルティータ

メイヤー・フレッドマン/シドニー交響楽団(2003年)

ABC Classics 4812522

 豪州のオーケストラによるVaughan Willamsの名曲集。ABC放送用の音源でしょうか。かなり以前、似たような豪州勢による英国音楽を聴いていたけれど、ABC音源はNMLより抜けてしまったようです。

 Sinfonia AustralisはAntony Walker(1967-濠太剌利)が創立した室内管弦楽団らしいけど、Tasmanian Symphony Orchestra(1948年創立)は、あんな離島にもオーケストラがあるのか・・・ちょっとした感慨もありました。Myer Fredman(1932-2014濠太剌利)はNAXOSの録音に見掛けるけれど、Carl Pini(1934-英国)やPatrick Thomas(1932-濠太剌利)David Stanhope(1952-英国)はほとんど馴染みがない、とっても希少価値な録音。どれも演奏の質にばらつきはなくて、以前にも聴いてお気に入りの一枚でした。

 Dimity Hall(濠太剌利)の詳細情報不明だけど、2002年シドニー交響楽団と「揚げひばり」でデビューした女流とのこと。曇り空の彼方、姿は見えないけれどさえずりが聞こえてくる情景を描写して、妙に寂しく切ない名曲。季語としては「春、空高く舞い上がってさえずるひばりを指し、春の訪れや生命力を感じさせる」とのこと。ゆらゆら揺れるひんやりとしたヴァイオリン・ソロに曖昧さはなく、静かに寄り添う控えめなオーケストラも絶品。音質も極上でした。激しい情感の爆発や強靭なリズムなど存在しない、淡々と抑制された作品は日本じゃ人気は出ないと思われます。(17:05)

 「トーマス・タリスの主題による幻想曲」はブリスベンのオーケストラ担当。Thomas Tallis(1505-1585英国)の「何ゆえ異邦人たちは騒ぎたち」の旋律とのこと(原曲は聴いたことはない)荘厳なスケールを誇る弦楽合奏は三群、フクザツに絡み合って幻想的な情景が広がります。これも寂しげにひんやりと哀しい詠嘆、ジミに抑制された弦の響きは作品に相応しいデリカシー。これも豊かな残響に音質良好。(15:24)

 誰も知っている「グリーンスリーヴスによる幻想曲」は弦とフルート、ハープの編成。タスマニア交響楽団登場。なんせ濠太剌利には行ったことはないし、一番南の島、プロ・オーケストラがあったのか・・・これも冒頭の遣る瀬ないフルートと清楚なハープ、そして順々とした弦は抑制された風情に(ジミな)雰囲気たっぷり。編成は小さいようです。(5:10)

 「富める人とラザロ」の5つのヴァリアントはハープと弦楽合奏のための作品。「富める人とラザロ」という英国民謡が地方毎様々な形で残っていることを発見した作曲者が、それを元に自由な変奏曲に仕上げたものなんだそう。大好きな「イギリス民謡組曲」にもこの旋律出てきますね。シドニー交響楽団は豪州屈指の実力派、これもどことなく涼しげにうら寂しい風情が続きます。途中泣けるように美しいヴァイオリン・ソロとハープの掛け合い、ラスト辺り落ち着いたチェロのソロもありました。(11:24)

 交響曲第5番ニ長調 〜 第3楽章「Romanza: Lento」が単独で取り上げられるのはどういった意味合いなんでしょうか。不安な弦やイングリッシュ・ホルンの半音階旋律から始まって、遠いホルンなど息を潜めるような静謐と詠嘆が続きます。豪州南部のアデレード交響楽団は意外と拝聴機会はあって、ここでも雰囲気たっぷりのアンサンブルを堪能させてくださいました。(11:10)

 ラスト「二重弦楽合奏のためのパルティータ」は1946-48年作曲者晩年の作品。前に配置された癒し系作品とは趣を変えて、新古典派風にハードな推進力を感じさせるもの。シドニー交響楽団は実力充分。Prelude(5:08)Scherzo ostinato(4:08) Intermezzo [Homage to Henry Hall](3:59)Fantasia(6:28)

(2026年3月14日)

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written by wabisuke hayashi